年次有給休暇の管理を簡素化する方法として「基準日の前倒し」や「基準日の統一」を採用するケースがあります。
こうした方法は、2019年4月から義務付けられる<年次有給休暇の時季指定>への対策にも有効です。
この時に発生するケースとしてパート従業員から、
「前倒しした付与日から法定の付与日までの間に所定労働日数が増加した」
「本来の付与日に対応した日数の年次有給休暇を付与してほしい」
という相談がありました。
年次有給休暇の比例付与
所定労働日数や所定労働時間が正社員と比較して短いパートタイマーの場合、その所定労働日数や所定労働時間に応じた日数の年次有給休暇が付与されます。
年度途中で所定労働日数を変更した場合の取り扱い
【4月1日入社のケース】
・年次有給休暇の付与日は、「入社日」とする
・2回目(次年度)以降の基準日は「4月1日」とする
このような取り扱いにした場合、この従業員の初回の付与日は「4月1日」となり2回目以降の基準日も「4月1日」となります。
・原則の基準日・・・10月1日(入社から半年後)
・前倒しの基準日・・4月1日
こうなると、この「10月1日」は、もう何も意味のない日付になります。
そのため、10月1日は、基準日にはなり得ないので、4月1日~10月1日までの間に所定労働日数が増加していたとしても事業主としては、年次有給休暇の追加付与を実施する必要はありません。
※昭和63年3月14日基発第150号 労働基準法関係解釈例規について:P344
トラブル防止のために
事業主としては、年次有給休暇の前倒し付与を実施することによって、従業員に対して<プラスの労働条件変更>を行っていることになります。
従業員としても本来付与されるよりも前に年次有給休暇を取得することができます。
しかし、従業員側の見解の違い(勘違い、解釈の間違い)によって、「損した気持ち」になってしまうこともあるでしょう。
そうした考えのミスマッチを防ぐために「事前の説明」や「就業規則への明記」が必要です。