事例紹介┃教育訓練・研修中の賃金の支払い

人材育成の一環として行われる教育訓練や社内研修については、業務に直結したり参加・不参加が評価につながったりするようであれば労働時間に含まれるのが基本です。

労働時間に含まれるということであれば、当然、最低賃金等の労働関係法令の適用も受けることになります。

┃事件の概要

【事業主側(上告人)】

事件の現場となった病院。研修医Bに対して臨床研修期間中、月額6万円の金員及び1回当たり1万円の副直手当(以下「奨学金等」という。)を支払っていた。

【労働者側(被上告人)】

研修医であったBの両親。Bの死後、病院を相手に訴えを起こしている。

【争いの内容】

  • ・研修医として勤務していたBが労働者であったこと
  • ・労働者だったので最低賃金法の規制を受けること
  • ・病院が支払っていた奨学金は最低賃金に満たなかったこと

以上により、最低賃金に達していなかった部分との差額の支払いを求めている事件です。

┃裁判所の判断

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臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。

そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。
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→研修中であったとしても実際に行った行為自体は、労務の遂行(業務)であり、事業主の指揮命令の元に行っていたのだから労働していたことになる、と判断。

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Bに対して奨学金等として金員を支払い、これらの金員につき給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたというのである。
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→奨学金とは言っても実質的には給与。最低賃金法の規制対象となる。

裁判所は以上のように判断し、事業主に対して奨学金と最低賃金との差額の支払いを命じました。

┃まとめ

一部の業界、一部の事業所では、研修中は賃金が支払われないということも珍しくありません。

賃金を支払わず無給で研修を実施していることが適切かどうかは、一度、専門家の判断を仰いだ方が良いでしょう。

*裁判所
関西医科大学研修医(未払賃金)事件(平成17年6月3日/最高裁判所第二小法廷/判決)