【労災保険とは】制度の概要と申請書類、押印省略についてわかりやすく解説

労災保険とは、業務上または通勤を原因として労働者が負傷・疾病・障害・死亡といった災害に遭った場合に労働者やその家族に対して必要な保険給付を行うための制度です。

一定の要件の元に被保険者となる社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険とは異なり、パートタイマーやアルバイトなど原則として全ての労働者が対象となります。

今回は、労災保険制度の概要と保険給付ごとに異なる申請書類と押印省略について解説していきます。

目次

┃労災保険とは

○労災保険とは

労災保険(労働者災害補償保険)とは、業務上または通勤を原因として労働者が負傷・疾病・障害・死亡といった災害に遭った場合に労働者やその家族に対して必要な保険給付を行うための制度です。

労災保険で保護される(保険給付の対象になる)災害は、業務上の原因による業務災害と通勤を原因とする通勤災害に分かれます。

*出典:厚生労働省「労災保険給付の概要」

○労災保険の加入条件

労災保険は、正社員やパートタイマー、アルバイト等、雇用形態に関わらず、労働者を一人でも雇用したときには、その労働契約をした初日から加入義務が発生します。ただし、事業主と同居している親族等は、原則として保険給付の対象にはなりません。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険とは違い、労働者一人一人について資格取得や資格喪失手続きをすることはなく、事業所全体として適用される制度です。

○労災保険の加入対象者

一定の要件の元に被保険者となる社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険とは異なり、パートタイマーやアルバイトなど原則として全ての労働者が対象となります。

┃労災保険料の金額と労災保険料率

○労災保険料は全額事業主負担

労災保険料は、全額事業主負担です。そのため、社会保険料や雇用保険料のように労働者から一部を徴収するようなことはしません。毎年7月に実施する労働保険年度更新の際に前年度の賃金総額から算出した確定保険料と当年度の賃金総額の見込み額から算出した概算保険料を申告納付する仕組みです。

→労働保険年度更新について詳しくはこちら

○労災保険料はいくらか

労災保険料は、事業の種類ごとに設定された労災保険料率を労働者の賃金総額(または見込み額)に乗じることで算出することができます。この労災保険料率は、事業の種類による災害が発生する可能性(割合)を元に決められており、定期的に見直しが行われています。

*厚生労働省「労災保険料率について」

┃労災保険給付の種類と手続き方法・必要書類

○業務災害と通勤災害で必要書類を使い分ける

労災保険には、業務上の原因による業務災害と通勤を原因とする通勤災害の2つの制度があり、保険給付を受けるための手続き方法や届け出に使用する必要書類が異なるので注意が必要です。誤った書類で手続きをしてしまうと手続きがやり直しになり、保険給付を受けるまでに時間がかかってしまいます。

労災保険給付を請求するときに必要な書類は、次の厚生労働省のwebサイトからダウンロードすることができます。「業務災害用」や「通勤災害用」等、区別して掲載されていますのでそれぞれ申請したい給付の種類に応じた様式を使用してください。

*厚生労働省「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」

○労災保険給付の種類

労災保険給付の種類は次の通りです。なお、カッコ書きの中は、通勤災害に対する保険給付の名称を示しています。

  • ・療養補償給付(療養給付)
  • ・休業補償給付(休業給付)
  • ・障害補償給付(障害給付)
  • ・遺族補償給付(遺族給付)
  • ・葬祭料(葬祭給付)
  • ・傷病補償年金(傷病年金)
  • ・介護補償給付(介護給付)
  • ・二次健康診断等給付

*東京労働局「労災保険給付の一覧」

*出典:東京労働局「労災保険給付の概要」

○労災保険の手続き方法

労災保険から給付を受けるときには、“労災保険給付の種類”で示した給付の内容に応じた請求書を作成し、災害に遭った労働者が所属する事業所を管轄する労働基準監督署へ提出します。なお、「療養補償給付(療養給付)」に関しては、診察を受ける医療機関や薬局へ提出することで、労働者に代わって労働基準監督署へ提出をしてもらいます。そうすることで、医療機関窓口で自己負担することなく、治療を受けることができます。

業務災害や通勤災害により医療機関を受診するときは、必ず労働災害であることを伝えて健康保険証を使わないように注意してください。

*出典:厚生労働省「労災保険給付の概要」

┃労災保険手続きの必要書類と押印省略

2020(令和2)年12月25日付けの改正により、労災保険における請求書等について押印が不要となりました。押印は省略可能となりましたが記名等をすることについては、記載方法を問わず引き続き必要となるため、記名等がない請求書等については、返戻されてしまいますので注意してください。

請求書を訂正するときの訂正印についても同様に押印欄が削除されており、押印の必要はありません。

┃まとめ

今回は、労災保険制度の概要と保険給付ごとに異なる申請書類と押印省略について解説しました。

労災保険給付は種類も多く、請求するときも業務災害と通勤災害とで使用する様式が違ったり、請求する保険給付の内容によって様式を使い分けたりと慣れないと時間がかかってしまいます。

できるだけ早く確実に保険給付を受けるためにも顧問社労士に相談したり手続きを委託したりするのがよいでしょう。

*厚生労働省「労災保険における請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」

※2023年6月5日、内容を更新しました

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