【離職率の計算方法とは】離職率の基礎知識と計算方法を解説
離職率の計算方法とはどのような方法が正しいのか、そもそも離職率とは?どんなときに必要になるのか?など疑問を抱えている方も多いと思います。
離職率を正しく理解し、活用することは、人材の採用と定着にも大きく影響を及ぼします。
今回は、離職率の計算方法と基礎知識について解説します。
┃離職率とは
離職率とは、ある一定期間内にどれだけの人数の社員が離職(退職)したかを表す指標です。
算出方法については、法律などで明確に決められた定義はなく、掲載されている媒体や統計データごとに求める結果や捉え方、考え方によって異なります。
離職率に対する考え方は様々で、「離職率が低い=良い会社」とは言い切れません。
○離職率の平均値とその目安
厚生労働省から公表されている「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると離職率は14.2%となっていますので、この数値が国全体の平均値と考えることができます。
【入職率・離職率の推移】
新規学卒者(いわゆる新卒採用)の就職後3年以内の離職状況について、こちらも同じく厚生労働省から調査結果が公表されています。
この調査結果によると、
- ・中卒 55.0%
- ・高卒 36.9%
- ・大卒 31.2%
- ・短大など 41.4%
となっており、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率に限ってみれば、労働者全体の離職率よりも2倍以上高いことがわかります。
【学歴別就職後3年以内離職率の推移】
仕事を求める求職者は、こうした数値を基準として「離職率が高い/低い」を判断することもありますので、会社側としてはこの平均値を下回るように離職率の改善を図ることが目標になるでしょう。
○離職率ランキング
離職率が高い・低いは、会社ごとに異なるのはもちろん、業界や職種、雇用形態(正規雇用、パートタイムなど)、性別によっても差があります。
自社の業界が離職率が高い業界なのであれば、その原因を探り改善していくことで同業他社との差別化を図り人材獲得競争で優位に立つこともできるでしょう。
・産業別、業界別の離職率
主な産業別の離職率について、令和2年1年間のデータを見てみると宿泊業・飲食サービス業が最も高く(26.9%)、次にその他のサービス業(19.3%)、次に生活関連サービス業・娯楽業(18.4%)の順になっています。
【産業別入職率・離職率(令和2年(2020年))
*厚生労働省:令和2年雇用動向調査結果の概況
・年齢階層別の離職率
年齢階層別のデータを見てみると男女ともに24歳以下で離職率が高くなっており、これは新規学卒者の離職率の高さとも関連していると思われます。
若年層の採用を進めるときは特に、採用時のミスマッチをなどの取り組みが必要になっていきます。
・男女別の離職率
男女別のデータを見ていくと男女ともに25歳以降ゆるやかに離職率は低下していきますが、55歳ころから上昇する傾向にあります。これは、定年退職や早期退職制度などの影響も考えられます。
男性は一番離職率が低いのが「50歳~54歳(4.7%)」なのに対して女性は「65歳以上(6.2%)」となっており、比較的、女性の方が離職率が高くなっています。
この男女差については、今後、変化していくことが考えられます。
○「離職率が高い=ブラック企業」ではない
離職率の話題になるとその数字が高いか低いかの話題になりがちで「離職率が高い=ブラック企業」と言われることもあります。
ブラック企業で労働条件が悪いから離職率が高いのではないか?と思われがちですが一概にそうとは言えないと考えています。
スタートアップ企業やベンチャー企業の場合には、拡大する中で人材の入れ替わりが多くなりがちですが、環境が変化する中で役割が変わったり、キャリアアップを考えて次のステージに進んだりということも起こります。
そうして、コア人材やその会社に必要な人材が残り新陳代謝をしながら成長していくことは決して悪いことではありません。
逆に中小零細企業や老舗企業では、新陳代謝が起こりにくく離職率が低くなるケースもあります。そうした会社の中には、新規採用に投資をする余力がないこともあり社員の高齢化という課題を抱えているケースもあります。
ある会社では、社員の独立開業支援も行っており一見すると離職率が高くなりそうですがそうしてグループ会社や関連会社を輩出していくことで成長の促進につながることも考えられます。
○離職による会社の損失
一方で、社員が離職してしまった場合の会社の損失については無視できない部分があります。
採用活動によって一人の社員を雇い入れるために必要なコストは、1人あたり約46万円かかると言われています。
そのコストの内訳は、求人広告の掲載、会社説明会の出展、採用活動全般にかかる人件費などが挙げられます。
さらに早期退職してしまった場合のことを考えるとコストは増大していきます。
例えば新たに正社員として雇い入れた場合でその人の給与が20万円だとします。その新入社員が戦力になる前に辞めてしまったら支払った給与すべてが無駄なコストになります。
また、先輩社員が自らの業務よりも優先してOJTなどを行えば生産性が落ちることになりますからそこもコスト(採用コスト、教育コスト)になっていくでしょう。
ハローワークなどの無料媒体で採用活動をすれば求人広告費用などはかかりませんが、その他にも多くのコストがかかることがわかります。
資金力に余裕がない中小零細企業ほど、採用の入口部分にもっと注力するべきでしょう。
┃離職率の計算方法
離職率の計算方法は明確な定義がないため、その時々でどのような結果を求めるのか、どのようなことを知りたいのかによって算出方法は変わります。
○離職率の基本的な計算方法
例えば、ただ単に「離職率」と言えばその会社や業界全体の数値を表していることもありますし、「新規学卒者の3年以内離職率」と言えば新卒で入社した社員がその後3年以内に離職した割合を示していると考えることができます。
その会社で働く人がなにを求めているかによっても見え方は変わってくるでしょう。
なお、厚生労働省が公表している「雇用動向調査」の中では離職率について、
==========
離職者数÷その年度の1月1日現在の常用労働者数×100
==========
という計算式で算出されることになっています。
「新規学卒者の3年以内離職率」を知りたいのであれば分子は「3年以内に離職した人」、分母は「3年前に新規学卒者として採用した人」ということになるでしょう。
例)
3年以内に離職した人・・・・・・・・・・5名
3年前に新規学卒者として採用した人・・・20名
5÷20×100=25%→新規学卒者の3年以内離職率は25%
以上のようになります。このように対象者や対象期間の選定が重要です。
○離職率を算出する目的
就職四季報などの就職情報誌に載せるためや就職活動関連のアンケートへの回答、政府統計への調査協力、そして会社内の組織改善のためのデータ収集など離職率の算出目的は様々です。
その目的に合った計算方法を用いるべきですが、就職情報誌に掲載するにあたり30%を超えるような離職率を載せてしまっては採用活動に悪影響を及ぼす恐れがあります。
情報を操作して虚偽の情報を掲載する方が後からそれが発覚したときのイメージダウンは免れませんから、掲載を見送る、改善してから掲載するといった対応が必要なこともあるでしょう。
○離職率の調べ方
求職者は、離職率や年次有給休暇の取得率など会社の数値データも参考にして就職先を選んでいます。
会社としても「選ばれる側」であることを自覚して同業他社や近隣地域の異業種などの離職率についても意識しておく必要があります。
・就職四季報で調べる
就職四季報などの就職情報誌に掲載されている会社であれば一目瞭然です。同業他社よりも離職率が高ければ採用活動で苦戦を強いられることが予想されます。
・インターネットで調べる
「(会社名) 離職率」などで検索すると就活生のクチコミサイトやコミュニティが多くあることがわかります。
その中で離職率についての情報が見つかることもあります。
・政府の統計データで調べる
個別の会社の離職率については、政府統計で調べることはできませんが業界別・産業別のデータを見ることによって採用選考を受けることを考えていた会社が業界平均を上回る離職率だったとしたらどうでしょう。
採用選考を受けるかどうかの判断に影響を及ぼすことも考えられます。
┃離職率を理解して採用活動に活かす
離職率のことを理解して計算方法を知ったからと言ってそれだけでは意味がありません。まずは、自社の現状を理解して改善策を見つけてデータを活用していくことが重要です。
離職率を活用する主な場面は、人材の採用と定着を考えるときです。離職率を裏返せば定着率ということにもなります。
現状を正しく把握して、改善に役立てていきましょう。
┃まとめ
今回は、離職率の計算方法と基礎知識について解説してきました。
離職率がどのように人材の採用と定着に関わってくるのかがご理解いただけたと思います。
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