事例紹介┃管理監督者と認定されるために必要なこと

「管理職だから残業代を出さない」というのは、経営者の中ではよくある話です。

しかし、一般的な管理職と「残業代の支払い対象外となるいわゆる管理監督者」は、実態を伴っているかどうかが重要です。

労使の争いになったとき、管理監督者性が認められることはほぼありませんが、認められた数少ない事例をご紹介します。

「徳洲会 〔国・中労委(時間外賃金請求)事件(大阪地裁 昭和62年3月31日 請求棄却)」という事件です。

事件の概要(原告:労働者、被告:事業主)

被告は医療法人、原告はそこで勤務する事務職員。

○原告の職務
・看護師の募集、採用業務を任されていた
・休日、深夜などを問わず業務に従事しており、その割増賃金の合計は【529万3809円】
・原告は、未払いの割合賃金【529万3809円】と遅延損害金を求めた

以上が原告の請求内容と事件の概要です。

裁判所の判断

・原告は、人事第二課長の肩書があり、給与面でも課長職として処遇されていた
・その役職に相応する手当として、責任手当が支給されてきた
・原告の主な職務内容は、看護婦の募集業務の全般であり、業務の責任者だった
・自己の判断で看護婦の求人、募集のための業務計画、出張等の行動計画を立案していた
・立案した行動計画について、自己の判断で実施する権限が与えられていた
・業務の遂行にあたり被告の本部及び被告経営の各病院の人事関係職員を指揮、命令する権限も与えられていた
・出勤日における労働時間は、原告の責任と判断により、その自由裁量により決定できた
・夜間、休日等の時間外労働の発生が見込まれたため、実際の時間外労働の有無、長短にかかわりなく、特別調整手当が支給されてきた
・一般の看護婦については、自己の調査、判断によりその採否を決定していた
・採用を決定した看護婦については、自己の裁量と判断により、被告が経営する各地の病院にその配置を決定する人事上の権限まで与えられていた
・婦長クラスの看護婦についても、その決定手続に意見を具申する等深く関わってきたこと

以上の事実が認められる。

裁判所は、このように事実関係を認めました。

その結果、

■採用に関して医療法人全体への大きな権限をもっていたこと
■医療法人全体への人事に関する権限ももっていたこと
■労働時間に関しても裁量が大きく認められていたこと
■管理監督者としてじゅうぶんな手当が支払われていた

以上の点を重視し、「管理監督者にあたるので、割合賃金の支払い対象にはならない」と判断しました。

まとめ

複数拠点を有する医療法人で、看護師に関するほぼすべての人事権があり、労働時間の裁量とじゅうぶんな手当が支払われていたために管理監督者性が認められた事例です。

執筆時点では、上級審の結果は確認できておりませんが上級審になれば覆ることもじゅうぶんにあり得ます。

これは、管理監督者性が認められた珍しい事例です。

基本的には経営者と同等の権限を有し、それに見合った賃金が支払われていないと管理監督者性は認められないと考えた方が良いでしょう。

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