事例紹介┃まちがえると危険な労働条件の不利益変更

人事制度の導入や改定、就業規則などの変更により労働条件が変更になるケースがあります。

賃金が増えたり休日が増えたり等、労働者にとって有利に変更することで問題になることはありませんが、労働条件が不利益に変更される場合には注意が必要です。

労働条件の不利益変更は、労務トラブルが起きやすい場面の一つです。

┃事件の概要

【事業主側】
山梨県内の信用組合

【労働者側】
信用組合を退職した元従業員ら12名

【争いの内容】
・経営破綻が懸念される状況となったA信用組合がB信用組合に吸収合併された
→その際に、B信用組合に引き継がれるA信用組合従業員の退職金について、退職給与規程を改定
・退職金規程の変更により退職金が大幅に減額された
→人によっては0円になるケースも

事業主側としては、従業員に対して退職金規程の変更について説明し、同意書に署名も得たと主張しています。

┃裁判所の判断

○従業員の同意について
・自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高くなること
・予め示されていた同意書案の記載と異なり著しく均衡を欠く結果となること
・具体的な不利益の内容や程度についてこうした情報提供や説明はなかったといえる

○従業員への説明について
変更への同意について自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられていたというためには従業員に対し、
・具体的な不利益の内容や程度についての情報提供や説明がされ、
・新規程による不利益の内容や程度について理解がされていること
・退職が自己都合によるものではない場合であっても、自己都合退職の係数となる
→その結果、支給される退職金額が0円となる可能性が一層高くなる

以上のような具体的な不利益の内容や程度について情報提供や説明がされる必要があった。

今回の事件について、報告書への署名に当たり、具体的な不利益の内容や程度について十分な理解が得られているか否かの確認はされていないし、改めて情報提供や説明がされた事実は認められない。

┃まとめ

裁判所は以上のように退職金制度の変更について従業員らが署名した書面の存在は認めたものの、その同意書面の有効性を否定しました。

結果として事業主側は、従業員側の12人に対して合計で7000万円以上の金銭を支払うこととなりました。

労働条件の不利益変更は専門家の指導のもと、慎重、かつ、丁寧に実施することが重要です。

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