- “手続き”マニュアル
訪問看護はワンルームでも開業できる? 物件選びの基礎知識
2021/4/19
2023/11/25
訪問看護事業を立ち上げるにあたり、物件選びに悩んでいる方もおられると思います。
建物面積や間取りなどに厳しく規制が設けられている業種もありますが、果たして訪問看護事業の場合はどうでしょうか。
今回は訪問看護事業所を立ち上げるときの物件選びについて解説します。
Contents
┃訪問看護とは?
訪問看護とは、認知症高齢者や障害者・障害児の居宅に赴き看護を行うサービスです。
訪問“介護“と違うところは、注射や点滴といった医療的ケアを行えるところです。
いわゆる「床ずれ」の処置も医療行為の一種なので、訪問看護の担当となります。
業務を担当するのは保健師、看護師、准看護師、助産師といった看護の専門家。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を利用者の居宅に派遣し、リハビリテーションを行う場合もあります。
┃都道府県等の指定を受けないと開業できない(指定申請)
訪問看護事業を始めるには、開業予定地の都道府県・政令市等の指定を受けなくてはなりません。
指定を受けるための手続きを「指定申請」といいます。
指定には人員、設備、運営に関する基準(指定基準)があります。
今回は物件選びがテーマなので「設備」に関する指定基準を見ていきましょう。
┃指定申請における「設備基準」とは?
訪問看護事業を行う物件や備品に関する指定基準を「設備基準」といいます。
実際にどのような基準が設けられているのか、厚生労働省の省令を見てみましょう。
○指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準
第三章 設備に関する基準
第四条 指定訪問看護ステーションには、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室を設けるほか、指定訪問看護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。ただし、当該指定訪問看護ステーションが他の事業の事業所を兼ねる場合は、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けることで足りるものとする。
堅い文章なので一見読みづらいですが、太字の部分をご覧ください。
「必要な広さ」「必要な設備及び備品」とあるだけで、実はそこまで細かい規制ではないとわかりますね。
┃ワンルームマンションでの開業も可能?
つまり、必要な広さ・設備・備品が揃っていれば、さほど物件のタイプを選ばず開業できるといえます。
ワンルームマンションの一室を借り、中をパーテーションで区切って開業する、という形でも設備基準をクリアできる可能性はあるでしょう。
ただし気をつけておきたいのは、指定基準は地域によってローカルルールの差が強い点です。
国の想定より厳しい設備基準を設けている地域も存在します。
「ワンルームマンションで開業している訪問看護事業所もある」と聞いただけで、自分たちも同じような物件で開業できると考えるのは早計です。
開業予定地が決まったらその地域独自の指定基準を忘れずに調べてください。
*介護・障害福祉サービス運営LABO
・訪問看護事業の『指定申請』とは? (開業・立ち上げの手続き)
┃感染症対策に要注意!
訪問看護という業務の性質上、衛生設備は欠かせません。
近年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、感染症対策は今まで以上に入念に行う必要があると考えられます。
感染症対策に必要な設備・備品としては
- 独立の手洗い場
- 手指消毒設備(アルコール消毒液等)
- オートクレーブ(滅菌設備)
- 医療用廃棄物用の廃棄ボックス
などが挙げられます。
新型コロナウイルス感染症対策の面では、面談スペースに飛沫防止パネルを設置するのが望ましいでしょう。
┃消防法、建築基準法…関連法規もしっかりチェック
必要な広さや設備、備品があれば開業できると説明しましたが、それはあくまでも建築関係の法律を守れているのが前提です。
消防法や建築基準法に違反した物件で指定申請を行うことは出来ません。
気をつけたいのが1981(昭和56)年以前に建てられた建物です。
この年代の建物は古い耐震基準に基づいて造られているため、現在の耐震基準を満たしていない可能性があります。
他にもスプリンクラー、火災報知器、非常階段といった設備が備えられているかを確認してください。
消防設備の設置に補助金を出している自治体もあるので、開業予定地域のホームページなどで調べてみるとよいでしょう。
┃まとめ
訪問看護事業所の物件選びと、指定申請における「設備基準」について解説しました。
一定の規制はあるもののそこまで厳格ではなく、幅広いタイプの物件で開業できると考えられます。
開業予定地域のローカルルールもチェックしながら物件選びに臨みましょう。
*厚生労働省
・指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準
*e-Gov法令検索
・消防法