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【介護事業所の36協定作成方法とは】協定書・協定届の作成方法と記入例について解説

2024/3/29

2024/03/29

この記事の監修

社会保険労務士法人GOAL
代表 社会保険労務士

久保田 慎平(くぼたしんぺい)

1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。その後、2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川の中小企業を中心に採用定着支援やテレワーク導入支援、労務トラブル防止、社内研修による人材育成に力を入れている。就業規則の実績200件以上、商工会議所等のセミナー講師実績多数。

介護事業所が職員に時間外労働や休日労働を命じるときには、事前に36協定を作成・締結し、労働基準監督署へ届けなければなりません。

介護事業所が直面する多くの課題の中で、職員の労働時間管理は特に重要な位置を占めており、36協定の適切な理解と締結・作成、それに伴う労働時間の管理等は、法令順守だけでなく、人材確保や採用にも影響を及ぼします。

今回は、介護事業所における36協定の作り方、協定書・協定届の違い、作成方法と記入例について解説していきます。

┃36協定とは

○36協定の基礎知識

36協定とは、正式には「時間外労働・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に基づき行われる届け出のことです。事業主はこの36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ることにより、法定労働時間を超える労働を命じることが可能となります。

介護事業はその業務の特性上、緊急時の対応や人員不足、夜間対応など時間外労働が発生しやすい労働環境です。36協定の適切な運用は、法令順守の観点の他、職員の健康確保や人員確保、長時間労働による離職防止の面でも重要な役割を果たします。

○36協定を作成する目的

36協定を作成し、締結・届け出をするということは、事業所の労働時間管理を見直すことに直結します。介護事業所の管理者や職員にとって労働時間管理は、労働環境を整える上で避けて通れない重要な手続きです。そのようなことからも36協定の適切な理解は介護事業所にとって重要であるといえます。

○36協定届と36協定書のちがい

本来、協定書と協定届はちがうものです。初めに協定書を作成し、労使間で締結をした後、労働基準監督署へ提出するためにその内容を協定届に転記して届け出ます。従来は、36協定届に労使双方の押印がある場合には、協定届が協定書を兼ねることができたので別途、協定書を作成する必要がありませんでした。しかし、協定届への押印が廃止されたことにより、協定書の作成が別途必要になりましたので注意してください。

なお、押印省略後も引き続き協定届に労使双方で記名押印をしていれば従来と同じく協定届が協定書を兼ねることも可能です。

→36協定の基本的なことについて知りたい方はこちら

┃介護事業所の36協定の作成方法

○職員の中から労働者代表を選出する

36協定やその他の労使協定、就業規則の届け出等を行う場合にはまず、職員の中から労働者代表を選出します。労働者代表は、一般職員の中から「挙手、立候補、職員内の話し合い」など民主的な方法で事業主が関与することなく選出される必要があります。

○36協定の内容の検討と協定書作成

事業主が時間外労働・休日労働を命じることとなる具体的な事由、対象となる職員の範囲、人数、1日・1箇月・1年における時間外労働の上限時間を決めていきます。この時間外労働の上限設定は各部署や個々の職員の特性、業務の実態に合わせて必要最低限の範囲内で設定することが望ましいといえます。

ただし、協定届で設定した限度時間を超過すると法令違反となってしまいますので、必要最小限で収めつつ超過しない時間数を設定することが重要です。

原則の限度時間である「月45時間・年360時間」を超えることが見込まれる場合には、協定届に特別条項を付けて届け出を行います。特別条項を付けることで限度時間を超えることが認められることとなりますが、限度時間を超えて労働させることができるのは、「臨時的な特別の事情がある場合」に限られます。

恒常的な人員不足や季節的に必ず発生する業務では、限度時間を超えることはできないので注意が必要です。

○協定の締結と労働基準監督署への届け出

協定書を作成して労使双方でその内容に合意をしたら、お互いに記名押印をして協定を締結します。その後、協定書の内容を協定届に転記して労働基準監督署へ提出します。

労働基準監督署への提出方法は、窓口持参の他、郵送、電子申請でも可能です。

○36協定の有効期限と定期的な見直し

36協定の有効期限は1年間とすることが望ましいとされています。毎年、更新時期を決めて話し合いと更新、届け出をするようにしましょう。

┃協定届の記入例と各項目の解説

○36協定届作成時の検討事項

36協定を作成するときは、会社と社員代表者との話し合いの上で次の事項について取り決めを行います。

・労働時間を延長し、又は休日に労働させる場合のその理由

「利用者から緊急の要請があったとき、利用者の急変に対応するとき、急な人員不足」とった理由が考えられます。

・労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる労働者の範囲

「介護職員、事務職員」など具体的に記載するようにします。

・協定の有効期間

協定の有効期間は原則1年間です。

・1年の起算日

1年の起算日は、賃金計算期間や勤怠管理の締切日、事業年度に合わせるのが一般です。賃金計算期間に合わせて設定することで時間外労働の集計もしやすくなります。

・対象期間における労働時間を延長して労働させることができる時間

1日・1箇月・1年における時間外労働の上限時間を決めます。

・対象期間における、労働させることができる休日

ここでいう休日とは、週に一度の法定休日のことをいいます。時間外労働をさせることがあるときの理由と同じように検討します。

○36協定届に特別条項を付けるときの検討事項

臨時的な特別の事情があって労使が合意し、原則の限度時間を超えて時間外労働を命じる必要があるときは、次の事項についても検討し、36協定届と合わせて特別条項を付けて届け出を行います。

臨時的な特別の事情があって労使が合意し、特別条項を付けて届け出を行う場合でも残業時間は、できる限り限度時間(月45時間・年360時間)に近いように、そして「特別な事情」についても可能な限り具体的に示す必要があります。

→特別条項の作り方についてさらに詳しくはこちら

┃まとめ

今回は、介護事業所における36協定の作り方、協定書・協定届の違い、作成方法と記入例について解説しました。

時間外労働や休日労働が発生しないのが一番ではありますが、介護事業の性質上、それは難しい課題でもあります。

時間外労働や休日労働を命じる場合には、36協定の作成と届け出を確実に行うようにしてください。

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