諸手当制度は、会社から従業員に対してメッセージ、考え方、想い等を伝えるための一番わかりやすい制度であるといえます。
諸手当制度を最大限効果的に活用するためには、諸手当それぞれの意味(定義)をよく考えることが重要です。
┃諸手当制度
多くの会社で、毎月の給与を支払うとき基本給の他に諸手当を付けているケースは珍しくありません。
この諸手当には大きく分けて2種類あり、「法律上、支給が義務付けられているもの」と「会社が任意で付けるもの」に分かれます。
┃支給義務がある手当
諸手当の中で法律上、支給が義務付けられているものは、時間外労働や休日労働、深夜労働の際に発生する割増賃金です。
各割増賃金については、支給条件(どのような場合に支給するか)、計算方法が決められています。
法律上定められた計算方法で計算した金額に足りない場合には、賃金未払いになります。
┃任意で支給する手当
上記以外の諸手当は、すべて事業主が任意で支給するものです。
一般的に支給されている通勤手当も事業主が任意で支給する手当にあたるため、支給するかしないか、上限を設けるかどうかは、事業主が決めることができます。
よく問い合わせがあるケースとしては、次のようなものがあります。
○通勤手当
・支給する/しないは事業主が決める
・月○万円まで等、上限を設定することもできる
・定期代を1箇月分ずつにするか、6箇月分ずつにするかも事業主が決める
・月の途中で入退社した場合の清算方法も事業主が決める(清算しなくてもよい)
○住宅手当・家賃手当
・支給する/しないは事業主が決める
・月○万円まで等、上限を設定することもできる
・月の途中で入退社した場合に満額とするか日割計算するかも事業主が決める
「事業主が決めることができる」といってもその時々で判断が変わってしまっては従業員間の不公平が生じ、労務トラブルの元です。
どのような運用にするかは、就業規則(賃金規程)に定めて公平な取り扱いをすることが重要です。
┃諸手当の廃止は不利益変更になる
「事業主が決めることができる」といっても事業主がいつでも廃止できるわけではありません。
一度、支給することが決定した手当を廃止することは、労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。
不当な不利益変更は、労務トラブルの原因になる他、行政指導の対象となることがあるので注意が必要です。
┃諸手当は就業規則(賃金規程)に必ず記載
手当を考えるとき、決めることは2つ、「金額」と「支給条件」です。
支給条件とは、なぜ支給するのか、会社として従業員になにを求めるのか、なにをして欲しいのか、を決めることでもあります。
逆に「それができないなら手当を外す」ことを有効にすることでもあります。
例えば、次のようなことが考えられます。
○役職手当
・役職者としての職務をまっとうしてくれたら支給する
・役職者として相応しくないなら手当は外す
※役職者の定義も必要
○資格手当
・資格を取得し、資格が必要な業務に就いている間に支給する
・資格が不要な業務に配置転換されたら手当は外す
○無事故手当
・自動車運転者に対して無事故継続なら支給する
・事故を起こしたら一定期間は支給しない
就業規則(賃金規程)に支給条件を規定しておけば、このような取り扱いが可能ですが何も定義づけがなければ、手当を外すことで不利益変更の問題が生じます。