新型コロナウイルス感染拡大に伴い、自社の従業員が感染してしまうリスクも高まっています。
従業員が実際に感染をしてしまった、感染が疑われる等の場合の対応をお伝えしていきます。
目次
┃考えられる3つのケース
新型コロナウイルスに伴う感染リスクとしては、次の3つのパターンが考えられます。
○従業員本人が感染したケース
○従業員本人の感染は確定しないが体調不良等があるケース
○従業員本人は感染していないが濃厚接触者となったケース
┃新型コロナウイルスに従業員本人が感染したケース
発熱等の体調不良を訴えた場合には、自宅待機を命じ、保健所やコールセンターへの連絡や医療機関の受診を指示します。
しかし、現段階では診断を受けて新型コロナウイルスと確定するケースは多くはありません。
多くの場合には、確定的な診断がされないまま、自宅待機を指示されることになります。
○新型コロナウイルス感染が確定した場合
医療機関を受診し、検査の結果が要請で新型コロナウイルス感染が確定した場合には、都道府県知事が就業制限を行います(感染症法6条11)。
都道府県知事による就業制限の対象となった場合には、事業主は休業手当の支払い義務を負いません。
休業手当の支払い対象とならないので雇用調整助成金の対象からは除外されますが健康保険の被保険者であれば傷病手当金の支給を受けられる可能性があります。
※新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(問2)
┃新型コロナウイルスに従業員本人の感染は確定しないが体調不良等があるケース
検査を受けられず自宅待機(自宅療養)を命じられた場合、事業主としては感染拡大防止の観点から休業を命じざるを得ません。
しかし、従業員本人が働くことができる状態で、感染拡大防止のために事業主の判断で休業させる場合には、休業手当の支払い義務が発生すると考えられます。
事業主としては、在宅勤務へ切り替える等の対応が求められます。
休業手当を支払い、休業を命じる場合には雇用調整助成金の対象となる他、従業員本人が体調不良を訴えるようであれば、新型コロナウイルス感染が確定しなくても傷病手当の対象となる可能性があります。
※新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(問1)
┃新型コロナウイルスに従業員本人は感染していないが濃厚接触者となったケース
従業員本人に症状が出ていない場合でも濃厚接触者になってしまうケースも考えられます。
濃厚接触者となったことで検査を受けることができて、その結果が陽性であれば、「新型コロナウイルス感染が確定した場合」に準じて休業を指示することができます。
しかし、「従業員本人の感染は確定しないが体調不良等があるケース」と同様に診断が行われず確定しないケースもあり得ます。
その場合には、感染拡大防止の観点から休業を命じざるを得ず、その場合でも休業手当の支払い義務が発生することになります。
┃休業手当に関する確認
休業手当は、労働基準法26条に定められており、従業員に対して「使用者の責に帰すべき事由による休業」を命じる場合には、平均賃金の60%以上を補償する義務が発生します。
休業手当の支払いを免れるケースというのは、事業主の責任によらない「不可抗力」で従業員を休業させる場合のみです。
今回の新型コロナウイルス感染拡大は「不可抗力では?」と考えたくなりますが「不可抗力」の意味は非常に限定的となっています。
行政の考え方としては、
○休業を回避するために在宅勤務を導入する等の措置をとったか
○休業を回避するために具体的努力を最大限尽くしたか
という基準に照らし合わせ、
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではない、と判断しています。
※新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(問7)
新型コロナウイルスの感染が確定した従業員を休業させること以外、休業手当の支払いを免れる方法はないと考え、雇用調整助成金等の活用を進めていくことが重要です。
*厚生労働省
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)