2020年4月1日から<パートタイム・有期雇用労働法に基づく同一労働同一賃金のガイドライン>が適用されます(中小企業は2021年4月1日から)。
このガイドラインは、<パートタイム・有期雇用労働法>の施行に合わせて、その具体的な対応を示したものです。
ただし、現行法でも労働契約法20条、パートタイム労働法8条・9条 において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されています。
※厚生労働省
・労働契約法改正のあらまし
・パートタイム労働法のあらまし
今回は、労働契約法第20条における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の「待遇格差」が問題になった事例を紹介します。
「大阪医科薬科大学(地位確認等請求控訴)事件(大阪高裁 平成31年2月15日判決)」
■事件の概要(控訴人:労働者、被控訴人:事業主)
○被控訴人(事業主)と控訴人(労働者)は、有期労働契約を締結していた
○控訴人と無期雇用労働者(いわゆる正規雇用労働者)との間で次のような差があった
・基本給が2割ほど低い
・賞与が支給されない
・傷病などによる休暇が取れない
・正規雇用労働者に出る手当が出ない
以上のようなことは、労働契約法(労契法)20条に違反すると主張して、差額に相当する額等の損害賠償金及び遅延損害金等の支払を求めました。
裁判所の判断
労契法20条は、有期契約であることを理由に労働条件が相違する場合には、次のようことを考慮する必要がある。
・その業務に伴う責任の程度(職務の内容)
・その職務の内容
・配置の変更の範囲
・その他の事情
以上のようなことを考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
同条は、有期契約労働者については、無期契約労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。
同条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である。
■主な争点
○期間の定めがあることを理由とする相違にあたる
賃金、賞与等控訴人が主張する控訴人とB氏を含む正職員との労働条件の相違は、アルバイト職員と正職員とでそれぞれ異なる就業規則等が適用されることにより生じているものであるから、当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができる。
→2割程度の差であれば許容範囲
賞与について、被控訴人における賞与が、正職員として賞与算定期間に在籍し、就労していたことそれ自体に対する対価としての性質を有する以上、同様に被控訴人に在籍し、就労していたアルバイト職員、とりわけフルタイムのアルバイト職員に対し、額の多寡はあるにせよ、全く支給しないとすることには、合理的な理由を見出すことが困難であり、不合理というしかない。
→賞与をまったく支給しないのは不合理
夏季特別有給休暇について、職務の違いや多少の労働時間(時間外勤務を含む。)の相違はあるにせよ、夏期に相当程度の疲労を感ずるに至ることは想像に難くない。そうであれば、少なくとも、控訴人のように年間を通してフルタイムで勤務しているアルバイト職員に対し、正職員と同様の夏期特別有給休暇を付与しないことは不合理であるというほかない。
→夏季休暇を与えないことは不合理
私傷病による欠勤中の賃金及び休職給について、、アルバイト職員であるというだけで、一律に私傷病による欠勤中の賃金支給や休職給の支給を行わないことには、合理性があるとはいい難い。
→私傷病による休業中にまったく賃金を支給しないのは不合理
(正規雇用労働者には一部、手当てが支払われていた)
裁判所は以上のように
・賞与を支給しないこと
・夏期特別有給休暇を付与しないこと
・私傷病による欠勤中の賃金及び休職給を支給しないこと
これらは、その相違が不合理であるというべきである、
この判決は、高等裁判所の判断であるため今後の裁判によっては新たな判断がなされる可能性もあります。
しかし、「有期契約だから、アルバイトだから」という理由で正規雇用労働者にはある手当てや休暇がまったくない、というのは認められないという部分においては、<パートタイム・有期雇用労働法に基づく同一労働同一賃金のガイドライン>に示された方向性に沿った判断がなされています。
※厚生労働省
同一労働同一賃金ガイドライン