【平均賃金の計算方法とは】計算方法と活用する場面

平均賃金の計算は、社員を休業させたときの休業手当の計算や減給制裁を与える場合の制限額の計算、解雇予告手当の計算などの際に必要になります。

新型コロナウイルス感染症の影響により社員を休業させるケースでも平均賃金の計算が必要になります。

ここでは、正しい平均賃金の計算についてお伝えしていきます。

目次

┃平均賃金とは

一般的に考える給与の相場というような意味合いとはことなりますので注意が必要です。

労働基準法で定められている平均賃金とは、労働者が休暇を取得したときの賃金の補償額や懲戒処分による制裁を与えたりするときの制限額を計算するときの基準であるといえます。

労働基準法で「平均賃金を支払わなければならない」と規定されているような場面で、平均賃金に満たない金額しか支払っていない賃金の未払いが発生していることになるので注意が必要です。

┃平均賃金の計算が必要な場面

平均賃金の計算が必要になるのは、次のような場面です。

○休業手当の計算(労働基準法第26条)

使用者(会社)の都合やそれに準じるような理由で労働者を休業させる場合には、1日につき平均賃金の6割以上の賃金を支払う必要があります。

コロナ禍においては、濃厚接触者や感染が疑われる者に対して、在宅勤務などの代替業務を与えたり代替業務を検討せずに休業させたりした場合、使用者の都合で休ませたものとして扱われるケースもあります。

法律上、一般的に考える「使用者の都合(責任)による休業」よりも広く考えられています。

○解雇予告手当の計算(労働基準法第20条)

会社は、労働者を解雇するとき原則として30日前までに予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。このときに支払う平均賃金を解雇予告手当と言います。

解雇予告は通常、30日前までに行う必要がありますが、解雇予告をした時点で解雇日まで30日を切っていた場合には、30日に足りない日数分の平均賃金を支払うことで日数を短縮することが認められています。

○年次有給休暇を取得したときの賃金(労働基準法第39条)

会社は、労働者が年次有給休暇を取得した場合、平均賃金または通常の賃金、標準報酬月額の30分の1相当額のいずれかを支払う必要があります。

年次有給休暇を取得したとき、どの方法で賃金を支払うかは、就業規則で定めるのが原則です。

○災害補償(労働基準法第76条から82条、労災保険法)

労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合に使用者が行う災害補償や労災保険給付の金額を計算するときも平均賃金が用いられます。

○懲戒処分による減給制裁(労働基準法第91条)

懲戒処分による減給制裁を行う場合の制限額は、平均賃金が基準になります。

減給制裁の上限は「1回につき平均賃金の半額」、「賃金計算期間につき賃金総額の10分の1まで」と定められています。

○じん肺管理区分による作業の転換手当(じん肺法第22条)

じん肺管理区分により、地方労働局長が作業転換の勧奨または指示を行う際の転換手当は、 平均賃金の30日分または60日分とされています。

┃平均賃金の計算方法とは

○平均賃金の計算に含むものと除くもの

平均賃金の計算は、支払われる賃金のすべてが含まれるのが原則です。みなし残業手当を支給しているようなケースではこれも含まれます。

また、昇給が遅れた場合などの本来支払われるべきもので、支払いが遅れていたものも含めて計算を行います。

なお、次の賃金については、平均賃金の計算からは除外されます。

  • ・臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金等)
  • ・3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(半年に1度の賞与等)
  • ・労働協約で定められていない現物給与

○平均賃金の計算(原則)

算出する事由が発生した日の直近の賃金締め日以前3箇月間の賃金総額÷その間の暦日数

算定する事由が発生した日とは、次の日をさします。

  • ・解雇予告手当の場合は、労働者に解雇の通告をした日
  • ・休業手当・年次有給休暇の賃金の場合は、休業日・年休日
  • (2日以上の期間にわたる場合は、その最初の日)
  • ・災害補償の場合は、事故の起きた日または、診断によって疾病が確定した日
  • ・減給の制裁の場合は、制裁の意思表示が相手方に到達した日

○平均賃金の計算(例外と最低補償)

算出する事由が発生した日の直近の賃金締め日以前3箇月間の賃金総額÷
その間の総労働日数×60%

賃金が時間額や日額、出来高給で決められており労働日数が少ない場合など、「暦日」を用いて計算を行うと平均賃金が少なくなってしまうようなケースでは最低補償給が定められています。

┃まとめ

今回は、正しい平均賃金の計算についてお伝えしました。

平均賃金の計算する場面というのは、休業だったり解雇だったりと会社と社員にとって重要な場面が多いです。

重要な場面だからこそ、計算方法をまちがえてしまうと労務トラブルに発展し、信頼関係に傷がつく恐れもあるので注意が必要です。

※2022年2月5日内容更新しました

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