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【訪問看護事業所の常勤換算とは】指定申請の基本と人員基準について解説

2024/5/28

2024/05/28

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

訪問看護事業所は、高齢化社会において非常に重要な役割を果たしています。訪問看護は、医療や看護が必要な方々に自宅で適切なケアを提供し、生活の質を向上させるサービスです。

訪問看護事業所を開設・運営するには、市区町村等へ指定申請を行い一定の基準を満たさないといけません。その中でも、人員基準や常勤換算に関する基準は重要な要件であり、指定申請において欠かせない要素です。

今回は、訪問看護事業所の指定申請の基本的な流れと人員基準について解説します。

┃訪問看護事業所における人員基準と常勤換算とは

○人員基準と常勤換算の基礎知識

人員基準とは、訪問看護事業所(以後「訪問看護ステーション」といいます)が適切なサービスを提供するために必要な最低限の職員数や資格要件を定めたものです。これには、看護師や准看護師、理学療法士、作業療法士などの専門職が含まれます。人員基準を満たすことで、訪問看護事業所は質の高いケアを提供し、利用者の安全と満足度を確保することができます。

常勤換算とは、訪問看護ステーションで働く職員の労働時間を基に、常勤職員に換算する方法を指します。事業所内でどのように区分しているか(非常勤、パートタイム等)にかかわらず、職員の労働時間を一定の基準で計算し、常勤職員としてどのくらいの人員が配置されているかをその労働時間でとらえることになります。

○常勤換算の計算方法

常勤換算の計算方法は、各職員の労働時間を基に行われます。1日8時間、1週間40時間労働の一般的な事業所のケースで考えると、1週間の労働時間が40時間の職員を1.0として計算します。

・常勤職員(フルタイム勤務・所定労働時間すべてに働く職員)

1週間に40時間働く職員は、そのまま1.0として換算されます。

・非常勤職員

1週間の労働時間が20時間の非常勤職員は、0.5として換算されます。

20時間÷40時間=0.5

・パートタイム職員

1週間の労働時間が30時間のパートタイム職員は、0.75として換算されます。

30時間÷40時間=0.75

このように、各職員の労働時間を基に常勤換算を行い、事業所全体の労働力を算出し、人員基準を満たしているかどうかを判断します。

┃訪問看護ステーションの人員基準と必要な資格等

○訪問看護ステーションの人員基準

訪問看護ステーションの開設において必要な人員基準は、常勤換算2.5名以上です。さらに保険師、看護師、准看護師のうち1名は常勤であることが必要です。また、管理者として保険師または看護師を1名配置する必要があります。その他、理学療法士、作業療法士などの専門職を必要に応じて配置します。

○訪問看護ステーションの人員基準と必要な資格

訪問看護ステーションで必要とされる主な職種とその資格は以下の通りです。

・看護師

訪問看護の中心的な役割を担う職種で、利用者の健康状態の観察や必要なケアを提供します。看護師の資格が必要です。

・准看護師

看護師とともに訪問看護を行う職種で、看護師の指示のもとでケアを提供します。准看護師の資格が必要です。

・理学療法士

リハビリテーションを専門とする職種で、利用者の身体機能の回復を支援します。理学療法士の資格が必要です。

・作業療法士

日常生活動作の改善を支援する職種で、利用者の生活の質を向上させるためのリハビリテーションを行います。作業療法士の資格が必要です。
これらの専門職が揃うことで、訪問看護ステーションは包括的なケアを提供できる体制が整います。

○病院や診療所が開設・運営する「みなし指定」

健康保険法で指定された病院・診療所・薬局などが介護保険法においてもサービス提供をする場合は「みなし指定」を受けることができます。みなし指定を受けた訪問看護ステーションでは、人員配置基準は適用されません。ただし、医療サービスを提供できるのは看護師のみです。

○訪問看護ステーションのサテライト事業所

主たる事業所とは別に一定要件の元に設置できるのがサテライト事業所です。利用者が増えて移動が広範囲に及ぶ場合にサテライト事業所を設置することで、移動時間の短縮や効率的な訪問、緊急のオンコールへの迅速な対応が期待できます。

サテライト事業所を設置する場合には主たる事業所と合わせて看護職員(保健師、看護師、准看護師)の常勤換算の合計2.5人以上の人員配置をする必要があります。

┃人員基準以外の基準

○設備基準

訪問看護事業所を開設・運営するには、人員基準だけでなく、設備基準や運営基準も重要な要素となります。これらの基準は、訪問看護サービスの質を確保し、利用者に安全かつ効果的なケアを提供するために定められています。

・事務室

訪問看護ステーションの運営に必要な事務作業を行うためのスペースが必要です。事務室には、利用者の記録を保管するための書庫やデスク、パソコンなどが備わっていることが求められます。

・相談室

利用者やその家族との面談や相談を行うための専用の相談室が必要です。プライバシーを保護するため、個室であることが望ましいです。

・会議室

訪問看護ステーションのサービスや運営に関する会議や相談を行うための部屋を用意する必要があります。相談室との兼用も可能です。

・訪問看護事業に必要な設備や備品等

パソコンや複合機などのOA機器、事務用品、鍵付き棚(書庫、キャビネット)、洗面所衛生設備(消毒スプレー等)の設備を用意する必要があります。


○運営基準

訪問看護事業所の運営基準は、運営規程の整備や訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成、記録の整備・保管などについて定められています。

運営規程に定めなければならない項目は以下の通りです。

  • 事業の目的及び運営の方針
  • 従業者の職種、員数及び職務の内容
  • 営業日及び営業時間
  • 指定訪問看護の内容及び利用料その他の費用の額
  • 通常の事業の実施地域
  • 緊急時等における対応方法
  • 虐待の防止のための措置に関する事項
  • その他運営に関する重要事項

*出典:e-GOV法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号)」


○その他の必要な基準の概要

その他の要件としては、指定を受ける事業者が「法人格を有すること」があります。個人事業主では指定を受けることができないため法人設立を行う必要があります。

┃訪問看護ステーションが人員基準に違反した場合

開設に伴う指定申請を行う際に人員基準を満たしていなければ指定を受けることはできません。開設後に急な離職などにより人員を満たさなくなった場合には更新が受けられなくなってしまうため早急な人員補充が必要です。

人員基準に満たないことをわかっていながら意図してその事実を隠して指定を受けたり更新をしたりすると報酬の返還、指定取り消し処分等を受けることになります。

1.基準は、指定居宅サービスの事業がその目的を達成するために必要な最低限度の基準を定めたものであり、指定居宅サービス事業者は、常にその事業の運営の向上に努めなければならないこと。

2.指定居宅サービスの事業を行う者又は行おうとする者が満たすべき基準等を満たさない場合には、指定居宅サービスの指定又は更新は受けられず、また、運営開始後、基準に違反することが明らかになった場合には、①相当の期間を定めて基準を遵守するよう勧告を行い、②相当の期間内に勧告に従わなかったときは、事業者名、勧告に至った経緯、当該勧告に対する対応等を公表し、③正当な理由が無く、当該勧告に係る措置を採らなかったときは、相当の期限を定めて当該勧告に係る措置を採るよう命令することができるものであること。また、③の命令をした場合には事業者名、命令に至った経緯等を公示しなければならない。なお、③の命令に従わない場合には、当該指定を取り消すこと、又は取消しを行う前に相当の期間を定めて指定の全部若しくは一部の効力を停止すること(不適正なサービスが行われていることが判明した場合、当該サービスに関する介護報酬の請求を停止させること)ができる。ただし、次に掲げる場合には、基準に従った適正な運営ができなくなったものとして、直ちに指定を取り消すこと又は指定の全部若しくは一部の効力を停止することができるものであること。

*出典:指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について

┃まとめ

今回は、訪問看護事業所の指定申請の基本的な流れと人員基準について解説しました。いくつかの基準がある中で特に人員基準については、事業主がコントロールすることが難しい部分でもあります。

人員基準違反により訪問看護ステーションの運営が継続できなくなることがないよう人材確保、離職防止に一層力を入れていく必要があるでしょう。

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