手持ち時間・待機時間に関する労働時間考え方

飲食店や美容室、治療院など「いつ来店があるかわからない」ような業種の場合、実際に労働はしていないが休憩のように自由が保障されているわけでもない時間があります。

このような時間を手持ち時間といい、労働時間管理が適切に行われていないケースも多いです。

手持ち時間の判断を誤ると労務トラブルに発展し、未払い賃金が発生する原因にもなるので注意が必要です。

┃事件の概要

【事業主側:被告】

被告はすし店を営んでいる有限会社。

【労働者側:原告】

すし店の板前見習および洗い場等裏方の仕事に従事している店員。

【争いの内容】

  • ・勤務時間中の客の途切れた時などを見計って適宜休憩してよいとされていた
  • ・来客の切れ目は手持ち時間にあたるため休憩ではなく賃金が発生する
  • ・手持ち時間について賃金が支払われていない

労働者は以上のようにいわゆる手持ち時間は休憩ではなく労働時間にあたるから賃金を支払ってほしいと主張しました。

┃裁判所の判断

○原告らの勤務条件

(1) 勤務時間:
午後三時から閉店(翌日午前二時)まで

(2) 休憩時間:
飲食店及び場所柄の特殊性があるので、客足の途切れる午後五時三〇分から同六時三〇分まで、及び同一〇時から一二時頃までの間は自由に休憩してよい。

○認められる事実

休憩時間については、午後10時頃から午後12時頃までの間に客がいない時などを見計らって適宜休憩してよい、との約束であったものということができる。

しかし、労基法34条の休憩時間とは、労働から離れることを保障されている時間をいうものである。

原告らと被告との間の雇用契約における休憩時間に関する約束は次のようなものであった。

  • ・客が途切れた時などに適宜休憩してもよい
  • ・現に客が来店した際には即時その業務に従事しなければならなかった

以上のことからすると、休憩について完全に労働から離れることを保障するということができず、単に手待時間を休憩としていたにすぎない。

この時間は、休憩時間とはいえず、いわゆる手待時間にすぎないから労働時間に含まれる。

裁判所は以上のように判断し、未払い賃金とペナルティとして未払い賃金額と同額の付加金の支払いを命じました。

┃まとめ

飲食店や美容室、治療院など一部の業界では、「来客が無い時間を休憩時間」とみなすような労務管理を行っているケースがあります。

しかし、出るところに出ればこれは休憩時間とは認められずこのケースのように残業代の未払いと判断されることになります。

*参考判例
すし処「杉」事件(昭和56年3月24日/大阪地裁/判決)