同月得喪とは?┃入社月に退職した場合の社会保険料の取り扱い
同月得喪とは、同じ月に社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)の資格取得と資格喪失が発生することを言います。
入社してすぐに退職してしまった場合にこのようなことが起こります。同月得喪の場合、社会保険料の取り扱いが通常とは異なるので注意が必要です。
今回は、同月得喪が発生した場合の手続きと社会保険料の取り扱い方法についてお伝えします。
┃社会保険料の基本的な考え方
社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)の保険料が発生するかどうかは、原則として月末時点で被保険者資格があるか(会社に在籍しているか)で判断します。
月末退職の場合は、退職月の分の社会保険料まで発生しますが月末よりも前の日(月の途中)までに退職すると退職日を含む月の社会保険料は発生しません。
しかし、資格取得と資格喪失が発生する同月得喪の場合には、例外的な対応が必要になります。
┃同月得喪のときの社会保険料の取り扱い
同月得喪の場合、前記した「月末に在籍しているかどうか」に関わらず、例え月の途中に退職したときでも1箇月分の社会保険料が発生します。
社会保険料には、日割り計算という考え方がありませんので社会保険の加入要件を満たし、月内に1日でも被保険者として在籍すれば1箇月分の社会保険料が発生することになります。
社会保険料は会社と社員で折半負担ですから、同月得喪のケースでも会社負担分と社員負担分がそれぞれ発生することになります。
┃厚生年金保険料は手続きをすれば還付される
厚生年金保険料は、保険料の二重払いを防ぐ目的から同月得喪により資格喪失をした同月内に他の年金制度の資格取得手続きを行うことで還付されます。
厚生年金保険の資格を喪失した後、再就職をしなければ国民年金保険へ資格変更が必要になります。
退職をした元社員本人が国民年金保険等への資格変更の手続きをした後、会社あてに会社負担分と社員負担分を合わせて還付されます。
ですから、会社としては社員の退職時に「退職後、速やかに国民年金保険等の手続きを行うこと」「そうすれば厚生年金保険料は還付されること」を伝えておきましょう。
還付された厚生年金保険料は、給与振込口座に振り込むことも合わせて伝えておくとよいでしょう。
○厚生年金保険料が還付されるまでの流れ
(1)A社を退職した人が同月内にB社の厚生年金に加入、または国民年金の手続き実施
↓
(2)B社の厚生年金に加入、または国民年金の手続き完了
↓
(3)A社に年金事務所から「還付請求書」が届く
↓
(4)「還付請求書」にて還付請求実施
↓
(5)退職者へ控除していた「厚生年金保険料」を返金
┃健康保険料は還付されないので注意する
同じ社会保険料でも健康保険料については還付されないので注意が必要です。同様に雇用保険料も還付されません。
還付された社会保険料を元社員へ返金する流れの中で「厚生年金保険料」のみ、返金が発生することに注意してください。
┃雇用保険と源泉所得税の取り扱い
雇用保険料は、原則通り支給した賃金に対して計算した金額を控除します。
源泉所得税については、社会保険料の控除額によって金額が変わりますので、初めから社会保険料が還付されることを考えて計算を行うか還付されたときに再計算を行うかを検討しておきましょう。
社員が退職後、すぐに他の年金制度へ加入するための手続きをしてくれれば良いですが手続きが遅れた場合、会社にも還付がされないのが悩ましいところです。
┃退職後も連絡を取れるようにしておく
同月得喪のようなケースでは、入社して間もなく突然来なくなってしまうようなことも珍しくありません。
数日間しか働いていないような場合、日割り計算した給与より社会保険料の方が多くなってしまうこともあります。そうすると社員に社会保険料分の入金を依頼しなくてはならないこともあるでしょう。
会社としては、日ごろからこのようなケースも想定して社員との連絡手段を考えておくようにしてください。
┃まとめ
今回は、同月得喪が発生した場合の手続きと社会保険料の取り扱い方法についてお伝えしました。
例外的なケースのため給与計算や人事労務担当者でも知らない人もいたかもしれません。
同月得喪が発生したとき、社員に対してどのように案内をして、会社としての対応はどうするのか、あらかじめ考えておくことをおすすめします。
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※2021年12月24日内容更新しました