社会保険の加入手続き完全ガイド!条件・必要書類・費用・代行サービスを解説

会社を設立して役員等が法人から役員報酬を受け取ったり、社員を雇い入れたりした場合で一定の条件に当てはまると社会保険への加入が義務が発生します。
社会保険の加入義務があるにもかかわらず、加入手続きを怠っていると過去に遡って加入手続きをするよう督促され、社会保険料も遡って徴収されるなど会社への影響は多大なものになります。
今回は、社会保険加入条件と正社員やパートタイマー・アルバイトを採用する時の手続き方法などについて解説していきます。
社会保険労務士法人GOALでは、社会保険手続きの代行を行っております。
社会保険の加入条件とは
社会保険の適用事業所
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、事業所単位で加入するものとされており、加入義務が発生している事業所のことを適用事業所といいます。
株式会社や合同会社などの法人であれば強制適用事業所となります。また、加入対象となる労働者が5人以上在籍している個人事業についても農林漁業、サービス業などを除いて強制適用事業所となります。
法人の場合、代表者一人だけであっても報酬が発生していれば強制適用となりますが、個人事業の代表者の場合には、報酬が発生していても社会保険に加入することはできません。
正社員(正規雇用社員)の加入条件
社会保険の適用事業所が正社員(正規雇用社員)を雇い入れたときには、社会保険に加入させる義務が発生します。社会保険への加入義務が発生する条件は、以下の通りです。
- 常用的に使用される者であること(事業所で決められた所定労働時間すべてに働く)
- 労務の対価として報酬が発生すること
代表取締役などの役員であっても、以上の条件に当てはまると法人に使用されるものとして、加入義務が発生します。
パートタイマー・アルバイト等の加入条件
パートタイマーやアルバイトといったいわゆる非正規雇用社員についても一定の条件に当てはまる場合には、社会保険への加入義務が発生します。特定適用事業所以外の事業所の原則的な取り扱いは次の通りです。
- その事業所の通常の労働者と比較して
- 1週の所定労働時間が4分の3以上であること
- 1箇月の所定労働日数が4分の3以上であること
さらに、社会保険適用拡大の対象になる特定適用事業所(または任意特定適用事業所)と国・地方公共団体に属する事業所に勤務する人の場合、次の1から3のすべてに当てはまると加入義務が発生します。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと

社会保険に加入する義務が発生する日とは
社会保険の加入日は自由に決められるのか
社会保険の加入日(資格取得日)は自由に決めることはできず、一定の条件に当てはまるとその日から、加入義務が発生します。「試用期間中は社会保険に加入させない」、「社会保険に加入させるのは正社員になってから」というように事業主の都合で任意に社会保険加入日を操作することはできません。
社会保険の適用事業所に入社したとき
正社員やパートタイマー・アルバイトとして社会保険の適用事業所に入社した日から社会保険の被保険者になります。ただし、70歳以上の人を雇い入れた場合には、社会保険の被保険者にはなりません。
社会保険の加入条件を満たしたとき
社会保険適用事業所に入社した当時は社会保険の加入条件を満たしていなかったとしても、途中で労働条件が変更された場合にはそのときから社会保険への加入義務が発生します。例えば、入社当時は週20時間以内の短時間で働いていた人が週30時間以上、働くようになった場合などがこれにあたります。
労働条件の変更をしていなかったとしても実態として週30時間を超えている、または、1箇月の実労働時間が約120時間を超える月が3箇月程度連続して発生しているようなときは、労働時間を減らすか、社会保険に加入させるかの判断が必要になるでしょう。
月の途中に入社した場合はいつから加入するか
月の途中で入社した場合でも、入社した日から社会保険に加入させるのが原則です。ただし、社会保険料は日割りされないため、負担する保険料のことを考えると入社日は月初に近い日で調整することをお勧めします。

社会保険に加入するための手続きとは
社会保険に加入するための資格取得手続き
社会保険の適用事業所が社員を雇い入れ、加入条件に該当する場合には「被保険者資格取得届」を日本年金機構(実務上は事業所を管轄する年金事務所)へ提出します。
会社が加入している健康保険制度が協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合には、日本年金機構へ手続きをすることで、協会けんぽへの手続きも同時に行うことができます。
会社が加入している健康保険制度が協会けんぽ以外の場合(健康保険組合など)には、日本年金機構と健康保険組合等、それぞれに対して手続きが必要になります。
社会保険の加入手続き漏れや手続き遅れがあった場合
社会保険の加入手続きが漏れてしまったり遅れが生じてしまったりすると、入社日に遡って手続きが必要になるのはもちろんですが、入社したばかりの社員の手元にいつまでも健康保険証が届かないことになります。
特に小さな子供が扶養家族(被扶養者)になるような場合には、早めの手続きをしてあげないと雇い入れ直後から会社への信頼感を失う原因にもなり得ます。
社員が社会保険加入を拒否した場合の対応
会社が社員を社会保険に加入させようとしても社員が保険料の負担などの懸念から被保険者となることを拒否することがあります。
その場合でも会社は、条件に当てはまる者を雇い入れたときにはその者を社会保険に加入させる義務があります。仮に労使双方の合意により社会保険の被保険者資格を取得しなかった場合でも、日本年金機構の事業所調査で加入漏れが指摘されたときには、適正な加入日まで遡って社会保険への加入が必要になります。
社会保険料を徴収し納付する義務は会社にありますから、そのとき既にその社員が退職していたとしても会社には、その社員の負担分も合わせた社会保険料が請求されることになります。
その社員との連絡が取れず、社会保険料を徴収できなければ、全額を会社が負担することにもなりかねません。

社会保険の被保険者とされない適用除外
「2箇月以内の有期労働契約にすれば最初の2箇月は社会保険に加入させなくてもいい」という勘違いをしている事業主は多いです。
法律の抜け穴のようにこのようなことをアドバイスするコンサルタントなどもいますがこれは誤った認識です。
社会保険の被保険者とされない人
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者とされない人(適用除外)として、次の人たちが挙げられています。
さらに「被保険者となる場合」に該当するとそのときから社会保険の被保険者になります。

*日本年金機構ホームページ
・適用事業所と被保険者
2カ月以内の期間を定めて使用される人
「2カ月以内の期間を定めて使用される人」は適用除外だから、形式的に初めの2箇月を有期契約にすればその分の社会保険料を削減できると考えている人がいます。
それは誤った認識、勘違いです。
厚生年金保険法では、次のように定められています。
「臨時に使用される者で」
「二月以内の期間を定めて使用される者」
については、厚生年金保険の被保険者としない。
ここに規定がある通り、正規雇用労働者にもかかわらず形式的に有期契約にしても社会保険の適用除外にはなりません。
正規雇用労働者として募集し、採用したのであれば形式的(試用期間の代わり)に有期労働契約を締結したとしても、採用当初から社会保険に加入させる必要があります。
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(適用除外)
第十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
一 臨時に使用される者であつて、次に掲げるもの。ただし、・・略・・ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
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社会保険の加入時期に誤りがあった場合
定期的に実施される年金事務所の事業所調査でこのような社会保険の加入時期に誤りが発覚した場合には、手続きの訂正が必要です。
不正にこのような操作をしていると思われると他のことにも厳しく追及されることにもなりかねません。
従業員の定着にも悪影響が
「正規雇用労働者(正社員)として採用されたはずなのに社会保険に加入させてくれない、保険証がもらえない」と感じたらどうでしょうか。
まだ、会社との信頼関係もあまりない間ですから、早期離職につながる可能性もあります。
ハローワーク経由なのであれば、ハローワークへ苦情を申し立てられてしまい、その後の採用活動に悪影響を及ぼすことも考えられます。
2箇月分の社会保険料と引き換えにもっと大きなものを失うことになるかもしれません。
**日本年金機構ホームページ
・適用事業所と被保険者
社会保険料逃れ┃偽装自営業
事業主であれば「社会保険料の負担を軽くしたい」「税金を安くしたい」ということを考える人も少なくはありません。
社会保険料の負担を逃れることを目的に「偽装自営業」「偽装業務委託」という方法をとる事業主もいます。
本来であれば雇用しているのとほとんど変わらない時間を拘束し、自身の指揮命令の下で業務にあたっているにもかかわらず、労働関係法令や社会保険法令その他の規制から逃れるために業務委託契約に偽装して雇用契約を締結するようなケースを言います。
まとめ
今回は、社会保険加入条件と正社員やパートタイマー・アルバイトを採用する時の手続き方法などについて解説しました。
社会保険制度は、会社と社員が負担する保険料も多く批判が多いことも否定できませんが、いざという時に社員の生活を守ることができるのも社会保険制度の重要な役割です。
会社としても正しく制度を理解して、適切なタイミングで加入手続きを実施するようにしてください。