2020年度、雇用関係助成金の詳細が公表されています。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)においては、正社員等への転換時の「賃金5%増額要件」が重要なポイントになります。
┃キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請するためには、次のような取り組みを実施する必要があります。
①有期雇用労働者→正規雇用労働者への転換
いわゆる契約社員から正社員への転換を実施した場合等がこのケースに該当します。
②有期雇用労働者→無期雇用労働者への転換
「無期雇用労働者」は、あまり馴染みがないかもしれませんが、有期雇用パートタイマーから無期雇用パートタイマーへの転換等がこのケースに該当します。
③無期雇用労働者→正規雇用労働者
無期雇用のパートタイマーから正社員へ転換したような場合がこのケースに該当します。
以上のような正規雇用労働者等への転換を実施した際に「転換前の6箇月」と「転換後の6箇月」の賃金を比較して5%以上、賃金を上昇させる必要があります。
┃キャリアアップ助成金(正社員化コース)の賃金5%増額要件
○賃金5%増額の確認方法
時間外労働を含まない所定労働時間1時間当たりの賃金で比較します。
ただし、次のような場合には、「転換前の6箇月」と「転換後の6箇月」の賃金総額で比較します。
・所定労働時間の変動がなく、転換前後のいずれも月給の場合
・変形労働時間制で所定労働時間の変動がなく、転換前後のいずれも月給の場合
○賃金5%増額の条件
・基本給および定額で支給されている諸手当の総額を5%以上増額させている
※賞与は除きます
○諸手当の条件
・実費弁償的なもの(通勤手当等)は、除く
・毎月変動するようなもの(残業代等)は、除く
・手当の決定方法、計算方法、支給要件が就業規則等に規定されているもののみ対象
○賞与の取り扱い
・就業規則等に支給時期が明記されていること
・支給対象者が明記されていること
・支給時期のタイミングにより転換後にたまたま支給されたような場合の賞与は除く
・実態として処遇改善、賃金増額がされていると認められる場合にのみ対象となる
○賃金5%以上増額の際に含めることのできない手当
賃金5%増額要件に含むことができない手当としては、以下のようなものがあります。
・就業場所までの交通費を補填する目的の「通勤手当」
・家賃等を補填する目的の「住宅手当」
・就業場所が寒冷地であることから暖房費を補填する目的の「燃料手当」
・業務に必要な工具等を購入する目的の「工具手当」
・繁閑等により支給されない場合がある「休日手当」および「時間外労働手当」
→固定残業代も対象外
・本人の営業成績等に応じて支払われる「歩合給」
・本人の勤務状況等に応じて支払われる「精皆勤手当」
・食費を補填する目的の「食事手当」等
以上の他、実態として処遇改善、賃金増額と認められない場合には、対象外とされる場合があります。
┃固定残業制・みなし残業制・定額残業制導入時の注意点
固定残業代を基本給に含む、という取り扱いをしている場合には、
・固定残業代に関する時間数
・固定残業代の金額と計算方法
・固定残業代を除外した基本給の額
以上について、就業規則または雇用契約書等に明記する必要があります。
固定残業代を減らして基本給を増額した場合等、実態として賃金5%増額がされていないと対象外となります。
┃賞与に関する注意点
賞与を含めた金額で正規雇用労働者等へ転換後、賃金5%増額していたとしても、基本給や諸手当等が低下していると対象外となります。
賃金5%増額要件は、実態として処遇改善、賃金増額されている必要があります。
諸手当等を減額して賞与で増額したり、固定残業代を減額して基本給や諸手当を増額させたり、金額の調整で賃金増額しように見せることは、認められません。
*関連記事
雇用関係助成金<キャリアアップ助成金(正社員化コース)>
*厚生労働省
キャリアアップ助成金