同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差別を無くすことを言います。
「大阪医科大学事件」、「メトロコマース事件」という2つの事件に続き、日本郵便を巡る3つの事件でも最高裁判所の判決が出ました。
┃日本郵便を巡る3つの事件
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の手当てや休暇に関する規定に待遇格差があるのは違法として、非正規雇用労働者が日本郵便に対し訴えを起こした事件です。
東京、大阪、福岡という三か所の高等裁判所から上告された3つの事件は、2020年10月15日に最高裁判所の判決が出されました。
┃事件の概要と最高裁判所の判断
○令和1(受)794 地位確認等請求事件(大阪高裁から上告された事件)
無期契約労働者に対して年末年始勤務手当,年始期間の勤務に対する祝日給及び扶養手当を支給していた。
一方で有期契約労働者に対してこれらの手当を支給していなかった。
○令和1(受)777 地位確認等請求事件(東京高裁から上告された事件)
私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対しては有給休暇を与えていた。
一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えていた。
○平成30(受)1519 未払時間外手当金等請求控訴事件(福岡高裁から上告された事件)
無期契約労働者に対しては夏期休暇及び冬期休暇を与えていた。
一方で有期契約労働者に対してはこれを与えていなかった。
以上のような労働条件の格差が労働契約法に違反し不合理と認められた事例。
最高裁判所は、以上3つの事件について労働契約法20条(改正前のもの)に規定する不合理な待遇格差に該当するものとして違法と判断しました。
なお、労働契約法20条は改正により、パートタイム・有期雇用労働法8条に統合されています。
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パートタイム・有期雇用労働法8条
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
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┃事業主としての今後の対策
事業主として対策が求められることとしてまずは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇格差を解消することを考えていく必要があります。
そして、待遇格差を設ける場合には、休暇、手当それぞれにおいて「なぜ待遇格差を設けるのか」「その待遇格差が不合理なものでないか」を検討する必要があります。
検討した休暇や手当については、就業規則で定義や支給要件等を明確にすることが重要です。
さらに、非正規雇用労働者も含めたすべての労働者に説明し合意を得る等の対応が必要になるものと考えます。
*関連記事
同一労働同一賃金に関する最高裁判決が出されました
*裁判所
・令和1(受)794 地位確認等請求事件(大阪高裁から上告された事件)
・令和1(受)777 地位確認等請求事件(東京高裁から上告された事件)
・平成30(受)1519 未払時間外手当金等請求控訴事件(福岡高裁から上告された事件)