雇用保険はこれまで、主たる1つの事業所でしか被保険者になることができませんでした。
今回の法改正では、65歳以上の高年齢者について複数の事業所の労働時間を通算して要件を満たす場合には雇用保険被保険者となることができるようになります。
今回は、雇用保険マルチジョブホルダー制度の概要と事業主としての対応についてお伝えします。
┃雇用保険マルチジョブホルダー制度とは
雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、65歳以上の労働者が一定の要件のもとに複数事業所の労働時間を通算して雇用保険被保険者になることができる制度です。
雇用保険被保険者になることで高年齢求職者給付金を受給することができるようになります。
┃雇用保険マルチジョブホルダー制度の要件
雇用保険マルチジョブホルダーとなるためには、次の要件を満たす必要があります。
- ・複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- ・2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- (1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)
- ・2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
この要件を満たすことで雇用保険被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。
┃雇用保険料と保険給付
マルチ高年齢被保険者に対する雇用保険料は、それぞれの事業主が行います。
雇用保険料額は通常の労働者と同様、労働者に支払う賃金総額に、保険料率を乗じて計算するのを原則としています。
マルチ高年齢被保険者が離職をして受給要件を満たす場合には、高年齢求職者給付金を受給することができます。
通常の給付(高年齢求職者給付金)と同様に、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること等が要件になります。
2箇所以上の事業所に雇用されている場合で、1つの事業所のみ離職した場合であっても要件を満たしていれば高年齢求職者給付金を受給することができます。
┃事業主が行う手続きなど
マルチ高年齢被保険者になるための手続きは、基本的には労働者本人が行うことになっています。
労働者は、複数の事業所で勤務しており、そのうち2つの事業所において労働時間や雇用期間などの要件を満たすことになった場合に本人からハローワークへ申し出を行います。
事業主は、本人からの申し出に基づいて、雇用の事実や所定労働時間等、手続きに必要な照明を行います。
雇用保険料は、マルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から発生し、事業主が納付することになりますから、資格取得日の確認なども必要になります。
また、マルチ高年齢被保険者でなくなった場合にも労働者本人から情報提供をしてもらう必要があるでしょう。
┃まとめ
今回は、雇用保険マルチジョブホルダー制度の概要と事業主としての対応についてお伝えしました。
複数の仕事を短時間で掛け持ちしている高年齢者が対象になります。
事業主としても手続きの協力を求められた場合には対応する必要があるため、制度について理解しておくようにしてください。