【雇用保険とは】失業保険の基礎知識と役員就任時やその親族への対応についてわかりやすく解説

雇用保険とは、労働者が失業や育児、介護などで働き続けることが難しくなった場合に給付を行い生活の補償をしたり、労働者の雇用機会が増えるように教育訓練を実施したり、または、そのような取り組みをする会社(事業主)を援助するための制度です。

会社は、雇用保険被保険者の加入資格を満たす社員が一人でもいれば雇用保険の適用事業所となり手続きが必要になります。

今回は、雇用保険制度とその中でも代表的な給付制度である失業保険の基礎知識、質問や相談の多い役員就任時やその親族への対応について解説します。

目次

┃雇用保険とは

○雇用保険とは

雇用保険とは、労働者の雇用(労働契約)の継続や労働者が就職しやすくなるための能力開発等を目的とする強制加入の保険制度です。

代表的なものとしては、失業等給付の基本手当(いわゆる“失業保険”)や育児休業給付があります。失業保険は、労働者が退職した後、次の就職先を見つけるまでの生活補償として保険給付が行われます。育児休業給付では、基本的に育児休業中には会社から賃金が支払われないためその間の生活補償として保険給付が行われます。

また、会社としても育児や介護で一時的に職場を離れる社員に対して雇用保険から給付を受けることで、賃金を負担することなく社員の生活を守りながら新たな採用をせずに復帰を待つこともできます。

さらには、各種の雇用・労働条件関連の助成金の原資にもなっています。

*出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」

○雇用保険の加入条件

雇用保険は、加入対象となる社員が一人でもいれば事業所として加入手続きが必要です。事業所が雇用保険の加入対象になることを“雇用保険の適用”といい、そのような事業所のことを雇用保険の適用事業所といいます。

○雇用保険の加入対象者

雇用保険に加入した社員のことを雇用保険被保険者といい、その被保険者期間の長さなどによって様々な補償を受けることができます、なお、副業兼業しているような人でも雇用保険被保険者になるのは原則として一つの事務所だけです。ただし、65歳以上の人については、例外として雇用保険マルチジョブホルダー制度 があります。

原則的な雇用保険被保険者の加入条件は次の通りです。

  • ・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
  • ・1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること

1箇月以内の短期労働契約である場合等の例外が無い限り、基本的には雇用保険に加入させる義務があると考えられます。実態としては無期労働契約なのに雇用義務を免れるために1箇月契約にしたり、「試用期間中は雇用保険に加入させない」としたりすることは違法行為となる場合があるので注意が必要です。ただし、事業主や役員、事業主と同居している親族、昼間の学校に通う学生は、原則適用除外となります。

┃雇用保険の失業保険とは

○雇用保険の失業保険(基本手当・失業手当)とは

雇用保険の保険給付のうち代表的なものは「求職者給付の中の基本手当」、いわゆる失業保険や失業手当と呼ばれる給付です。失業保険は、雇用保険被保険者が離職したときに給付を行うことで失業中の生活を補償し、新しい仕事を探し、1日も早く再就職することを支援するためのものです。

○失業保険はいくらもらえるか

失業保険の1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。基本手当日額は、原則として離職した日の直前の6箇月に毎月きまって支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)です。こうして導き出された基本手当日額の金額に所定給付日数を乗じた金額がその人の失業保険の金額です。

所定給付日数は、失業した人が失業保険の支給を受けることができる日数のことです。所定給付日数は、離職の日における年齢や雇用保険の被保険者であった期間、離職の理由などによって決定されることになっており、その日数は90日~360日の間です。

*出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

┃雇用保険の役員に対する取り扱い

○無報酬の役員は失業保険を受給できるか

会社役員に就任した場合でも、法人設立後間もなく、会社としての報酬がないと無報酬(役員報酬ゼロ円)にするケースも珍しくありません。雇用される社員に対しては、働いた時間に応じて賃金を支払う必要がありますが、役員については最低賃金等の制限がないのでそのようなことも可能です。

そこで問題になるのが、会社を退職して法人の役員に就任したがまだ役員報酬を受け取っていない場合には、失業保険の給付を受けることはできるのか、ということです。失業保険の支給を受けるための要件は、「失業している状況にあり」「求職活動をしている」ことが必要です。

○役員就任時の雇用保険の取り扱い

会社役員に就任したものの、事業運営に関わっておらず名前を貸しているようなケースで役員報酬を受け取っていない状態であれば、失業保険の給付を受けられる可能性があります。失業保険から給付を受けたいと考える場合には、役員に就任している法人の代表者の名前で次のようなことを証明してもらいハローワークへ申し立てを行います。

  • ・役員報酬が支払われていないこと
  • ・求職活動を行うことについての同意
  • ・他社へ就職する可能性があることへの同意

このような申し立てを行った上で最終的な判断はハローワークが行います。このようなケースから考えると法人の代表者の場合は、例え役員報酬が0円だったとしても失業保険の給付対象にはならないでしょう。

ただし、離職後、求職活動をしながら起業準備をしているような場合には、失業保険の支給を受けられる可能性があります。また、失業保険の支給を受ける資格がある人が起業する場合、求職給付の中の就職促進給付(再就職手当) を受給できる可能性があります。

*出典:ハローワークインターネットサービス「再就職手当のご案内」

○役員の親族は雇用保険に加入できるか

事業主と同居している親族は、原則として雇用保険に加入できません。ただし、例外として、他の一般社員と同じように指揮命令が行われ、勤怠管理がされており、賃金が支払われているような場合は、雇用保険被保険者となることができる場合があります。

手続きをするときに就業規則や賃金台帳、出勤簿等、雇用契約の実態が確認できる書類の提出を求められることがあるので、確実に揃えておく必要があります。

┃まとめ

今回は、雇用保険制度とその中でも代表的な給付制度である失業保険の基礎知識、質問や相談の多い役員就任時やその親族への対応について解説しました。

例外的な取り扱いに関しては、行政機関や顧問社労士ともよく相談して手続きを進めるようにしましょう。

※2023年6月19日、内容更新しました。

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