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【訪問介護事業の労働時間管理】通勤時間と移動時間は労働時間に含まれるのか

2024/1/19

2024/01/19

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

訪問介護事業では、労働者(介護職員・ホームヘルパー)が事業所に出勤するのではなく利用者宅に直接行き来をしたり、利用者宅間を移動したりするケースがあります。そうするとそれが通勤なのか、勤務時間内の移動にあたるのかによって労働時間の考え方が変わります。

通勤時間と移動時間は、同じ移動と考えがちですが労働時間に含まれるかどうか、つまり、賃金が発生するかどうかという視点で分けて考えなければなりません。

「通勤時間」と「移動時間」を両方とも同じ移動と考えて、移動にかかった時間は「介護サービスを提供している時間ではないから」という理由で、無給扱いにしている事業所もあるようですがそれは不適切です。

今回は、訪問介護事業の労働時間管理、通勤時間と移動時間は労働時間の考え方についてお伝えします。

┃訪問介護事業の移動時間と通勤時間

○訪問介護事業における移動時間の考え方

訪問介護事業における移動時間とは、事業所に出勤した後に利用者宅へ移動する時間や利用者宅から利用者宅へ移動する時間をいいます。

例えば、一度事業所へ出勤した後、利用者A宅へ向かいA宅でのサービス提供後、事業所へ戻らずに次のサービス提供先であるB宅へ移動するようなケースです。このような勤務時間中の移動は、通勤とは異なり職員が自由に使える時間ではないと考えられます。

そのため利用者A宅から利用者B宅への移動は「移動時間」となり労働時間に当てはまります。


○訪問介護事業における通勤時間の考え方

通勤時間とは、出勤あるいは退勤にかかる時間のことをいい、自宅から職場、職場から自宅への往復時間のことです。訪問介護事業においては、自宅から事業所へ出勤する場合の他、利用者宅との間を直行直帰するような場合も通勤と捉えることができます。通勤時間は事業主の指揮命令下にはなく、業務に遅れない限り自由に使うことができるため、この時間は労働時間とはならず給与も発生しません。

→訪問介護事業の直行直帰について詳しくはこちら

*出典:厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」

┃訪問介護事業の移動時間と労働時間

○事業主の指揮命令下におかれていると労働時間になる

事業主の指揮命令下におかれていると労働時間になり給与を支払わなければなりません。指揮命令下にある状態とは、事業主が仕事の場所や時間に指示を出し、職員がそれに従って働いている状態をいいます。

利用者宅間の移動の場合、次の業務を行うために移動しているので事業主の指揮命令下におかれていると考えることができます。

○労働者に自由が保障されているか

利用者宅間の移動の場合、次の訪問時間が決まっていたり、ルートや移動方法が指定されていたりすることが考えられます。そうすると、移動という業務を行っていることになります。勤務開始前や勤務終了後の通勤時間であれば、寄り道や買い物など所用を済ますこともできますが勤務時間中の移動ではそのような行動に制限をかけることもあるでしょう。

このように移動に対してなんらかの制限をするのであれば職員はその時間を自由に使えないことになり、事業主の指揮命令下にある(=労働時間)と考えることができます。

┃訪問介護事業の移動時間に時給(給与)が発生するケース

○勤務時間内に移動する場合は給与が発生する

訪問介護職員が自宅から利用者宅へ出勤し介護サービスを提供した後、他の利用者宅へ移動して、引き続き介護サービスを提供する場合、この移動時間は労働時間となり賃金が発生すると考えることができます。

○移動時間中に業務を行う場合は給与が発生する

移動時間中に業務日報の作成や報告、電話連絡などを求める場合にも勤務時間として給与が発生すると考えられます。また、事業所の外にいたとしても携帯電話やスマートフォンで具体的に指示を与えている(与えられる状態)場合には、使用者の指揮命令下にあるため給与が発生すると考えられます。

*出典:厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」

┃訪問介護事業の移動時間が労働時間にならないケース

○移動時間中でも自由が保障されていれば労働時間にならない

例えば、利用者A宅で業務終了後、B宅での業務開始までに60分の間隔があり、実際の移動は15分だとします。残りの45分間は、職員の自由にしてもいい(休憩時間)場合であれば移動時間として給与が発生するのは15分間だけと考えることができます。

○利用者宅へ直行直帰する場合は通勤時間になる

訪問介護職員が自宅から利用者宅へ移動する時間、または、利用者宅から帰宅する時間は通勤時間と考えられるため給与は発生しません。

→訪問介護事業の直行直帰について詳しくはこちら

┃訪問介護事業の移動時間の取り扱いで違法になるケース

利用者宅Aから利用者宅Bへ移動し、その間に業務連絡や報告が必要な場合は、その間は労働時間になり給与が発生します。介護サービスを提供していないからといって交通費しか支払わないのは違法となる可能性があります。

┃訪問介護事業の移動時間と労働時間の時間単価の設定方法

訪問介護職員については、介護サービス提供時間と移動時間、報告書作成等の業務を行っている時間という3つの枠に分けることができます。就業規則(賃金規程)でそれぞれの時間単価を分けて設定することも可能です。

介護サービス提供時間と移動時間で同じ時給を支払っていては人件費が増大してしまうので、このような方法を取ることも検討するとよいでしょう。

┃まとめ

今回は、訪問介護事業の労働時間管理、通勤時間と移動時間における労働時間の考え方についてお伝えしました。

適切な労働時間管理と給与の支払い、これを確実に行わないと未払い賃金請求などの労務トラブルに発展する可能性があります。また、このようなことを疎かにしていると職員が定着せず、人材確保もできなくなります。

介護保険法の他、労働基準関係法令もしっかり理解して事業を運営していくことが重要です。

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