一年単位の変形労働時間制は、労使協定を締結することにより一定の条件のもとに特定の週及び日に1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて労働させることができるとされています。
年間を通じて月ごとの繁閑がある場合に用いられる制度ですが、年間の労働日や労働日数をあらかじめ決めておく必要があります。
そのため、新型コロナウイルスの感染拡大等の不測の事態に対応しにくいというデメリットがあります。
┃新型コロナウイルス感染拡大に伴う変形労働時間制の変更等
一年単位の変形労働時間制を導入するためには、次のような手続きが必要です。
①就業規則への規定や労使協定の策定
②労働日および労働日ごとの労働時間
その上で、一年以内の期間を平均して一週間あたりの労働時間を「平均40時間以内」に収めることが必要です。
それによって、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて労働させることができるようになります。
あらかじめ、年間スケジュールを立てることができれば、労働時間を柔軟に対応できる便利な制度になりますが、スケジュールの変更は原則できません。
そのため、不測の事態には対応しにくいというのがデメリットになります。
┃新型コロナウイルス感染拡大に伴う変形労働時間制の変更等
厚生労働省が公開している新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)では、この点について次のように述べています。
1年単位の変形労働時間制は、対象期間中の業務の繁閑に計画的に対応するために対象期間を単位として適用されるものであるので、労使の合意によって対象期間の途中でその適用を中止することはできないと解されています。
しかしながら、今回の新型コロナウイルス感染症への対策による影響にかんがみれば、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に労使でよく話し合った上で、1年単位の変形労働時間制の労使協定について、労使で合意解約をしたり、あるいは協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能と考えられます。
以上の通り、特例として一年単位の変形労働時間制の労使協定の解約・破棄もあり得るとしています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、一年単位の変形労働時間制の維持が難しい場合には、顧問社会保険労務士や行政にも確認の上、解約・破棄も選択肢に入れて考えてください。