【健康保険資格証明書とは】もらい方と必要な手続き、使えないケースについて解説
健康保険資格証明書は、社員が新たに入社したときなどに健康保険証が手元に届くまでの間に病院へ行く必要があるような場合に手続き中であることを証明し、保険診療を受けられるようにするためのものです。
この健康保険資格証明書について「健康保険証と同じ効果がある」といった誤った認識や「医療機関を受診する予定はないが念のため発行して欲しい」など必ずしも必要ではないのに発行を求めるような社員もいます。
今回は、健康保険資格証明書の概要と交付してもらうための手続き、医療機関で使用できないケースなどについて解説します。
┃健康保険資格証明書とは
健康保険資格証明書とは、健康保険証が手元に届くまでの間に医療機関を受診する場合に社会保険の資格取得手続きが「手続き中」あることを証明するための書類です。社員が入社して社会保険の加入資格を満たす場合、会社が資格取得手続き(入社手続き)を行うことで健康保険証が発行されます。
健康保険証は手続き後、通常2週間程で発行されますが、場合によっては「持病などがありすぐに医療機関にかかりたい」「子供が小さいため早く健康保険証がほしい」という社員もいます。
健康保険資格証明書の発行手続きをすることで、健康保険証が交付されるまでの期間、健康保険証がなくても医療機関を受診できるようにするためのものです。
┃健康保険資格証明書の取得方法
○発行してもらうためには年金事務所へ手続きが必要
健康保険資格証明書を発行してもらうためには、会社を管轄する年金事務所へ手続きが必要です。社会保険被保険者または被扶養者となる人が発行を希望する場合には、「健康保険 被保険者資格証明書交付申請書」を年金事務所へ提出します。
○発行してもらうときの必要書類
健康保険資格証明書の発行手続きをするときは、年金事務所へ被保険者資格取得届と合わせて被保険者資格証明書交付申請書を提出します。被扶養者分の健康保険資格証明書も発行してもらいたいときには、被扶養者異動届も同時に提出しましょう。
添付書類などは特に必要ありません。
○会社の事務担当者が窓口にいくときは委任状が必要
会社の手続き事務担当者が年金事務所の窓口へ直接、手続きに行く場合には本人の身分証明書と「健康保険被保険者資格証明書」の受領について、事業主又は被保険者の委任を受けていることが分かる「委任状」を持参します。
委任状については任意の様式でも問題ありませんが日本年金機構ホームページで参考書式が公開されています。なお、委任状は委任者となる被保険者本人が作成するのが原則です。
年金事務所へ提示する身分証明書は個人番号カード(マイナンバーカード)や運転免許証、住民基本台帳カード、パスポート、身体障害者手帳、在留カードなど顔写真が貼付されているものは1つで足ります。健康保険証など顔写真がないものは2つ以上の提示が必要になります。
→手続き事務担当者が代理人として年金事務所窓口へ行くときの身分証明書とは
┃健康保険資格証明書を取得・使用するときの注意点
○発行までにかかる時間
健康保険資格証明書の発行を希望する場合には、被保険者資格証明書交付申請書を郵送または窓口持参で年金事務所へ提出します。窓口で受理された後、原則として当日中に発行されることになっていますが、新規適用届と同時提出だったり、一度に多数の被保険者資格証明書交付申請書を提出したりした場合には、当日中の交付がされない場合があります。その他、資格取得届の提出が集中する時季(4月頃など)も発行が遅れるケースがあります。
○手続きをしても発行が認められないケース
健康保険資格証明書は、被保険者証の交付等が行われるまでの間に早急に保険医療機関等で受診する予定があるときに限り発行されるものです。「一応発行してもらいたい」という理由での発行は認められません。
一度に複数の被保険者資格証明書交付申請書を提出するような場合には、年金事務所の窓口で「本当に必要なのか」確認されることもあります。会社としても社員から健康保険資格証明書の発行を求められたときには医療機関を受診する予定があるのか、健康保険証の発行まで待つことはできないのかなどは、最低限確認をした上で手続きをするべきでしょう。
○急いでいるときの対応方法
健康保険資格証明書を発行してもらうための手続きは郵送でもできるとお伝えしましたが、早く発行をしてもらいたいのであれば被保険者資格証明書交付申請書と被保険者資格取得届や被扶養者異動届と合わせて窓口に持参するのが最も早く発行してもらえます。
ただし、窓口持参したからといってその場ですぐに交付しもらえるものとは限らず、数時間かかることもあります。年金事務所によっては午前中に受け付けたものはその日の午後、午後に受け付けたものは翌日午前中の交付になるなど対応は様々です。
既に電子申請や郵送で被保険者資格取得届を提出してしまっている場合には、事務センターへの届け出状況を確認する必要があるため、交付までに時間がかかることが予想されます。手続きが必要な場合には、管轄の年金事務所へ確認してから窓口へ行くと良いでしょう。
最近では、電子申請で提出された届け出を優先して処理がされているため、郵送で被保険者資格証明書交付申請書を提出した場合、健康保険資格証明書の交付と健康保険証の交付時季があまり変わらないようなこともあります。
○健康保険資格証明書の有効期間
健康保険資格証明書の有効期間は、証明日から20日間です。期間経過後、または健康保険証が発行されて不要になったときは年金事務所へ返納する必要があります。
┃健康保険資格証明書が病院で使えないケース
「健康保険被保険者資格証明書は健康保険証と同じ効果がある」と考えている人もいますがそのようなことはなく、受診した病院や薬局によっては保険診療とならないケースもあります。
健康保険資格証明書で保険診療が受けられるかどうかは医療機関にもよるので、受診する前に確認しておくことをお勧めします。
┃まとめ
今回は、健康保険資格証明書の概要と交付してもらうための手続き、医療機関で使用できないケースなどについて解説しました。
人によっては健康保険資格証明書に対する考えが変わったということもあるのではないでしょうか。最近では電子申請の普及により健康保険証の発行までの期間も短縮されてきています。
まだ郵送で手続きを行っている会社は、社員の手続きを迅速に対応するためにも電子申請に対応している社会保険労務士へのアウトソーシングや電子申請の導入を検討することをお勧めします。
※2024年3月15日、内容を更新しました。