【有料職業紹介事業の許可申請】書類の作成方法と免許取得費用について解説
有料職業紹介(人材紹介)事業を始めるためには免許(許可証)の交付を受ける必要があります。許可証の交付を受けるためには、許可要件がそろっていることを許可申請書類や添付書類により証明しなければなりません。
都道府県労働局のホームページでは、許可申請のための一般的な書類一式が揃えられており、必要な添付書類の一覧も用意されていますが実際の手続きには、それだけでは足りません。許可を受けようとする会社ごとに事情が様々なため書類の書き方も添付書類の内容も違います。
今回は、一般的なケースを中心に許可申請書類の作成方法と免許取得に必要な費用について解説していきます。
┃有料職業紹介(人材紹介)事業の許可申請書類の作成
○職業紹介事業許可申請書の作成
有料職業紹介事業許可申請書は、「提出様式」と「添付書類」の2つに分かれます。提出様式は、許可申請書に代表されるようにあらかじめ書式が決まっていて、会社が決められた項目を埋めていくことになります。添付書類は、定款や登記簿謄本(履歴事項全部証明書)のように会社ごとに異なりますから、都道府県労働局の指示に従って会社が揃える必要があります。
添付書類については、会社の状況に応じて必要になる物が変わることはもちろん、申請をする都道府県労働局によっても若干異なりますが今回は、東京労働局管内の会社が許可申請を行うときの一般的なケースを中心に解説していきます。なお、他の都道府県労働局に申請予定の場合には、その都道府県労働局のホームページなどを確認するようにしてください。
また、職業紹介事業については会社(法人)ではなく個人(個人事業主)での申請も可能ではありますが多くのケースでは法人を設立して許可申請を行うため、法人での許可申請を行う前提で解説します。
・職業紹介事業許可申請書(様式第1号)
会社の基本情報を記載するのが職業紹介事業許可申請書(様式第1号)です。
④氏名又は名称、⑤所在地
ここは、登記簿謄本に記載されている通りに記載します。特に注意するべきは住所表記です。登記簿謄本に「○丁目○番地」と記載があるのに「○-○」とハイフンで省略してしまうと訂正が必要になります。
⑥代表者氏名、⑦役員指名
ここは、住民票通りに記載します。④⑤欄と同様に住所表記方法や建物名(マンション名)なども漏れのないように記載します。
⑧兼業の種類・内容
実際に事業を行っており収益がある事業のみを記載します。登記簿謄本の事業目的に記載してあることを写すところではないので注意してください。
⑨事業
実際に職業紹介事業の拠点となる事業所の名称と所在地を記載します。本社と同様であれば第1面と同様に、別の場所で行う場合には「○○支店/○○営業所」などでも問題ありません。第1面で記載した本社で職業紹介事業を行う場合、登記簿謄本では建物名や号室が省略されているケースがありますが、ここでは登記簿謄本と同じに記載するのではなく建物名や号室の記載も必要です。
⑫取次機関
海外人材の職業紹介事業を行う場合には、取次機関の名称、住所、事業内容を記載します。
・職業紹介事業計画書(様式第2号)
事業所名は様式第1号⑨欄で記載した事業名です。新規許可申請の場合、許可番号はまだ付番されていないため空欄です。
①区分、②有効求職者見込数
特別に職種や地域を限定する事情がなければ「全職種」とだけ記載すれば足ります。
有効求職者見込数は許可申請を行う年度の見込み数を記載します。ここは、それほど正確な数字を求められる部分ではありません。
③区分、④相手国名、⑤有効求職者見込数
国外にわたる職業紹介事業を行う場合の区分(職種)、国名、有効求職者見込数を記載します。特に国名に関しては、具体的な国の名称を記載することになります。また、国外にわたる職業紹介事業を行う場合、必要な添付書類が増えて許可取得の難易度が大きく上がります。
・届出制手数料届出書(様式第3号)
④氏名又は名称、⑤所在地
様式第1号第2面⑨欄と同様に実際に職業紹介事業の拠点となる事業所の名称と所在地を記載します。
⑥適用開始・変更予定日
有料職業紹介事業許可申請を新規で行う場合には空欄のままで提出します。
⑦届出・変更届出内容
「別紙手数料表による」とだけ記載し、添付書類として手数料表を作成します。
⑧備考欄
職業紹介事業許可申請に関する会社内の担当者名と所属部署、連絡が取れる電話番号を記載します。職業紹介責任者を記載するケースが多いです。
・職業紹介事業取扱職種範囲等届出書(様式第6号)
職種・地域を定めて届け出る場合に作成し提出することになりますが、新規許可申請のときには基本的には不要です。
○日本国内のみで職業紹介を行う場合
日本国内の人材を日本国内の事業場に紹介する場合には、ここでご案内する「提出様式」と「添付書類」があれば概ね申請書類はそろいます。しかし、海外人材を日本国内の会社に紹介したい場合には許可申請の難易度も上がり添付書類の種類も増えます。
○海外人材の職業紹介を行う場合
海外人材を日本国内の会社に紹介をする場合には、取次機関(海外の送り出し機関)や相手国の関係法令に関する事項の届出が必要です。
・職業紹介事業取扱職種範囲等届出書 (様式第6号)
相手国の名称を記載します。
・取次機関に関する申告書 (通達様式第10号)
相手国にある取次機関に関する事項を記載します。
・相手先国の関係法令(職業安定法や労働関係法等)とその日本語訳
人材の送り出しをする相手国において、日本の職業安定法に準ずる法律の有無を確認します。職業安定法に準ずる法律があるならその法律の根拠になる法律条文と日本語訳が必要です。法律が無い場合には、現地の弁護士に当たるような法律の専門家から「職業安定法に準ずる法律は無い」ことを証明する書面の原文と日本語訳を添付します。
・職業安定法に準ずる法律がある場合
相手国において、日本の職業安定法に準ずる法律がある場合には現地の取次機関が有料職業紹介事業許可に準ずる許可を得ている必要がありますから、その許可証の原文と日本語訳が必要です。
・取次機関との契約書
取次機関等との業務分担が明記された契約書等を提出します。それが外国語で記載されている場合には、日本語訳も必要です。
以上のように海外人材の職業紹介を行う場合は、その難易度が大きく上がることから日本国内限定の有料職業紹介事業許可を得てから随時、対象となる相手国を増やしていくことをお勧めします。
┃有料職業紹介(人材紹介)事業許可申請時の添付書類
○添付書類一覧を参照し漏れなく準備すること
自社で有料職業紹介事業許可を行う場合には事前に都道府県労働局へ相談に行くことが多いようです。事前相談で提出様式や添付書類の指導・アドバイスを受けて3~4回(あるいはそれ以上)窓口に通って申請までこぎつけるようなケースもあります。
都道府県労働局から公開されている添付書類一覧をよく確認して確実に全ての申請書類をそろえることが必要です。
○各添付書類の準備・作成のポイント
・定款と登記簿謄本
当然のことながら最新の状態に保たれている必要があります。また、事業目的に「職業安定法に伴う有料職業紹介事業」の文言がなければいけません。事業主が転居したのに登記簿の書き換えをしていないといったケースもあるので注意が必要です。
・代表者、役員、職業紹介責任者の住民票の写し
本籍地や国籍、在留資格が記載されていてマイナンバーは記載されていないものを取得します。
・代表者、役員、職業紹介責任者の履歴書
履歴書は最終学歴以降、切れ目なく記載します。求職活動中などで履歴に記載がある場合は「○年○月~○年○月:求職活動中」などと記載します。有料職業紹介事業許可申請をする会社以外で在籍している会社などがある場合は、それについても「現任」と記載します。
派遣社員として働いていた期間がある場合には、派遣元の事業所について記載をします。
・職業紹介責任者講習会の受講証明書
職業紹介責任者講習を受講して受講証明書の写しを添付します。そのため申請をする前日までには、受講を完了している必要があります。なお、職業紹介責任者講習は申請書の受理日において5年以内に受講しているものが有効です。
・資産(財産)要件を確認する書類
「貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書」については、直前の決算時に税務署へ申告したものの写しを提出します。電子申告をした場合には「メール詳細」を受理印の代わりに添付します。
「法人税の納税申告書(別表1「税務署の受付が確認できるもの」、及び別表4)」も同様に電子申告をした場合には、「メール詳細」の添付が必要です。
「法人税の納税証明書(その2 所得金額用)」は、税務署で取得をします。
・事業所要件を確認する書類
賃貸借契約書やレイアウト(平面)図を提出します。レイアウト図についてはパワーポイントなどで作成した簡易的なもので構いませんが、許可要件となる「面談スペース」「個人情報保管庫(鍵付き)」の設置場所などについては漏れなく記載するようにします。
最近は、レンタルオフィスやシェアオフィスなどで許可申請を行うケースも増えてきていますがその場合には、個室の確保など労働者のプライバシーが守られる構造になっているかどうか確認が必要です。詳細は、職業紹介責任者講習でも注意があるでしょう。また、プライバシー保護の観点から別法人と同居(同室)だったり別法人が同じ住所で登記されていたりすると許可を取得できません。
・手数料表
選択する有料職業紹介の方法に応じた手数料表を作成します。東京労働局ホームページではサンプルとして、一般的な有料職業紹介の一般登録型、ヘッドハンティングを行うサーチスカウト型、再就職支援型の3種類が用意されています。
一般登録型の手数料表は原則作成、その他の手数料表は必要に応じて作成することになります。手数料表に記載した金額やパーセンテージが上限となり、許可証交付後に厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトに掲載されることになります。手数料表等の他社事例を知りたい場合にも人材サービス総合サイトを参考にしてみると良いでしょう。
・代表者や役員、職業紹介責任者が他の法人でも役員等を兼ねている場合
代表者や役員、職業紹介責任者が他の法人でも役員等を兼ねている場合には、その法人の登記簿謄本または定款、ホームページの事業内容がわかる部分の写し、会社案内などの添付が必要です。
・事業の実態に応じて必要な書類
以上の他、会社の実情や役員、職業紹介責任者の実態に応じて追加書類が必要になります。
┃有料職業紹介(人材紹介)事業の許可申請にかかる費用と手数料
有料職業紹介事業許可申請にかかる費用は以下の通りです。
- ・収入印紙代:5万円/1事業所につき
- (2事業所目以降は1事業所につき1万8千円)
- ・登録免許税:9万円
社会保険労務士に申請代行を依頼する場合には別途、申請代行報酬が発生します。
┃有料職業紹介(人材紹介)事業の許可申請を社労士に代行依頼した場合の費用
○許可申請を自社で行う場合にかかる費用
有料職業紹介事業許可申請を自社で行う場合でも収入印紙と登録免許税の法定費用と都道府県労働局の窓口対応をする人件費や交通費がかかります。
○許可申請を社労士へ代行依頼する場合にかかる費用
社会保険労務士へ申請代行を依頼する場合の費用感は概ね10万円から15万円程度が相場になるでしょう。
┃まとめ
今回は、一般的なケースを中心に許可申請書類の作成方法と免許取得費用について解説しました。
何度も労働局に通う時間的余裕があれば自社で許可申請を行うのも良いと思いますが、早く許可を取得したいのであれば社会保険労務士に申請代行を依頼する方法もあります。
時間と費用と確実性などを総合的に考えてどのように準備を進めていくか検討されることをお勧めします。
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・【有料職業紹介事業とは】許可の要件と免許の取得方法について解説
*厚生労働省
・職業紹介事業パンフレット―許可・更新等マニュアル―
*東京労働局
・有料無料職業紹介関係
(申請をお考えの際には、管轄の都道府県労働ホームページをご覧ください。)