感染症の流行や災害対策の一つとして「テレワーク・リモートワーク・在宅勤務・在宅ワーク」が注目されています。
広い意味での「テレワーク・リモートワーク・在宅勤務・在宅ワーク」は、必ずしも自宅で仕事をすることではなく、場所を選ばずに働くことをいいます。
ただ単に「会社に来なくていい」と指示するだけでなく、ルールを明確にする必要があります。
テレワークとは
テレワークとは、「テレ(tele=離れたところで)」「ワーク(work=働く)」という言葉を組み合わせた造語です。
ICT技術を活用して時間や場所を選ばない働き方のことを言います。
「テレワーク・リモートワーク・在宅勤務・在宅ワーク」いずれも広い意味で考えれば同じ意味です。
テレワークと労務管理
テレワークだかといって労働時間等、なにも管理をしなくてもいい、というわけにはいきません。
テレワークであっても労務管理は、必要です。
テレワークと労働時間管理
テレワークを導入する場合、「クラウド勤怠管理システム等で労働時間管理をする方法(原則)」と「事業場外みなし労働時間制を導入する方法」の2パターンが考えられます。
○クラウド勤怠管理システム等の導入
クラウド型の勤怠管理システムであれば、パソコンやスマートフォンで労働時間管理が可能になります。
また、パソコン等の情報通信機器を活用してテレワークを実施する場合には、ログイン・ログアウト時間の管理による労働時間管理も不可能ではありません。
○事業場外みなし労働時間制の導入
事業場外みなし労働時間制とは、次の条件に当てはまる場合に導入が認められます。
外回りの営業職等、「ただ単に外で働いている」だけでは、対象にならないので注意が必要です。
・労働者が業務の全部または一部を事業場の外で行っている
・事業主の目の届かない(指揮監督が及ばない)
・労働時間の把握が困難
以上の要件を満たす場合にその事業場外で働いた時間に関しては、労働時間の把握を免除し所定の労働時間を働いたとみなすことができる制度です。
テレワーク時に事業場外みなし労働時間制を導入する場合には、次の条件をみたす必要があります。
①労働者の自宅等で行われる在宅勤務であること
②パソコン等の通信機器が常時通信可能で事業主の監視下に置かれているものでないこと
③随時、事業主からの具体的な指示で行われているものでないこと
次のような場合には、事業場外みなし労働時間制とは認められません。
○事業主と常にオンライン(通信可能な状態)であることを義務付けられている
○事業主がメール等で常に具体的な指示ができ、労働者がそれに応じなければならない
→常時インターネットに接続されていても労働者が自由にパソコンから離れることが許されている必要があります。
テレワークと就業規則
原則通りの労働時間を実施するのであれば、必ずしも就業規則の改定は必須ではありません。
ただし、初めてテレワークを実施する際、対象となる労働者の採用当時にテレワークが想定されていなかった場合には、雇用契約書や労働条件通知書の再作成等、労働条件の見直しと説明が必要です。
また、就業規則に事業場外みなし労働時間制に関する規定がない場合には、就業規則を変更する必要があります。
さらに「みなし労働時間」が法定労働時間を超える場合には、「事業場外労働に関する協定届」を労働基準監督署長に届け出る必要があります。
その他、注意が必要な点としては、深夜や休日に労働した場合は、事業場外みなし労働時間制を導入した場合においても割増賃金の支払が必要なことです。
その他の注意点
労働時間管理やルールの作成については、上記の通りです。
その他の注意点としては、次のようなことが考えられます。
○個人情報等の情報漏えい対策
パソコンなどを貸与する場合には事業主の責任においてセキュリティソフトを導入するようにします。
労働者個人のパソコン等を活用する場合には、セキュリティソフトがインストールされていることを確認する必要があります。
社内外のネットワーク環境のセキュリティ対策も必要になります。
○誓約書等の作成
セキュリティやネットワーク環境の整備、ルールを策定したとしても最終的には、事業主と労働者の信頼関係が無いとテレワークは成功しません。
信頼関係の確認のためにも情報漏えい防止に関する誓約書等は作成しておいた方がよいと考えられます。
○情報漏えい保険・サイバーリスク保険への加入
どのように万全の対策をとっていたとしても人為的ミスや外部からの悪意ある攻撃等、防ぎきれない情報漏えいもあり得ます。
そうした時に事業主の被害を抑えるためにも損害保険への加入もリスクマネジメントとしては大切です。
テレワークの導入は、簡単なようでルールの整備以外にも対応するべきことは多いです。