雇用契約と業務委託契約

雇用契約と業務委託の違いを正しく理解しないまま運用しトラブルになるケースが増えています。

最悪のケースの場合、未払い賃金や業務中の負傷等による訴訟トラブルに発展することもあります。

目次

┃雇用契約とは

雇用契約(労働契約)とは、労働基準法や労働契約法を根拠に「使用者は賃金を支払う」「労働者は労務を提供する」ことを契約の内容としています。

労働者は、労働基準法を始めとした労働関係法令の保護の対象となり、最低賃金や労働時間、時間外労働等、事業主に対する規制があります。

また、業務災害や通勤災害に関して労災保険法の保護を受けることができます。

┃業務委託とは

業務委託契約は、法律上明確な根拠があるわけではなく「民法623条(請負)」「民法643条(委任)」等がその考え方のベースになると考えられています。

雇用契約(労働契約)とは異なり、最低賃金や労働時間、時間外労働等の規制はありません。

労働者ではないので労災保険の保護も受けることはできません。

┃雇用契約と業務委託の違い

雇用契約をするとその者は、事業主の元で働く労働者となるので就業規則や雇用契約書に基づいて就業時間の拘束や業務命令を出すことができます。

業務委託契約は、就業時間を拘束したり、業務命令を出したりすることはできません。

一定の業務について依頼し、その業務の完成(完了)に対して報酬を支払うのが業務委託契約なので、業務の進行方法や進行手順等の細部には指示ができないことになります。

士業事務所との顧問契約や手続き関係のアウトソーシング契約、個人事業主やフリーランスとの契約をイメージすると良いでしょう。

雇用契約と業務委託契約の主な違いは次のようなことが考えられます。

┃業務委託契約が否定された場合のリスク

一部の事業主は、
「業務委託契約にすれば残業代を支払わなくてよい」
「業務委託契約にすれば社会保険料を支払わなくてよい」
という誤った認識の元に契約書のタイトルだけを「業務委託契約書」としているケースがあります。

しかし、契約は契約書のタイトルで決まるものではなく実態がどうかで判断されます。

契約書が「業務委託契約書」となっていたとしても実際には「労働時間(就業時間)を拘束していた」「従業員と同じように働かせていた」ということもあります。

そうして働いていた側の人が「実際は業務委託ではなく雇用契約なのでは?」と疑問に感じ、労働基準監督署や弁護士等に相談をするところからトラブルに発展します。

実態は、業務委託契約ではなく雇用契約だったと判断されれば、遡って賃金を支払い、社会保険に加入させ保険料を納付することになる可能性があります。

┃業務委託契約がトラブルになる具体的事例

業務委託契約がトラブルになる具体的な事例は、次のようなケースが多いです。

○美容室・美容サロンのスタッフが怪我をした
手首を負傷し仕事に就けなくなったため労災保険を申請しようとしたところ、業務委託契約のため対象外となり「実際は雇用契約だった」として事業主を訴えた。

○接骨院等の治療院のスタッフが退職時に未払い賃金を求めて訴えた
施術者と業務委託契約をしていたが実際は、他のスタッフと同じくシフトが管理されており、就業時間に関する裁量がなかった。

業務委託契約のため、患者がいない待ち時間中の賃金が支払われず「実際は雇用契約だ」として未払い賃金や最低賃金との差額を請求する訴えを起こした。

┃雇用契約と業務委託は正しく使い分ける

業務委託契約が悪いとか、業務委託契約をしない方がいいということではなく、雇用契約との違いをしっかりと理解する必要があります。

「他のところもやっている」「うちの業界は仕方ない」という言い訳は通用しないということを認識し、専門家の指導のもとに正しく運用していくことが重要です。

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