- ”労務管理”マニュアル
地域別最低賃金が大幅改正│月給制の最低賃金チェック方法も解説
2021/10/4
2023/11/25
令和3(2021年)10月1日より、地域別最低賃金が改正されました。
全国平均でおよそ28円の値上げとなっています。
気をつけたいのが月給制の場合の最低賃金です。
総支給額だけ見て安心するのは早いですよ。
賃金額を計算し直してみると、実際は最低賃金額を下回っていたというケースもあるのです。
今回は最低賃金に関する基礎知識から、月給制の場合の最低賃金チェック方法まで解説します。
Contents
1.最低賃金制度とは
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定める制度です。
使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。
仮に最低賃金より低い賃金額を定めて雇用契約を結んだとしても、法律上無効となり、最低賃金額との差額を支払わなければなりません。
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科せられます。
特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法により30万円以下の罰金が科せられます。
①地域別最低賃金
業種や産業を問わず、各都道府県に定められている最低賃金額です。
各都道府県内の事業所で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されます。
都道府県ごとに1つずつ、全部で47の最低賃金が定められています。
冒頭で触れた通り、今年の10月1日から地域別最低賃金が改正されています。
②特定(産業別)最低賃金
「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定される最低賃金です。
関係労使の申出と最低賃金審議会の調査審議を経て認められます。
地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金が同時に適用される場合は、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金をその労働者に支払わなければなりません。
2.改正後の地域別最低賃金額
令和3(2021)年10月1日以後の関東地方の地域別最低賃金は以下のとおりです。
括弧内は去年までの最低賃金額です。
茨城:879 (851)
栃木:882 (854)
群馬:865 (837)
埼玉:956 (928)
千葉:953 (925)
東京:1,041 (1,013)
神奈川:1,040 (1,012)引用元
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
3.月給制の場合の最低賃金チェック方法
時給制なら地域別最低賃金との比較はやりやすいのですが、月給制の場合は案外難しいのです。
というのも、賃金の中には最低賃金の対象になるもの・ならないものがあるからです。
総支給額を単純に労働時間で割るだけでは判断できません。
あなたの給与は本当に最低賃金をクリアしているのでしょうか?
ここからは電卓を使いながら読んでくださいね。
①月給制の場合の換算方法
神奈川県の事業所で働くAさんの場合
基本給:160,000円
職務手当:10,000円
通勤手当:5,000円
時間外手当:50,000円
—
総支給額:225,000円
1日の労働時間:8時間
年間労働日数:250日
神奈川県の最低賃金:1,040円
(1)総支給額から最低賃金の対象にならない賃金を除外する
通勤手当、時間外手当は最低賃金の対象外です。
職務手当は最低賃金の対象に含めることができます。
225,000円-(5,000円+50,000円)=170,000円
(2)時間額に換算して最低賃金と比較する
(170,000円×12か月)÷(250日×8時間)=1,020円<1,040円
総支給額は低くない印象を受けますが、計算してみると1時間当たりの賃金額が地域別最低賃金を下回っていることが判明しました。
②固定給と歩合給が併給される場合
神奈川県の事業所で働くBさんの場合
固定給:140,000円(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当を除く)
歩合給:60,000円
固定給に対する時間外割増賃金:20,000円
歩合給に対する時間外割増賃金:5,000円
—
総支給額:225,000円
月間総労働時間:200時間
月平均所定労働時間:160時間
神奈川県の最低賃金:1,040円
(1)固定給から1時間あたりの賃金額を割り出す
固定給を月平均所定労働時間で除して算出します。
時間外割増賃金は最低賃金の対象にならないので除外します。
140,000円÷160時間=875円
(2)歩合給から1時間あたりの賃金額を割り出す
歩合給を月間総労働時間数で除します。
固定給の場合と同様に、時間外割増賃金を除きます。
60,000円÷200時間=300円
(3)固定給と歩合給の時間換算額の合計を出す
875円+300円=1175円≧1040円
今度は無事に地域別最低賃金をクリアすることができました。
①の場合と総支給額が同じ225,000円であることに注目してください。
総支給額を見ているだけだと、最低賃金のチェックができないのがよくわかりますね。
4.地域別最低賃金改正のまとめ
今回は地域別最低賃金の改正と、月給制の場合のチェック方法を解説しました。
月給制の場合、
「総支給額はそれなりの額を支払っているから大丈夫だろう」
と油断して、時間当たりの賃金額を精査しないケースがあります。
この記事を読んだらすぐに、今の賃金が本当に最低賃金をクリアしているか計算してみてくださいね。
最低賃金額以上の賃金を払えているかどうかは、普段の勤怠管理も関わってきます。
社会保険労務法人GOALでは、給与計算や勤怠管理に関するご相談も承っております。
「今の給料、本当に最低賃金以上になっているのかな…?」
気になる事業主のあなたはお気軽にお問い合わせをどうぞ。
*厚生労働省
・令和3年度地域別最低賃金改定状況
・最低賃金の対象となる賃金