長時間労働や未払い賃金にも影響する「つながらない権利」

スマートフォンやモバイルPCがあれば外出先や自宅等、場所も時間も選ばずに仕事をすることができます。

つながらない権利とは、そのような環境のもとでも業務時間外に労働から解放される権利のことを言います。

┃つながらない権利

以前は、オフィスに行ってPCを開かないとメールが見られない、電話も受けられないのが普通でした。

しかし、テレワークや在宅勤務を導入する会社が増えてスマートフォンやPCを従業員に貸与するケースが増えると業務中と業務外の線引きがあいまいになります。

そうすると終業時刻後も休日も関係なく顧客からの連絡が入ったり、問い合わせが入ったりすることもあります。

つながらない権利とは、このようにあいまいになりつつある業務中、業務外の線引きをはっきりさせることと、考えることができます。

┃つながっている時間

日本では、明確に「つながらない権利」が認められているわけではありませんが「労働時間管理」の面から考える必要があります。

つながっている時間とは、次のような場合です。
「労働時間や休日でもメールや電話はいつでも対応できるようにしておくように指示をする」
「労働時間外や休日は、返信はしなくてもいいがメールやチャットは確認するように指示をする」
「労働時間外や休日は、一切メールや電話の対応をしなくてもいい、と指示をしていない

特に3つめは重要です。

明確な指示をしていない状態で従業員がなんらかの対応をして、それに対して会社が何もしない(黙認)のであればそれは、指示をしたのと同じと捉えられます。

会社側として「時間外にメールや電話の対応をしている」ことを黙認していると「対応することを認めていた(黙示の明示)」ことになります。

黙示の明示があれば当然に労働時間という扱いになり賃金が発生することになります。

┃つながっていることの会社のリスク

いつでもどこでもつながっている状態ということは、いつでもどこでも労働時間としてカウントされることになります。

労働時間にカウントされるということは賃金が発生します。

「終業時刻後も仕事をしていた」
「メールやチャットのやり取りもしている」
「それは上司も見ているので知っているはず」
「時間外にメールやチャットの返信をしないように指示を受けていない」
「だから、時間外労働に対する割増賃金を支払ってほしい」

と、言われたら会社側としてそれを否定する根拠(証拠)があるでしょうか。

また、そのような時間が時間外労働と認められると長時間労働の問題も発生し、従業員に心臓や脳血管疾患、メンタルヘルス不調が発生した場合に会社の責任が問われます。

つながっていることの会社のリスクをまとめると次のようなことが考えられます。

○未払い賃金、未払い残業代発生のリスク
時間外労働や休日労働の指示や把握があいまいで「黙示の明示」と捉えられれば、割増賃金の支払いが必要になる可能性がある。

○長時間労働による労働災害リスク
従業員に心臓や脳血管疾患、メンタルヘルス不調が発生した場合、労働時間の管理が不十分だと会社の安全配慮義務違反が問われる可能性がある。

┃会社としてのリスク回避、労務トラブル防止のポイント

会社として未払い賃金や労務トラブルを防止するためには、以下の3つを実施する必要があります。

就業規則で労働時間の定義を明確にする
○時間外労働、休日労働を許可制にする等、労働時間管理を徹底する
勤怠管理システムで客観的に労働時間を把握する仕組みを構築する

以上のようなルールを明確にし、運用を徹底し、形骸化させないことが重要です。

*厚生労働省
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

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