• ”労務管理”マニュアル

【訪問介護事業の直行直帰と勤務時間】移動時間は労働時間に含まれるのか

2023/12/15

2023/12/18

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

訪問介護事業では介護職員が事業所に立ち寄らず自宅と利用者宅を直接行き来する直行直帰がよく見られます。会社として直行直帰を認める場合、自宅と利用者宅の往復をする通勤時間、利用者宅間を移動する移動時間との区別を適切に行うことが重要です。

利用者宅間の移動や事業所と利用者宅の往復などは勤務時間内と考えることができるため給与を支払う必要があります。介護サービスの提供時間のみを労働時間としてそれ以外の移動にかかる時間は無給とするのは不適切です。

不適切な労働時間管理は、賃金未払い残業の発生など労務トラブルの原因となる他、職員との信頼関係にも影響し、早期離職や人材定着への妨げにもなり得るので注意が必要です。

今回は、訪問介護事業の直行直帰と勤務時間、労働時間の考え方についてお伝えします。

┃訪問介護事業の直行直帰

直行直帰とは、自宅等から業務を行う場所まで直接行き(直行)、業務終了後も会社や事業所へは立ち寄らずにそのまま直接帰宅すること(直帰)をいいます。訪問介護事業所では直行直帰を認めていることが多く、事業所に立ち寄ることなくその日の業務を終えるケースも少なくありません。

直行直帰を認めて事業所への出社を省略することで効率よく時間が使える一方、通勤と移動、勤務時間の区別を認識しておかないと給与の未払いが発生し労務トラブルに発展したり行政指導の対象になったりするケースもあるので注意が必要です。

┃直行直帰と勤務時間(労働時間)

直行直帰により自宅と利用者宅の往復をする場合には、その利用者宅へ移動する時間は通勤時間と考えることができます。利用者宅Aで介護サービスを提供した後、利用者宅Bへ移動する場合、このA宅からB宅の移動は勤務時間中に行われることになるため労働時間となります。労働時間に該当するということは給与が発生します。

どのような時間が労働時間になるかは労働基準法などで明確に定義付けられているわけではありませんが、過去の判例では「使用者の指揮命令下に置かれている場合には労働基準法上の労働時間に当たる。」と述べられており、これが基本的な考え方になります。

┃直行直帰の移動時間は労働時間に含まれるのか

直行直帰の移動時間が労働時間になるのかついては個別の事例ごとの判断が必要になりますが、通勤として考えるか、勤務時間中の移動として考えるかにより判断することができます。

○労働時間になる移動

事業所には立ち寄らず直行直帰をする場合でも利用者宅間の移動が発生するのであればその時間は労働時間になると考えられます。

○労働時間にならない移動

訪問介護の場合で利用者宅に直行する場合、利用者宅が勤務場所となるので出勤と同様に考えることができます。直帰の場合も同様です。通勤時間は労働時間には当たらないため給与は発生しません。

○労働時間になる・ならないの判断方法

利用者宅へ直行、そこから直帰するケース場合の移動は通勤と同様に考えることができます。しかし、一日に数件の利用者宅を訪問する場合には利用者宅間の移動が発生します。

通勤時間は基本的に会社の指揮命令下になく、決められた時間までに職場に行くということ以外、職員はなにも制約を受けません。そのため、労働時間には当たらず給与は発生しません。一方、利用者宅間の移動は勤務時間中のため職員に自由はないと考えられるので労働時間に当たり、給与が発生すると考えられます。

┃訪問介護と事業場外労働に関するみなし労働時間制

○事業場外労働に関するみなし労働時間制とは

訪問介護の場合、介護職員は事業所の外(利用者宅)で業務にあたることが多いため「事業場外労働に関するみなし労働時間制(事業場外みなし)にできないか」と聞かれることがあります。

事業場外労働に関するみなし労働時間制とは、労働者が業務の全部または一部を事業場外で従事している場合に適用することができる制度です。事業主は本来、職員の労働時間を管理する義務がありますが、事業所の外で働いているために正確な労働時間を把握することが困難なケースがあります。そのようなケースにおいて事業場外労働に関するみなし労働時間制を導入することで「一定の時間働いたとみなす」ことができるようになります。

○事業場外みなし労働時間制が認められる条件

事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務、とされています。

訪問介護事業だから職員は事業所の外で業務あたっている、ということだけでは事業場外みなし労働時間制が認められる可能性は低いと言えます。最近では、スマートフォンなどのIT機器の発展により、会社の外で働いていたとしても社員の動向を把握することは難しくなく、実際に事業場外労働に関するみなし労働時間制を活用できる場面は少なくなってきています。

○事業場外みなし労働時間制でも残業は発生する

事業場外みなし労働時間制の元で働いていれば「一定の時間働いたとみなす」ことができるため残業が発生しないと考えている人もいますがそれは誤りです。直行して外勤をした後、終業時刻頃に事業所に戻ってきて内勤に従事したとすれば、あらかじめ決められた一定時間に内勤で働いた時間を加算して、時間外労働が発生するケースもあります。

┃訪問介護事業で事業場外労働に関するみなし労働時間制は使えるか

事業場外労働に関するみなし労働時間制は、職員が事業所の外にいればいいとうことではなく実際には細かい制約やルールが多いです。

訪問介護事業においては、利用者宅への訪問時間が決まっていたり、一回の訪問時間も事業所として把握できたりすることから実際に事業場外労働に関するみなし労働時間制を導入することは難しいでしょう。ただし、訪問介護職員ではなく事務職員が在宅勤務などで業務に従事するようなケースでは活用の余地はあるでしょう。

┃まとめ

今回は、訪問介護事業の直行直帰と勤務時間、労働時間の考え方についてお伝えしました。

労働時間になるかならないかは、その間に給与が発生するかに関わるため事業所にとっても職員にとっても関心が高いテーマになります。事業所としてはこうした部分を適切に運用しないと労務トラブル発生や離職の原因にもなるので注意が必要です

適切な労働時間管理を実施し、労務トラブルの防止と職員との信頼関係構築に努めるようにしていきましょう。

就業規則や勤怠管理の導入・見直し・採用・定着支援

  • 就業規則作成・見直し
  • 勤怠管理システム導入・見直し
  • 従業員の採用・定着支援

事業のスタート、継続に必要な
就業規則・勤怠管理、従業員研修、
労働保険・社会保険の手続きなど
GOALがあなたの事業所をサポートします。
まずはお気軽にご相談ください。