【新型コロナウイルス感染症と傷病手当金】もらえるケースともらえないケースとは
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中で、社員がPCR検査で陽性になったり濃厚接触者判定を受けたりするケースが増えてきました。
新型コロナウイルス感染症に関連して仕事を休む場合、医療従事者等で感染と業務が密接に関連していれば労災保険給付の対象となる可能性があります。
それ以外のケースで社員が体調不良を訴えたり感染が疑われたりするケースでは、傷病手当金の支給対象となることがあります。
┃新型コロナウイルス感染症と傷病手当金
新型コロナウイルス感染症に関して会社が対応を求められる場面としては、社員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合や感染が疑われる場合、濃厚接触者になった場合の3つのケースが考えられます。
新型コロナウイルスへの感染が業務と関連があると認められれば労災保険給付の対象となりますが、感染経路が不明な場合には労災保険給付が認められないこともあります。
医療従事者等であったり、医療従事者等以外でも職場でクラスターが発生したり、同じ環境下で複数人が陽性となったりした場合には業務災害と認定され労災保険給付の対象となる可能性があります。
そうではない状況で社員がPCR検査で陽性となった場合には、傷病手当金の申請を検討してみましょう。
傷病手当金は、健康保険の被保険者を対象に業務外の病気や怪我に対して仕事に就くことができない期間の所得の一部を補償する制度です。
新型コロナウイルス感染症に感染したり感染が疑われたりするような場合で、仕事に就くことができない状態であれば受給することができます。
┃傷病手当金がもらえないケース
傷病手当金は、健康保険の被保険者を対象としていますのでPCR検査で陽性になったとしても健康保険の被保険者でなければ受給することはできません。
また、仕事に就くことができない(=労務不能)ことが条件となりますので「自覚症状はないが不安だから念のため休みたい(休ませたい)」ということでは支給対象にはなりません。
┃傷病手当金がもらえるケース
傷病手当金を受給するためには、仕事に就くことができない(=労務不能)ことが条件であるとお伝えしましたが新型コロナウイルス感染症においては、PCR検査で陽性になったとしても自覚症状がないケースもあります。
そのような自覚症状が無いケースでもPCR検査の結果、陽性と判定されれば行政からの指示による就業制限の対象となりますので、傷病手当金の支給対象になります。
傷病手当金を受給したことがあったり一度でも申請したことがある会社だったりすると「医師の証明が必要だから、医療機関の診察を受けないといけない」と考えている方もいると思います。
この点について新型コロナウイルス感染症では、自覚症状があり労務不能の状態であれば自宅療養の期間中も傷病手当金の支給対象となるケースがあります。
ただし、PCR検査を受けて陰性となった場合や仕事に就くことができる状態なのに自主的に自宅療養するような場合は対象外なので注意してください。
┃傷病手当金がもらえる・もらえない【まとめ】
新型コロナウイルス感染症に関して、傷病手当金の支給対象となるかならないかを整理すると次のようになります。
○自覚症状あり
- 医療機関の受診あり/陽性→受給可能
- 医療機関の受診あり/陰性→受給可能
- 医療機関の受診なし→受給可能
○自覚症状なし
- 医療機関の受診あり/陽性→受給可能
- 医療機関の受診あり/陰性→受給不可
- 医療機関の受診なし→受給不可
医療機関の受診をしていないケースで傷病手当金の申請をしようとする場合、傷病手当金の支給申請書に加え、療養状況申立書等の追加書類が必要になりますので注意してください。
【新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金について】
*参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)神奈川支部
┃傷病手当金の基礎知識
傷病手当金の申請をしようとする場合には、条件を満たしているかどうかの確認をするようにしてください。
傷病手当金は、次の(1)から(4)の条件をすべて満たしたときに支給されます。
(1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
傷病手当金は、業務外の病気やケガで休業する場合に支給されます。業務上の病気やケガの場合は、労災保険給付を申請してください。
(2)仕事に就くことができないこと
基本的には医療機関を受診した後、医師等の意見を元に傷病手当金の支給の有無や療養に必要な期間が認められます。
(3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
業務外の病気やケガにより仕事に就けなかった期間が連続3日になった後、4日目から傷病手当金の支給対象となります。
この初めの3日間を待機期間といい、待機期間が完成しないと傷病手当金は支給されません。
この待機期間の3日については、年次有給休暇や所定休日、公休日も含まれます。
(4)休業した期間について給与の支払いがないこと
最初の3日間(待機期間)に関しては、年次有給休暇を充てる等、給与の支払いがあってもかまいません。
休業4日目以降、傷病手当金を受給する場合には、欠勤控除を行う必要があります。
傷病手当金の支給申請書の中で欠勤控除の方法を記載する必要があるため、就業規則(賃金規程)の計算式を根拠にして欠勤控除を行うようにしてください。
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。
┃まとめ
今回は、新型コロナウイルス感染症に関連した傷病手当金の申請等についてお伝えしてきました。
行政からの支援策はいろいろとある一方で、実際になにが使えるのか、なにが対象になるのか、という判断が難しい場合があります。
顧問の社会保険労務士や行政機関の窓口とも相談をしながら適切な制度を活用するようにしてください。
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*全国健康保険協会(協会けんぽ)神奈川支部
新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金について