- “手続き”マニュアル
訪問看護とは? 業務内容と指定申請について
2021/3/15
2023/11/25
日本の介護事業の中には、「住み慣れた家や地域で出来る限り長く過ごす」を重視したものがたくさんあります。
「訪問看護」もその一つです。
今回は訪問看護事業の概要と、訪問看護事業を始めるために必要な「指定申請」について解説します。
Contents
訪問看護事業とは?
訪問看護事業の定義は介護保険法第8条4項に規定されています。
介護保険法 第8条4項
この法律において『訪問看護』とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。
もう少しわかりやすく説明すると、看護師などが居宅を訪問し、療養上の世話や必要な診療の補助を行う事業のことです。
病気や障害がある方、介護の必要がある方が最後まで自宅で過ごせるように、主治医と連携を取りながら看護を行います。
訪問看護事業を行うことができるのは、病院・診療所・訪問看護ステーションの3種類です。
訪問看護の業務内容は?
主治医の指示と連携の下で次のようなサービスを行います。
認知症者の看護
精神障害者の看護
重症心身障害児者の看護
バイタル測定(血圧、体温)
食事、排せつ、入浴などの日常生活のケア
服薬管理
褥瘡処置(床ずれのケア)
居宅療養管理ケア
介護、看護負担に関する相談業務
家族会、患者会の紹介
…など
利用者本人のケアはもちろん、その家族に対するケアも訪問看護の業務内容に含まれます。
訪問介護との違いは?
訪問看護と混同しやすいのが「訪問介護」です。
一番大きな違いは「医療的ケアができるか・できないか」。
例えば、先ほど挙げた「服薬管理」「褥瘡処置(床ずれのケア)」は医療行為の一種なので、医師かその指示を受けた看護師でなければ行うことができません。
したがって、訪問ヘルパーが行う訪問介護では、服薬管理や褥瘡処置などのケアは業務の対象外となります。
一方、訪問看護ではカバーできないけれど、訪問介護でなら可能な業務もあります。
食事の準備や掃除、洗濯といった生活援助サービスがそれに当たります。
訪問看護事業所の開設と指定申請
訪問看護事業所を開設するには、必要な要件を揃えたうえで指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)から指定訪問看護事業者としての指定を受けなければなりません。
指定を受けるには規定の基準を満たす必要があります。
人員基準
・管理者(常勤専従の保健師または看護師、看護職員と兼務可) …1名
・看護職員(保健師、看護師又は准看護師) …2.5名
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 …実情に応じた人数
※常勤の職員を1名、半日勤務の非常勤職員を0.5人として数えます。
設備基準
事業の運営に必要な広さを有する専用の事務室を備えていること
必要な広さがあればマンションの1室でも可能ですが、一定の制限が設けられているケースもあります。
耐震工事や消防設備が現在の法令の基準を満たしているかどうかも確認しましょう。
利用申し込みの受付、相談等に対応するのに必要なスペースを確保すること
専用の個室を設けているのが望ましいですが、パーテーションの設置でOKとしている指定権者もあり、基準には地域差があります。
指定訪問看護の提供に必要な設備及び備品を備えていること
デスク、パソコン、電話、複合機、衛生材料や薬品などを準備し、実施調査の可能性もふまえてきちんと整理整頓しておきましょう。
特に感染症予防に必要な設備等に配慮する
独立の洗面所、消毒設備、オートクレーブなど、感染症予防のための設備を完備しましょう。
法人格の取得が必須
訪問看護事業所を開設するには、必ず法人を設立して法人格(医療法人、営利法人、社団・財団法人、社会福祉法人、地方公共団体、協同組合、NPO法人など)を取得しなければなりません。
法人設立をする際は、定款の事業目的の中に将来のビジョンや事業の対象者(要介護者、要支援者、障害者など)を明確に記載しておく必要があります。
また、法人を設立すると社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入がほぼ必須となります。
職員を雇用した場合は労働保険(労災保険・雇用保険)の加入も必要です。
指定申請の際は社会保険・労働保険の加入状況についても問われるので、社会保険労務士とも相談の上手続きを進めていきましょう。
指定申請の際に気をつけておきたいこと
設備基準の説明を読んでいて気づかれた方も多いと思いますが、事業所の開設を予定しているエリアの指定権者によって、様々なローカルルールの違いがあります。
「隣のエリアではこの条件で開設できたから」
「他の事業所はこのやり方で指定申請が通ったから」
という判断はとても危険です。
事前に綿密な情報収集を行い、申請スケジュール、申請書類、ローカルルールをしっかりチェックしましょう。
*参考法令
・介護保険法
*介護・障害福祉サービス運営LABO
・指定申請の前に「社会保険・労働保険」の手続きを