キャリアアップ助成金の申請で不支給にならないために

キャリアアップ助成金助成金は、非正規雇用労働者の事業所内でのキャリアアップや待遇改善、正社員化などの取り組みを実施した事業主に対して支給されます。

この助成金が創設された当初は、他の助成金と比べると比較的申請がしやすいものでした。

しかし、不正受給対策や助成金の趣旨に合わない申請を排除するための要件の厳格化が行われ、今では「申請しやすい」とは言えないものになっています。

これまで、当事務所にご相談をいただいたキャリアアップ助成金(正社員化コース)について、助成金の申請ができなかった失敗事例をお伝えします。

今後、申請を検討される際には、次のことにも注意するようにしてください。

なお、当事務所では、支給要件に該当しなくなったものについては、支給申請を見送るようお願いしています。

┃就業規則に関する失敗事例

○就業規則の適用対象者の不備

就業規則には「この規程は正社員に適用する」等、適用対象者が明記されているケースがあります。

パートタイマーや有期契約労働者から正規雇用労働者へ転換する場合、就業規則の適用対象者が適切に規定されているか、確認が必要です。

○就業規則の条文の不備

キャリアアップ助成金を申請するためには、助成金の要件を満たすための制度導入とそれに伴い、就業規則に必要な条文を明記する必要があります。

例えば、正社員化コースであれば正社員転換制度を規定する必要があります。

「顧問弁護士が作成したから問題ない」という認識で、当事務所の事前確認を受けなかった事業所が必要な条文が明記されておらず、要件を満たさなかったケースもあります。

┃賃金上昇要件に関する失敗事例

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の主要な要件の一つで賃金上昇要件があります。

非正規雇用労働者から正規雇用労働者への転換時に3%以上(2020年度までは5%)賃金を上昇させる必要があります。

○就業規則(賃金規程)に規定されていない手当での賃金上昇

賃金上昇要件では、支給要領等で明示された通り、一定の条件に合った手当を新たに支給、または増額する等しなければなりません。

就業規則に規定されていない手当を支給したとしても賃金上昇要件を満たしたことにはなりません。

新たに手当を新設して賃金上昇要件を満たそうとする場合には、就業規則の改定が必要です。

┃実態との不整合による失敗事例

キャリアアップ助成金に限らず、助成金の申請は書類に書いてあることがすべてです。

「どこにも書いていないけれど実態はこうです」は、一切通じないと考えた方が良いでしょう。

○固定残業代に関する不備

事業所としては固定残業代として支給していた手当が就業規則上、固定残業代と明記されていないと時間外労働に対する割増賃金が支給されていないと判断されます。

そうすると助成金を受給するためには、割増賃金(残業代)の遡及支払いが必要になります。

○人事制度・就業規則・実態との不整合による不備

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の場合、非正規雇用労働者として雇い入れてから最短でも12箇月経過後に支給申請を行います。

その12箇月の間に人事制度、賃金制度の変更を実施する場合には特に注意が必要です。

賃金制度の改定に伴い、手当の改廃や基本給等の改定があった場合、賃金上昇要件を満たすかどうかの判断が非常に難しくなります。

賃金制度の改定に合わせて就業規則の修正も必要になり、タイミングがずれると支給要件を満たさなくなってしまいます。

┃まとめ

助成金を受給するためには、ここで紹介したこと以外にも法令順守が最低条件です。

これ以外にも「助成金の趣旨に合わない」として不支給になった事例もあると言います。

支給申請手続きを社会保険労務士に外部委託するとしても事業主として最低限の理解は必要になるでしょう。

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