日本年金機構は、年金事務所の各管轄の事業所に対して社会保険関係の手続きが適切に行われているかを確認するために事業所調査を実施しています。
毎年7月に実施される社会保険の算定基礎届(定時決定)の際には、算定時調査として定期的な調査が行われます。
目次
┃事業所調査の種類
日本年金機構が実施する調査は大きく分けて2種類、算定基礎届(定時決定)と合わせて実施される算定時調査と臨時的に実施される事業所調査があります。
どちらも目的は、社会保険関係の手続きが適切に行われているかの確認です。
┃事業所調査の方法と確認項目
事業所調査の方法と確認項目は主に賃金台帳や出勤簿を元に
- ・労働者ごとの月間労働時間、月間労働日数
- ・労働時間や労働日数から判断して被保険者となるべき者の資格取得漏れがないか
- ・過去数箇月から2年程度遡り、月額変更等が適切に実施されているか
このようなことが確認対象になります。
┃事業所調査により不備が見つかった場合
日本年金機構が実施した事業所調査の結果、手続き漏れや手続きの不備が確認された場合には、最大で2年遡って、是正する必要があります。
〇社会保険の資格取得漏れがあった場合
加入資格が発生した月まで遡って資格取得を行う必要がありますが、中には既に退職してしまっているケースもあります。
その場合でも該当社については、遡りでの資格取得手続きが必要です。
〇月額変更届や算定基礎届等の届け出漏れがあった場合
月額変更届や算定基礎届の届け出漏れがあった場合にも該当した月、または年度まで遡っての届け出が必要になります。
遡って手続きをした結果、社会保険料が増額になっていた場合には、遡った月以降の差額を納付しなくてはなりません。
┃従業員からの社会保険料遡り徴収が困難なケースもある
社会保険料は原則として労使折半、日本年金機構からは全額事業主に請求がありますが、2分の1は、従業員の給与から徴収する仕組みです。
既に退職してしまっていたり、遡りの社会保険料が多額になったりする場合で従業員からの徴収が難しいケースもあります。
そのように従業員から社会保険料の徴収ができない場合でも日本年金機構からの請求金額は変わりませんので、そのときは事業主が全額負担するしかありません。
事業所の規模にもよりますが遡って納付する社会保険料の額は、数百万円から数千万円になることもあります。
┃社会保険の未加入事業所対策
日本年金機構による事業所調査は、現在社会保険に加入している(適用事業所になっている)事業所だけとは限りません。
本来は、社会保険の被保険者となる者が在籍しているのに手続きを怠っている社会保険の未加入事業所対策も強化されています。
こうした手続きを怠たると遡りの社会保険料徴収や延滞金等、行政からの厳しいペナルティを受けるだけではなく、従業員との信頼関係を失い採用定着にも影響を及ぼします。
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