【リファーラル採用とは】制度導入と運用時の注意点について解説

リファーラル採用とは、社員が自分の知人や友人を会社に推薦する制度で、近年、多くの企業で導入が進んでいます。

この制度は、採用活動における効率性を高めるだけでなく、企業文化に適した人材を見つけるための有効な手段とされています。しかし、リファーラル採用を成功させるためには、単に制度を導入するだけでは不十分です。適切な準備や運用が欠かせません。

本記事では、リファーラル採用の基本的な概念から制度の導入方法、運用時の注意点に至るまで、専門的な視点で解説します。特に、中小企業の経営者の皆様に向けて、リファーラル採用の成功に向けた具体的なアドバイスと実践的なポイントを提供します。これにより、効率的な人材確保とより良い企業環境の構築を目指しましょう。

今回は、リファーラル採用制度導入時と運用時の注意点、うまく運用していくためのポイントについて解説していきます。

目次

┃リファーラル採用の概要

○リファーラル採用とは

リファーラル採用とは、企業の現社員が自身の知人や友人を自社に推薦する採用手法を指します。これは、求人広告や人材紹介サービスを通じての採用とは異なり、社員のネットワークを活用して候補者を見つける方法です。リファーラル採用の主な目的は、信頼性の高い人材を効率的に確保することです。

この手法には多くのメリットがあります。まず、社員が推薦する候補者は、企業の文化や業務に対して一定の理解を持っている可能性が高く、入社後のミスマッチを減らすことができます。加えて、推薦者が知人であるため、候補者のパフォーマンスや適性について事前にある程度の情報を得ることができ、採用のリスクを低減することが可能です。

一方、リファーラル採用にはいくつかのデメリットも存在します。推薦された候補者が必ずしも最適な人材であるとは限らず、社員間での推薦が偏るリスクがあります。また、推薦者と候補者の関係性が強すぎる場合、客観性が損なわれる可能性もあります。このようなデメリットを回避するためには、制度の設計や運用において十分な配慮が必要です。

○リファーラル採用の目的

リファーラル採用の目的は、主に以下の点に集約されます。まず、企業が求めるスキルや経験を持つ候補者を効率的に発掘することが可能です。リファーラル採用では、社員が自分のネットワークを通じて候補者を推薦するため、通常の求人活動よりも迅速に適切な人材を見つけることができます。このプロセスは、特に急成長している企業やニッチなスキルが必要なポジションにおいて有効です。

次に、リファーラル採用は企業文化にマッチした人材を集めるのに適しています。社員自身が推薦することで、企業の価値観や文化に合致する候補者が多くなり、入社後の適応がスムーズになることが期待されます。このような候補者は、企業の文化に自然に溶け込み、より早く業務に貢献する可能性が高いです。

さらに、リファーラル採用は社員のエンゲージメントを高める効果もあります。推薦した社員が自分のネットワークから有能な人材を引き入れることにより、会社に対する愛着や関与が強まります。このプロセスを通じて、社員は自社の成功に対する責任感を感じることができ、全体的なモチベーションの向上につながります。

┃リファーラル採用の制度導入

○制度導入の準備

リファーラル採用制度を導入する際は、まず自社の現状とニーズを把握することが重要です。自社の採用プロセスにおける問題点や課題を明確にし、リファーラル採用がそれらの問題をどのように解決できるかを検討します。例えば、採用にかかる時間が長い、採用コストが高い、または社内文化に合わない人材が多いといった問題がある場合、リファーラル採用が有効な解決策となるかもしれません。

次に、リファーラル採用制度を効果的に導入するためには、社内体制の整備が必要です。具体的には、社員にリファーラル採用の目的やプロセスについて十分に説明し、理解してもらうための教育を実施します。また、推薦を行う際の手続きや、推薦後のフォローアップ方法についても明確にし、社員が安心して制度を活用できる環境を整えることが大切です。

さらに、リファーラル採用の制度を導入するにあたっては、ITシステムの整備も考慮する必要があります。例えば、推薦者と候補者の情報を管理するための専用システムや、推薦状況をトラッキングするためのツールを導入することで、制度の運用がスムーズになります。これにより、採用プロセスの透明性が確保され、社員からの信頼も得やすくなります。

○制度の設計

リファーラル採用制度を設計する際は、以下のポイントに留意することが重要です。まず、推薦者に対する報酬やインセンティブの設計です。報酬制度は、推薦の促進を図るために非常に重要です。成功報酬型の制度やポイント制、または推薦による特別な手当を設けることで、社員の参加意欲を高めることができます。報酬の金額や形態は、企業の予算や方針に応じて柔軟に設計することができます。

次に、候補者の選定基準を明確にすることが必要です。リファーラル採用においては、推薦者が推薦する候補者のスキルや経験が企業の求める条件に合致しているかどうかが重要です。具体的には、ポジションごとの必要なスキルセットや経験年数、文化的フィット感などを基準として設定します。これにより、推薦された候補者が企業のニーズに適合するかどうかを効果的に評価することができます。

さらに、推薦プロセスの透明性を確保するための仕組みも考慮する必要があります。推薦者の手続きや選考基準、結果のフィードバックなどを明確にし、社員が推薦する際に不安を感じないようにします。このようなプロセスを設けることで、制度の信頼性が高まり、より多くの社員が積極的にリファーラル活動を行うようになります。

┃リファーラル採用の運用時の注意点

○効果的な運用のためのポイント

リファーラル採用を効果的に運用するためには、社員への周知と教育が不可欠です。リファーラル採用の目的や運用方法、報酬制度について明確に説明し、社員が制度を理解し、積極的に活用できるようにします。説明会や研修を実施し、制度の目的やメリットをしっかりと伝えることが重要です。

また、リファーラルの促進方法としては、社員のモチベーションを高めるためのイベントやキャンペーンを実施することが有効です。例えば、推薦活動に対して特別な報酬や表彰を行うことで、社員の参加意欲を高めることができます。定期的に成功事例を紹介することで、他の社員にもリファーラル活動の効果を実感させることができ、制度の利用促進につながります。

○運用時のリスクと対策

リファーラル採用には、推薦者と候補者の関係性によるリスクが存在します。例えば、推薦者が個人的な感情で候補者を推薦する場合、客観的な評価が難しくなり、採用の公平性が損なわれる可能性があります。このようなリスクを回避するためには、リファーラル採用のプロセスを透明化し、客観的な評価基準を設けることが必要です。例えば、推薦者と候補者の関係性を記録し、評価基準に基づいて選考を行うことで、公平性を保つことができます。

また、不正利用の防止策としては、リファーラル採用制度の運用には厳格なルールと監視体制を整えることが重要です。例えば、推薦活動の記録を適切に管理し、報酬の支払いについても詳細なチェックを行うことが必要です。これにより、制度の悪用や不正行為を防ぐことができます。さらに、定期的な監査や内部レビューを実施することで、制度の運用状況を把握し、問題が発生する前に対策を講じることが可能です。

また、リファーラル採用の実施に際しては、倫理的な問題にも注意が必要です。推薦者と候補者の関係性が不適切であったり、推薦が賄賂や圧力によって行われる場合、企業の信頼性が損なわれる恐れがあります。このため、社員に対してリファーラル採用の倫理的な側面についても教育を行い、制度の公正性を確保することが重要です。

○効果測定と改善

リファーラル採用の効果を測定するためには、採用後の社員のパフォーマンスや定着率を評価することが不可欠です。具体的には、リファーラル採用で入社した社員の業務成果や社内適応状況を定期的にチェックし、データを収集します。これにより、リファーラル採用が実際に効果を発揮しているかどうかを把握することができます。

また、リファーラル採用の効果測定には、採用後の社員のキャリアパスや成長の追跡も含まれます。例えば、リファーラル採用で入社した社員がどのようにキャリアを積んでいるか、業務上の貢献度はどの程度かを評価することで、リファーラル採用の長期的な効果を測定することができます。

集めたデータを基に、制度の改善点を見つけ、必要に応じて制度の見直しを行います。例えば、報酬制度や推薦プロセスの改善点が見つかった場合は、それに応じた修正を行うことで、より効果的なリファーラル採用制度を構築することができます。また、社員からのフィードバックを取り入れることも重要で、実際に制度を利用した社員の意見を反映させることで、制度の使い勝手や効果を高めることができます。

○職業安定法と紹介手当の問題

リファーラル採用を導入する会社の多くは、紹介をしてくれた社員へのインセンティブとして「紹介手当制度(報奨金)」を設けています。社員を一人紹介すると「○万円」というものです。しかし、このリファーラル採用は、運用を間違えると職業安定法に違反する可能性があるので注意が必要です。

職業安定法では「労働者の募集を行う者は、第三者に対してその募集に際して報酬を与えてはならない」としています。この規定の例外として定められているのは次のようなケースです。

・有料職業紹介事業の許可を受けた者

報酬を得て募集または、採用活動に従事する場合には、有料職業紹介事業の許可を受ける必要があります。有料職業紹介事業の許可を受ける場合には、申請時にあらかじめ報酬金額を決定し、届け出る必要があります。

・賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合

会社がリファーラル採用を導入し「紹介手当」を導入する場合は、例外規定に該当すると考えることができます。「賃金、給料その他これらに準ずるもの」と認められるためには、就業規則(賃金規程)に規定しておいた方がよいでしょう。

この例外規定に該当しない場合、例えば社員以外の第三者に紹介料を支払うような行為は職業安定法に違反する可能性があるので注意が必要です。

「賃金、給料その他これらに準ずるもの」として支払う場合には、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)や労働保険料(労災保険・雇用保険)の対象になると考えられます。

(報酬の供与の禁止)
第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

*e-Gov法令検索「職業安定法」

*e-Gov法令検索「職業安定法」

┃まとめ

今回は、リファーラル採用制度導入時と運用時の注意点、うまく運用していくためのポイントについて解説しました。

リファーラル採用は、企業が効率的に人材を確保し、社内文化に適した人材を獲得するための有力な手段です。本記事では、リファーラル採用の基本から制度導入、運用時の注意点までを詳しく解説しました。リファーラル採用のメリットとして、信頼性の高い人材の確保、採用コストの削減、社員のエンゲージメントの向上などが挙げられます。

制度の導入に際しては、企業の現状やニーズを把握し、適切な設計と準備を行うことが重要です。運用時には、社員への周知や教育、リスク管理、効果測定を通じて、リファーラル採用の効果を最大限に引き出すことが求められます。成功事例を参考にしつつ、自社に合ったリファーラル採用制度を構築することで、採用活動の効率化と企業の成長に寄与することができるでしょう。

リファーラル採用をうまく活用し、企業の採用活動を次のステージへと進めるためには、継続的な改善と社員の積極的な参加が不可欠です。リファーラル採用の成功を目指し、実践的な取り組みを行っていきましょう。

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