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【訪問看護ステーション開設の基礎知識】開業で失敗しないための3つのポイントとは

2024/6/29

2024/07/01

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

訪問看護ステーション(訪問看護事業所)は、少子高齢化によるニーズの高まりもあり、年々増加傾向にあると言われています。これからも高齢化は進んでいくことは疑いの余地がなく今後も必要とされるサービスであるのは間違いありません。

しかし、訪問看護ステーションの開設件数が増加しているといっても、経営が順調な事業所ばかりではありません。「一般社団法人全国訪問看護事業協会」の調査によると毎年数百件の廃業または休業を余儀なくされる事業所もあるとされています。

今回は、訪問看護ステーション開設の基礎知識と開業初期段階で失敗しないためのポイントについて解説していきます。


┃訪問看護ステーション(訪問看護事業所)

○訪問看護とは

訪問看護とは、病気や障害を持った人が住み慣れた地域で、自分の生活スタイルに合った療養生活を送れるように、医療系有資格者(看護師など)が利用者の居宅を訪問するサービスで、在宅医療の一つに区分されます。

利用できるのは高齢者だけに限られず、乳幼児から高齢者まで、訪問看護が必要な状態の人であればサービスを受けることができます。

○訪問看護サービスの内容

訪問看護サービスとちsて受けられるのは、看護師等が医師と連携して行う次のようなサービスです。

  • ・病状の観察:病気や障害の状態、血圧・体温・脈拍などをチェック
  • ・在宅療養ケア:身体の清拭、洗髪、入浴の介助、食事や排泄等の介助・指導
  • ・薬に関する相談や指導:薬の作用・副作用の説明、飲み方の指導、薬の管理など
  • ・医療処置(医師の指示による):点滴、カテーテル管理、インシュリン注射など
  • ・医療機器の管理:人工呼吸器などの管理
  • ・床ずれ予防・処置
  • ・認知症・精神疾患のケア:家族からの相談、対応方法のアドバイス
  • ・介護予防:運動機能低下予防、健康管理
  • ・ご家族等への介護支援・相談:家族会等、支援団体へつなぐお手伝い
  • ・在宅でのリハビリテーション:嚥下機能訓練など
  • ・ターミナルケア:がん末期や終末期の患者が自宅で過ごせるように支援

○訪問看護を行う人や必要な資格

訪問看護ステーションでサービス提供を行うのは、次の医療系資格を持った人たちです。

  • ・看護師
  • ・准看護師
  • ・保健師
  • ・助産師
  • ・理学療法士(PT:物理的手段で運動機能の維持・改善を図る)
  • ・作業療法士(OT:元通りの生活が送れるよう作業を通じてサポートする)
  • ・言語聴覚士(ST:言語障害、音声障害、嚥下障害の専門家)

○訪問看護を実施する2つの施設

訪問看護を行うのは、一つは「病院や診療所等、健康保険法上の保険医療機関が行う訪問看護」、もう一つは「行政から指定を受けた株式会社などの民間企業(法人)が運営する訪問看護ステーション」です。どちらも訪問看護事業を行う点では同じですが、異なる点があります。

・人員配置基準

保険医療機関が運営する訪問看護事業の場合の看護職員数は「適当数」であるのに対して、民間の法人が運営する訪問看護ステーションの看護職員数は「常勤換算2.5以上」といった人員配置基準が定められています。

→訪問看護事業所の人員配置基準について詳しくはこちら

・介護報酬

介護保険サービスとして行ったものに対しては、介護保険から介護報酬が支払われることになりますが訪問看護ステーションの方が介護報酬が高く設定されています。

訪問看護ステーションの報酬は、病院・診療所と比較して高く設定されています。

・訪問看護事業として行うリハビリテーション

訪問看護事業の一部としてリハビリテーションを行うことができるのは、訪問看護ステーションのみです。

┃訪問看護ステーションの開設と廃止に関する調査

○訪問看護ステーションの件数

訪問看護ステーションの数は近年、増加傾向にあります。「一般社団法人全国訪問看護事業協会」の調査によると、2011年の開設件数は5731件だったのに対し、2021年では13003件、倍以上の件数となっています。

○休止・廃止に追いやられる訪問看護ステーション

しかしながら、休止・廃止の件数も多いのが実情です。同じ調査内で、2020年度の訪問看護ステーションの新規数、休止数、廃止数が明らかにされています。

令和2(2021)年度
新規数:1633
廃止数:541
休止数:240

新規数1633件に対し、休廃止件数はその約半数にあたる781件、更に令和3(2021)年4月1日のデータを見てみると、456件の事業所が休止状態となっています。

┃開業で失敗しないための3つのポイントとは

○訪問看護ステーション開設と採用の問題

なぜ、訪問看護の需要は高まっているにも関わらず、開業後、事業の運営がうまくいかなくなってしまう訪問看護ステーションが多いのでしょうか。その理由は、訪問看護ステーションが持つビジネスモデルの特殊さと人材確保の難しさがあります。

一般の事業であれば人材採用を伴わないいわゆる「ひとり社長(ひとり法人)」でも経営は成り立ちますしかしながら、訪問看護ステーションではそのような経営方法は不可能です。

その理由としては、指定申請の要件に「常勤換算」という人員配置基準があることからもわかるとおり、必ず雇用が発生するのです。訪問看護ステーションの開設で始めのハードルとなるのが人材確保、看護師の確保になるでしょう。

訪問看護ステーションの人材確保については、準備にしっかりと時間をかけて広く採用活動をしていくことが重要です。周りの知り合いにも声をかけてみるとよいでしょう。

○採用選考の失敗

訪問看護ステーションを開設するためには必要な資格と経験を持つ人材を確保する必要があります。資格と経験があることが必須条件とはなりますが、職場環境を円滑にするためには人柄やコミュニケーション能力も必要です。

そのように事業の運営をまかせられる人材を確保することに苦労することが多く、資格だけを重視してしまうと職場の人間関係に悪影響を与えてしまうことにも繋がりかねません。

間違った採用をしてしまうと資格を持った職員が経営者よりも優位にたってしまうことにもなりかねません。あらかじめ就業規則や賃金制度を整備して経営者が職員に対して毅然とした態度で対応できるよう準備しておきましょう。

○高額な人件費

訪問看護ステーションでは、保健師、看護師など、医療系有資格者を複数雇用しなければなりません。資格がある分だけ給与水準も高くなるでしょう。また、期待したような能力を発揮できなかったとしても、人員基準のことを考えると簡単に辞めさせることもできません。雇用を続けざるを得ないという状況に陥ることもあります。

事業継続のことを考えると、能力に見合わない高額な給与を払ってでも有資格者を確保しておかなければいけない状況に陥ることも考えられます。

必然的に前職の給与を参考にすることが多くなりますが、言われるがままに支払うのではなく事業所としての基準(賃金制度・賃金体系)を持ち、能力に応じて昇給降給できるような制度を整えることが重要です。

┃まとめ

今回は、訪問看護ステーション開設の基礎知識と開業初期段階で失敗しないためのポイントについて解説ししました。

訪問看護ステーションを開設するときの課題となることなどについてご理解いただけたのではないでしょうか。

事業を軌道に乗せるためには最初が肝心です。スタートでつまづくことのないようしっかりと準備していきましょう。

*一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション基本情報」

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