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【介護職員等処遇改善加算とは】加算の算定要件と種類、届出方法について解説

2024/4/27

2024/04/27

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

介護事業所の主な収入源は介護保険料を原資とした介護報酬です。開設した施設の種類や提供するサービスの種類、内容によって介護報酬が定められており、職員への給与も限られた原資の中から支給することになります。

そのような事業の収入が限られた中でも人材確保・離職防止には賃金や待遇の改善は必要不可欠です。一定の算定要件を満たした介護事業所は、介護報酬の加算を受けることができるので、可能な限り加算を活用していきたいところでしょう。

今回は、介護職員の処遇改善のための加算の算定要件と種類、届出方法について解説していきます。

┃介護職員の処遇改善のための加算

○介護職員処遇改善加算

介護職員処遇改善加算は、2012(平成24)年度に創設された制度で介護職員の賃金改善を目的としてします。介護職員を対象にキャリアパス要件や職場環境等要件を満たすことで介護事業所が受ける介護報酬が加算されます。介護事業所は、加算された介護報酬を原資として職員の賃金改善を実施します。

介護職員処遇改善加算は、介護事業所の取り組み度合いに応じてⅠからⅢまでの区分が設けられており、処遇改善加算Ⅰが最も取り組み難易度が高く、加算される金額も増えます。

○介護職員等特定処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算は、2019(令和1)年10月に創設された制度で主に経験や技能のある介護職員の処遇改善を目的としていました。また、処遇改善加算ⅠからⅢを既に取得していることや介護福祉士の配置割合、職場環境等要件の複数の取り組みなどが要件として設けられており、介護職員のさらなる処遇改善や介護サービスの充実が求められる制度でした。

2024(令和6)年度からは、介護職員等特定処遇改善加算は廃止され新しい加算に統廃合されます。

○介護職員等ベースアップ等支援加算

介護職員等ベースアップ等支援加算は、2022(令和4)年10月に創設された制度で介護職員を対象にコロナ禍の臨時の賃金改善策として設けられました。介護職員等ベースアップ等支援加算はその名のとおり、ベースアップを目的としており、加算額の3分の2以上を基本給や毎月支給する手当として支給することとされました。

介護職員等特定処遇改善加算と同じく、2024(令和6)年度以降、新しい加算に統廃合されます。

○新加算(介護職員等処遇改善加算)への一本化と加算率の引き上げ

2024(令和6)年度から、これら3つの加算が一本化され「介護職員等処遇改善加算」が創設され、加算率の引き上げや配分方法の変更が行われることになりました。

令和6年度介護報酬改定による加算の一本化は次の3つの観点により実施されます。

  • ①事業者の賃金改善や申請に係る事務負担を軽減する
  • ②利用者にとって分かりやすい制度とし、利用者負担の理解を得やすくする
  • ③事業所全体として、柔軟な事業運営を可能とする
【現行3加算から新加算への要件の推移】

*出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」

┃新加算(介護職員等処遇改善加算)の算定要件

○介護職員等処遇改善加算の算定要件

新加算(介護職員等処遇改善加算)を取得するためには、キャリアパス要件、月額賃金改善要件、職場環境等要件の3つを整備する必要があります。これらは、2023年度以前の3つの加算(旧加算)の要件を組み替えたものです。

○介護職員等処遇改善加算とキャリアパス要件

キャリアパス要件はⅠからⅤまであり、介護職員等処遇改善加算を取得するためにはそれぞれの要件を満たさなければなりません。

特にキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲについては、就業規則や賃金規程など書面で整備した上で、職員へ周知する必要があります。

  • ・キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)
  • ・キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
  • ・キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)
【キャリアパス要件】

*出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」

○介護職員等処遇改善加算と月額賃金改善要件

月額賃金改善要件は、取得した加算の中から一定割合を月額の基本給や毎月支払う手当として支給することを求める要件です。これまで、取得した加算の大部分を賞与などの一時金として支払っていた介護事業所については、就業規則や賃金規程の見直しを行い、賃金体系の変更をする必要があるでしょう。

→就業規則・賃金規程の作成方法や基礎知識について知りたい方はこちら

【月額賃金改善要件】

*出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」

○介護職員等処遇改善加算と職場環境等要件

職場環境等要件はこれまでも加算を取得するための要件としてありましたが、2024(令和6)年度以降、多くの介護事業所が取り組みやすくするために項目の細分化や見直しが行われます。

【職場環境等要件】

*出典:厚生労働省「事務担当者向け・詳細説明資料」

┃介護職員等処遇改善加算への移行措置

2023(令和5)年度以前の旧加算から2024(令和6)年度以降の新加算に移行することに伴い、要件の統廃合が行われるとともに加算率の引き上げが実施されます。旧加算を取得している介護事業所について2024年度は、基本的には経過措置により必ず加算率が上がる仕組みになっています。

2024(令和6)年度以降の新加算への移行により新たな要件への対応が必要になることから、経過措置(激変緩和措置)により要件を満たしていなくても2024年度中の対応を誓約することで加算率の引き上げを受けることも可能です。

┃介護職員等処遇改善加算の届出方法

処遇改善計画書の提出期限は原則4月15日まで、ただし6月15日までの変更届の提出も可、となっています。また、体制届出(体制等状況一覧表)の提出期限は以下の通りです。新たに介護事業所を開設した場合など年度の途中からの申請も可能です。

介護職員等処遇改善加算の届出方法について、詳しくは各事業所を管轄する都道府県や市区町村へ確認するようにしてください。

→処遇改善計画書や実績報告等の様式の取得はこちらから

┃まとめ

今回は、介護職員の処遇改善のための加算の算定要件と種類、届出方法について解説しました。

介護職員等処遇改善加算を受給するハードルは決して低くはありませんが、加算を受給できる労働環境を整えていくことは、介護事業所として生き残るためにも重要です。

事業継続のためにも職員の処遇改善と人材確保・離職防止のためにも労働環境改善と進めていきましょう。

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