退職した社員から「出産手当金の申請をしたい」と言われた場合、会社は何をしたらよいのでしょうか。
今回は出産手当金について解説します。
出産手当金とは
産前産後休業期間中に健康保険の被保険者が仕事を休み、報酬を受けられなかったときに支給されます。
労働基準法では産前42日(多胎98日)、産後56日の産前産後休業を規定しています。
この期間は無給とする会社が多いのですが、その間の所得補償として出産手当金が支給されます。
出産手当金の1日当たりの額は、標準報酬月額一日分の3分の2に相当する額です。
会社から報酬を受けたときは、その分を差し引いた金額が支給されることになります。
退職後に出産手当金の受給は可能か
原則として、出産手当金を退職後に受給することはできません。
ただし一定の条件を満たせば、例外的に受給できるケースもあります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)のホームページでは次のように説明されています。
A7:次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き、出産手当金の支給を受けることができます。
(資格喪失後の継続給付)
1.被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
2.資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金はお支払いできません。
まとめ
① 退職日までに1年以上、健康保険の被保険者だった期間がある
② 退職日に出産手当金を受給していたか、受給できる条件を備えていた
という二つの条件を共にクリアしている場合は受給できます。
ただし退職日に出勤していると、受給資格を失ってしまうので要注意です。
事業主の対応
出産手当金は実際に仕事を休み、無給となった期間に応じて支払われるものです。
会社はその期間を証明する必要があります。
申請は「出産手当金支給申請書」を協会けんぽ(健康保険組合)に提出して行います。
申請書には事業主が記載する欄として、支給対象となる(元)従業員の出勤状況や賃金を記入する欄が設けられています。
出産手当金の申請期日は、休業した日ごとにその翌日から2年以内です。
退職してかなり日にちが経った後に、実は申請をしたいと言われるケースも無いとは限りません。
スムーズな申請のために、退職した社員も含めて、勤怠や給与の記録はしっかり管理しておく必要があります。
なお、労働基準法や労働保険、社会保険の諸法令においても「書類の保存期間」が定められているので注意が必要です。
※全国健康保険協会(協会けんぽ)
出産手当金について