会社の業績悪化や労働者の背信行為、または労働者の能力不足等が原因で労働者を辞めさせなくてはならない場合があります。
解雇とは、事業主側からの通告による一方的な意思表示で労働契約を終了させることをいいます。
解雇は慎重に行わないと大きな労務トラブルに発展します。
┃解雇の種類
「解雇」と一言でいってもその解雇に至った事情等によって一般的に「懲戒解雇」「普通解雇」「整理解雇」の3つに分けられます。
①懲戒解雇
懲罰的な意味の解雇。犯罪を行ったり業務命令に従わなかったりした場合に会社の秩序を維持するために行われる。
②普通解雇
労働者の勤怠不良や能力不足等、労働契約を維持できないと事業主が判断した場合に行われる。
③整理解雇
会社の業績不振や経営体質の改善のために人件費削減策として行われる。一般的に労働者側に落ち度はないと考えられる。
┃解雇が無効になるとどうなるか
解雇された労働者は、突然、自分の収入減を失うことになりますし、自分に落ち度がないと考えているケースでは「解雇は無効である」として事業主を訴えることが考えられます。
解雇による労務トラブルはとても多く、裁判例も多数ありますが事業主側が勝訴するためには、適切な対応と準備が必要です。
裁判で争った結果、解雇が無効であると判断されれば、裁判で争っていた期間中も「労働契約が継続していた」とみなされ賃金を支払わなくてはなりません。
さらに慰謝料や解雇される前の期間について未払い残業代を同時に請求されるケースもあります。
このように安易な解雇が会社に多大な損害を与えるケースもあります。
┃解雇無効で労働者が勝訴した事例
解雇に関する裁判事例は多く存在しますが、一般的に見て労働者に責任があるような事例でも解雇無効の判断がなされることも少なくありません。
セガ・エンタープライゼス事件
正社員として採用された従業員Xが、労働能率が劣り、向上の見込みがない、積極性がない、自己中心的で協調性がない等として解雇されたことに対して、解雇を無効として訴訟を提起した事例。
→労働者勝訴
トラストシステム事件
システムエンジニアXが、派遣先で繰り返し行った長時間にわたる電子メールの私的使用や、私的な要員派遣業務のあっせん行為が、服務規律、職務専念義務に違反していたとして解雇された事例。
→労働者勝訴
高知放送事件
アナウンサーだった労働者Xは2週間の間に2度、寝過ごしたため、午前6時からの定時ラジオニュースを放送できない放送事故を起こす等して解雇された事例。
→労働者勝訴
解雇が有効か無効かの判断は非常に難しく個別のケースごとに慎重な対応をする必要があります。
また、可能な限り解雇は避けるよう事業主と労働者がお互いに話し合い、歩み寄る姿勢も大切です。
まちがいなく言えるのは、安易な解雇、理不尽な解雇は、労働者の人生を狂わし、会社に多大な損害を与える可能性があると言うことです。