個人事業主でも社会保険に加入できる?┃法律の抜け道

「個人事業主でも社会保険に加入できる」「社会保険に加入して国民健康保険料が削減できる」そんな触れ込みの保険料削減ビジネスがあります。

適法なのか、違法なのか、仕組みはどうなっているのか、社会保険の専門家の視点で解説します。

┃社会保険料削減ビジネス

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の削減ビジネスと一口にいっても種類は二種類あります。

それは、「事業主が自社の従業員の社会保険料を削減するためのコスト削減ビジネス」「個人事業主やフリーランスの国民健康保険料(税)を削減する保険料削減ビジネス」です。

共通して言えるのは、どちらもほぼすべてのケースが脱法行為であるという点です。

□年金事務所にも確認済み
□違法性はありません
等と記載してあることがありますが、【適法】なのではなく【脱法】であることがほとんどです。

脱法行為と規制は、イタチごっこのようなものなので、将来的に規制の対象となると考えた方が良いでしょう。

┃「個人事業主でも社会保険に加入できる」?

仕組みとしては、次のようなケースが考えられます。

①社会保険料に加入するための法人設立
社会保険料削減(国民健康保険料)ビジネスを行う会社が利用者を社会保険に加入させるための法人を設立し、社会保険に加入します。

②個人事業主・フリーランスが利用者登録
①で設立された法人(仮に「社会保険料削減会社」とします)に個人事業主等が利用者として登録をして「入社」したことにします。

この時点でその個人事業主等は、社会保険料削減会社の社員として社会保険に加入します。

③社会保険料削減会社の社員としての給与と勤務実態が必要
社員として給与が発生し、勤務実態がないと社会保険には入ることができません。

ですから、社会保険料削減会社は、個人事業主等に簡単な作業を与え、個人事業主等はその作業をやったことにします。

その間、社会保険料削減会社に出勤したことにします。

④国民健康保険料削減の仕組み
国民健康保険料を削減する仕組みは簡単です。

国民健康保険料よりも保険料が低くなるように社会保険料の計算の元になる給与を設定すればいいのです。

⑤利用の支払い
個人事業主等は、下がった保険の○%を社会保険料削減会社に毎月支払う、ということになるでしょう。

┃この仕組みの問題点

この社会保険料削減ビジネスは、明らかに脱法行為であると言えます。

社会保険料削減会社で社会保険の被保険者資格を取得したとしても、実態としては、その会社の社員になったわけではありません。

国民健康保険料を削減する目的で「社員になったことにした」「勤務したことにした」だけでは、本来の社会保険の加入者資格を得られません。

一般的に考えて通常の判断ができる人であれば、ここまでお伝えしたことが「脱法行為」「黒に近いグレー」であることがわかるでしょう。

┃自分が良ければそれでいい、という仕組み

こうしたサービスを提供している事業者自身も利用者が今後、違法性を問われたり、保険料を遡って徴収されたりしても責任をとってくれるわけではありません。

利用している個人事業主等本人も「自分の保険料が下がって目の前のお金が手に入ればよい」という考えなのでしょう。

所得に応じた適切な保険料の徴収・納付が行われないと社会全体の社会保険料率の上昇につながり、一人一人の将来の給付の減少につながっていきます。

こうした社会保険料削減ビジネスの存在を許し、最悪の場合利用してしまうことが、長い目で見れば国の経済に悪影響を及ぼすことにつながっていくものと考えられます。

そのような事情をすべて加味した上で利用する、ということであればあとは自己責任ということになります。

(担当:久保田慎平)