• “手続き”マニュアル

新型コロナワクチン 副反応で職員が休業した場合に使える制度

2021/5/24

2023/11/25

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

新型コロナワクチンの接種が開始されました。

これで感染者数も減少するだろうと期待の声がある一方で、副反応による体調悪化を心配している人もいるようです。

万が一、ワクチンの接種後に副反応が出てしまい、職員が仕事を休まなくてはならなくなった場合、事業所としては何ができるでしょうか。

今回は副反応が出た場合に申請可能な制度や、新型コロナワクチン接種に関連する特別休暇制度の導入について解説します。

┃医療従事者等に副反応が出た場合は労災給付の対象に

前提として、副反応のリスクはどんなワクチンにもあるものです。

ワクチン接種は通常、個人の自由意思で行うものなので、「業務」の一環とは認められないというのが基本的な考え方でした。

そのため、今まではワクチンの接種後に副反応が出たとしても、労災給付の対象にはならなかったのです。

しかしながら、新型コロナウイルスワクチンによる副反応については、例外的に労災給付が認められることになっています。

現時点で労災給付の対象となるのは、

  • 医療従事者等
  • 高齢者施設等の従事者等

いずれかに該当する労働者です。

これらは業務の特性上、新型コロナウイルスの感染リスクが極めて高く、安全に働くにはワクチンの接種が欠かせません。

厚生労働省は、医療従事者等の新型コロナウイルス接種を業務行為として扱い、労災給付の対象とすることを明らかにしています。

┃介護福祉サービス関係者は副反応による労災給付の対象になる?

「医療従事者等」「高齢者施設等の従事者等」には、具体的にどのような人が該当するのでしょうか。

訪問看護ステーションや介護施設で働く職員は労災給付が受けられるのか、厚生労働省の見解を見ていきましょう。

○訪問看護ステーションの職員は「医療従事者」に該当しうる

厚生労働省は「医療従事者」の範囲を以下のように示しています。

・病院・診療所・薬局・訪問看護ステーションに従事し、新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者に頻繁に接する業務を行う職員

・自治体等の新型コロナウイルス感染症対策業務で、新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者に頻繁に接する業務を行う職員

・新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者を搬送する救急隊員等・海上保安庁職員・自衛隊職員

*厚生労働省「医療従事者等への接種について」より引用

太字部分に示した通り、業務内容によっては訪問看護ステーションの職員も「医療従事者」に該当し、労災給付が受けられると考えられます。

○施設型の介護職員は副反応による労災給付の可能性あり

介護施設などの職員は労災給付が受けられるのでしょうか。

厚生労働省は、介護関係者に関してはこのような見解を示しています。

※ 介護医療院、介護老人保健施設の従事者についても、医療機関と同一敷地内にある場合には、医療機関の判断により対象とできる。

なお、介護療養型医療施設の従事者は、病院・診療所と同様に医療従事者等の範囲に含まれる。

*厚生労働省「医療従事者等の範囲について(2021年2月17日時点)」より引用

 

高齢者施設等の従事者については、介護保険施設等、高齢者及び基礎疾患を有する者が集団で居住する施設 で従事する者等を想定しています。

*厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」Q7-2

介護関係の職員に関しては、今のところ施設型の介護施設で働く職員に限って労災給付を行う方針のようです。

ワクチン接種率が上がるにつれて方針転換も考えられますので、今後の動向をチェックしておきたいところです。

┃医療従事者以外の副反応には「傷病手当金」の申請が可能、だが…

医療従事者に該当しない職員に副反応が出て、仕事を休んだ場合はどうなるでしょうか。

この場合は業務外で病気やケガをしたときと同様に、「傷病手当金」の申請が可能です。

ただし、いくつか条件があります。

  • 副反応を起こした職員が社会保険に加入していること
  • 副反応による休業が3日間連続し(待期期間)、休業日数がトータルで4日以上あること
    *待期期間中は支給対象とならない

一部の重篤なケースを除き、副反応は数日中に回復するケースが多い様子です。

待期期間中に回復し申請に至らないか、申請を行ったとしても支給額がごく低額になる可能性があります。

手続きの手間もありますので、傷病手当金を利用するのはあまり現実的ではないかもしれません。

┃ワクチン休暇は与えるべき? 厚生労働省の見解では…

新型コロナウイルスワクチンの接種に関し、社員に特別休暇を与える企業が現れています。

ワクチン接種の時間を労働時間とみなし、賃金の減額を行わない企業もあるようです。

はたして職員に対してワクチン休暇を与える義務はあるのでしょうか。

厚生労働省は次のように述べています。

職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。

*厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」4-問20

上記の通り、特別休暇制度等の導入は「望ましい」レベルにとどまり、導入の義務までは言及していません。

しばらくは新型コロナワクチンの接種に関しては、職員の希望に応じて年次有給休暇を使ってもらう形で差し支えないでしょう。

仮に特別休暇制度を導入する場合、常時10人以上の職員を使用している事業所では就業規則の変更手続きも必要です。

焦って自力で就業規則を変更しようとすると、他の規定と齟齬が生じてしまい、トラブルが起きるケースがほとんどです。

特別休暇制度の導入については、就業規則に強い社会保険労務士に相談をお勧めします。

*厚生労働省
・医療従事者等への接種について
・医療従事者等の範囲について
・新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
・新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査

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