育児休業給付金の期間延長と「保育所入所保留通知書」

育児休業給付金は、育児休業期間中の所得補償として国から給付金を受け取れる制度です。

2022年10月以降、育児休業の再取得が認められるようになるなど大きな制度変更が予定されていますが、ここでは育児休業給付金の期間延長に関する注意点をお伝えしていきます。

実務的にも重要な内容で、手続き担当者から育児休業取得者への案内を間違うと最悪の場合、育児休業給付金が受け取れなくなることも考えられますので注意が必要です。

目次

┃育児休業給付金とは

育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が育児休業を取得した場合にその育児休業中の所得補償として、国から給付金が支給される制度です。

育児休業期間中、多くの会社では賃金が発生しません(無給)。そうすると収入が減り子育てに専念できないという問題が発生します。

育児休業給付金は、一定期間、国からの給付金により収入の補償を行い子どもが成長したら職場に復帰してもらう、ということを前提としています。

┃育児休業給付金の支給額

育児休業給付金は、育児休業を開始する月前6箇月間の賃金を元に算出されます。この算出された賃金(休業開始時賃金日額)に支給日数を乗じた金額を基準として支給されます。

育児休業給付金の支給日数は、原則として1箇月30日としてカウントされ、次の計算式により1箇月分(支給単位期間)ずつ給付金額が算出されます。

○育児休業給付金の支給額

  • ・休業開始時賃金日額×支給日数の67%
  • ・育児休業の開始から6か月経過後は50%

┃育児休業給付金の受給期間

育児休業給付金を受給できる期間は、養育する子どもの1歳の誕生日の前日までが原則です。

ただし、子どもが1歳になる前に職場復帰した場合は復帰日の前日まで、一定の要件を満たした場合には最長で2歳の誕生日の前日まで受給できる場合があります。

育児休業給付金の受給期間を延長する場合には、子どもが1歳に到達したとき、1歳6箇月に到達したときにそれぞれ延長申請を行う必要があります。

子どもが1歳に到達した時点で1回の手続きで2歳までの延長はできないので注意が必要です。

また、自由に延長できるわけではなく一定の要件を満たす必要があります。

※「1歳に到達した日(とき)」とは、1歳の誕生日の前日のことをいいます。

┃育児休業給付金の期間延長

育児休業給付金を受給できる期間は原則として、子どもが1歳に到達した日までです。

ただし、例外措置として子どもが保育所などに入所できない場合に限り、子どもが1歳6箇月まで(再延長で2歳まで)延長することが可能になります。

例えば、次のようなケースでは育児休業の延長の要件を満たさないことになります。

・育児休業の延長を目的として入所の意思がないにも関わらず入所を申し込む
・その保育所などに入れなかったことを理由として育児休業の延長を申し出る

┃育児休業給付金の延長要件を満たさない場合の取り扱い

厚生労働省の通達では、明らかに制度趣旨とは異なる育児休業の延長の申し出があった場合の取り扱いを次のように示しています。

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保育所などの入所申込みを行い、第一次申込みで保育所などの内定を受けたにもかかわらずこれを辞退し、第二次申込みで落選した場合には、落選を知らせる「保育所入所保留通知書」にこうした事実が付記されることがあります。

こうした付記がある「保育所入所保留通知書」を受け取った方は、第一次申込みの内定辞退にやむを得ない理由がない場合には、育児休業を延長する要件を満たさないため、育児休業の延長の申出ができません。
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*参照:厚生労働省「「育児休業」の延長を予定されている労働者・事業主の皆さまへ」

ここでいう「やむを得ない理由」は、申し込み時点と内定時点で勤務地や住所の変更があって、子どもを入所させることが困難になった場合などをいいます。

育児休業給付金の延長申請を行う場合には「保育所入所保留通知書」を添付書類として添付する必要があります。

今後はこの「保育所入所保留通知書」の内容も重要になります。

┃育児休業給付金は計画的な職場復帰を支援する制度

厚生労働省からこのような注意喚起がされた背景には、育児休業給付金制度の趣旨に反する申請が多いことが原因にあるようです。

育児休業給付金は、本来は「職場復帰を前提」とした制度です。

しかし中には「できるだけ長く育児休業給付金を受給」して、結果として退職してしまうケースも少なくありません。

始めから退職するつもりにもかかわらず、制度の趣旨に反して育児休業給付金の受給や延長申請をしているケースもあると考えられます。

妊娠から出産、育児休業に至るまでの手続きは、煩雑で長期間にわたるため会社にとっても小さくはない負担になるでしょう。

育児休業給付金を受給する人は、制度の趣旨と目的を考えて、職場復帰を前提とした適切な制度の活用をお願いします。

*関連記事
【育児・介護休業とは】制度の概要と法改正のポイントをわかりやすく解説

*厚生労働省
「育児休業」の延長を予定されている労働者・事業主の皆さまへ

※2022年2月19日内容更新しました

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