法人の役員でも労働者と役員を兼務して、雇用保険に加入することができる場合があります。
役員と労働者としての身分を両方同時に有する人のことを使用人兼務役員(単に「兼務役員」いうことも)といいます。
使用人兼務役員として雇用保険に加入するための手続き等について解説します。
┃使用人兼務役員として雇用保険に加入するための手続き
使用人兼務役員として雇用保険に加入するためには、【兼務役員雇用実態証明書】をハローワークへ提出します。
雇用保険の資格取得と同時に手続きをする場合には、雇用保険被保険者資格取得届の提出も合わせて行います。
通常、役員であれば出勤簿等で勤怠管理を実施することはありません。
しかし、使用人兼務役員として雇用保険に加入する場合は、勤怠管理を実施して出勤簿を作成する必要があります。
ハローワークへ提出する書類は、
○雇用保険被保険者資格取得届
○兼務役員雇用実態証明書
これらに加えて添付書類として、「出勤簿」「賃金台帳」「雇用契約書」等、労働者としての地位があることがわかる書類が必要です。
┃役員報酬と給与
使用人兼務役員として雇用保険に加入するためには、役員報酬と給与の支払い方法にもルールがあります。
「役員報酬」と「労働者としての給与(賃金)」が明確に分かれており、さらに「労働者としての給与(賃金)」の金額の方が高い必要があります。
┃労働保険と社会保険の取り扱い
○労災保険
労働者として職務に従事していた部分に関してのみ労災保険が適用されます。
保険料に関しては、労働者としての賃金の金額に応じて計算します。
○雇用保険
保険料に関しては、労働者としての賃金の金額に応じて計算します。
離職票の作成に関しても労働者としての賃金のみを記載します。
なお、「役員報酬」が「労働者としての給与(賃金)」を上回ることになったとき、被保険者資格を喪失します。
○社会保険
社会保険については、「役員」「労働者」の区別はありません。
本来、役員報酬は事業年度の途中で変動させることはできませんが使用人兼務役員とすることで、給与部分については昇給降給ができる等の利点があります。
なお、使用人兼務役員の手続きは、管轄のハローワークによって運用が異なる場合もあるので手続きを実施する際には、ハローワークへ確認してください。
また、税理上の手続きについては、顧問税理士へご相談ください。