【社会保険適用拡大とは】会社がとるべき対応は?

これまで社会保険の適用対象外だったパートタイマーやアルバイト等の短時間労働者に対して、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用が拡大されます。

社会保険適用拡大は、2016年10月以降、従業員数501人以上の企業を対象にスタートし、2022年10月1日からは101人以上、2024年10月1日からは51人以上の企業も対象になり、多くの中小企業に影響します。

ここでは、今後、社会保険適用拡大の対象となる会社として具体的にどのように対応したらいいかをお伝えします。

┃社会保険適用拡大とは

社会保険適用拡大の理由の一つに、国はより多くの人を社会保険に加入させたいという狙いがあります。

より多くの人を加入させるために、適用範囲を広げ、パートタイマーやアルバイトなどいわゆる短時間労働者にも社会保険を適用させようと今回の法改正が行われました。

これによって国は、公的年金制度をより、持続可能なものにしようという狙いもあると考えられます。

┃社会保険適用拡大が会社と社員に与える影響

社会保険の適用拡大は、会社と社員両方に大きな影響を与えます。

保険給付の充実や補償の拡大というメリットもある一方、金銭的負担が増えるといったデメリットがあることも無視できません。

◯社会保険適用拡大が社員に与える影響

・年金が2階建てとなり、将来もらえる額が増える

これまで扶養内で働いていた方、国民年金に加入していた方が社会保険適用対象者になると、将来、基礎年金に加え厚生年金も受け取れるようになります。

・傷病手当金

社会保険の適用がない短時間労働者の場合、業務中や通勤途中の怪我には労災保険が適用されますが、それ以外の怪我や病気による休業 には給与の補償がありません。

しかし、社会保険が適用されれば、傷病手当金の支給を受けることができるようになり、休業4日目以降について給与の一部が補償されます。

・出産手当金

社会保険に加入していると、産前産後休業中の給与の一部が補償されます

また、産前産後休業中や育児休業中の社会保険料の支払いを免除する制度や、復職時に給与額が下がっても、将来受け取れる年金の額が下がらないようにする制度などもあります。

・手取り額の減少

これまで、自身で国民年金や国民健康保険を納付していた方や、家族の扶養に入っていた方は、社会保険料が給与から天引きされるようになるので毎月の手取り額が減ります。

例えば、神奈川県で時給1,100円、週に20時間勤務していて、毎月9万円ほどの給与を受け取っている方の場合、社会保険の適用を受けると毎月約12,000円程度が給与から控除されることになります。

介護保険第2号被保険者となる40歳以上64歳以下の場合はさらに介護保険料も加わります。

◯社会保険適用拡大が会社に与える影響

・社会保険適用拡大が人材採用や離職率に影響することも

社員を社会保険に加入させるか加入させないか等、社員一人一人の希望に合わせた柔軟な働き方を取り入れることは、人材採用や離職率に良い影響を与えることが考えられます

一方で、社会保険料の負担が増加するなどの影響も無視できません。

・社会保険料の負担の増加

社会保険に加入する社員が増える分、会社もより多くの社会保険料を納付することになります。

社会保険料は、会社と社員とが折半負担をすることになるので、「手取り額の減少」の中で記したおよそ同額を、会社も納めなくてはなりません。

例えば上記のような、毎月9万円ほど支給しているアルバイト、パートが10名おり、全員が社会保険へ加入した場合、会社が納付する社会保険料は毎月約25万円増えることになります。

また、そのうち半分は会社負担分となります。さらに、40歳以上64歳以下の社員がいれば介護保険料の分も負担が増加します。

・社会保険適用拡大に伴う国の支援策

キャリアアップ助成金の処遇改善コースの中には「短時間労働者労働時間延長コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」があります。

どちらも社会保険適用拡大に伴い、社会保険へ加入した社員の手取りが減らないよう措置を講じた会社に対する助成金です。

短時間労働者労働時間延長コースは、新たに社会保険に加入する有期契約労働者の、所定労働時間を増やす措置を行った場合の助成金です。

選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、新たに社会保険に加入する有期契約労働者の、基本給を増やす措置を行った場合の助成金です。

社会保険適用拡大の対象となる会社は、これらの制度の活用も検討してみるのもよいでしょう。

┃社会保険適用拡大に対して今から会社がとるべき対応とは

◯社会保険適用拡大の対象になる社員数のカウント方法とタイミング

社会保険適用拡大の対象になる社員数とは、現在の厚生年金保険の被保険者数を指します。

次の日付の時点で厚生年金保険被保険者数が所定の人数を超えていたり、直近12箇月のうち6箇月以上継続して基準を上回ると日本年金機構が認定したりした場合は、日本年金機構の判断により適用されます。

2022年10月1日時点・・・101人以上
2024年10月1日時点・・・51人以上

※法改正で新たに対象となる従業員、70歳以上で健康保険のみに加入している従業員は含めません

◯社会保険適用拡大の対象になる社員の要件

従来の社会保険加入対象となる社員は、

  • ・法人の常勤役員、所定労働時間すべてに働く正社員
  • ・正社員と比較して週労働時間および月の労働日数が3/4以上の短時間社員

でした。

今回の法改正により社会保険適用拡大の対象となる社員とは、社員数が一定数以上人なる特定適用事業所で働く人で、

  • ・一週間の所定労働時間が20時間以上
  • ・2箇月以上継続して雇用する見込みである
  • ・毎月の給与が8.8万円以上
  • ・学生でない

以上の条件にすべて当てはまる方が対象です。

正社員、パートタイマー、アルバイトは問いません。家族の扶養に入っている被扶養者、ダブルワークの方も対象になります。

◯社会保険適用拡大の対象になる会社がするべきこと

・対象従業員の洗い出し

まずは上記の条件に当てはまる社員を確認します。

・社員への周知

社内メールや説明会などで、対象の社員への周知を行います。

・社員とのコミュニケーション

社会保険の加入対象となった社員の中には、家族の扶養のままで働きたい、手取りが減る分労働時間を増やしたい、という社員もいると考えられます。

個別に面談等で意向を確認し、勤務時間の調整など、条件のすり合わせを行う必要があります。

・対象者の社会保険加入手続き

社会保険に加入する社員の、資格取得手続きを申請します。通常の手続きと変わりありません。

┃まとめ

2022年、2024年の法改正により、多くの企業が影響を受けることとなります。

社員からの問い合わせに対してしっかりと答えられるよう、会社としてすべきことを確認しておきましょう。

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