【職場のハラスメントの種類とは】具体例と対策、なくすためにはどうすればいいか

ハラスメントにはどのような種類があるのか?それらをなくすためにはそのような対策をすればいいのか?というのは、今、経営者にとって会社を運営していく上でとても重要なテーマになっています。

ここでは、ハラスメントの種類とその種類ごとにどのような取り組みをすればハラスメントが起こらない職場にできるかをお伝えしていきます。

目次

┃会社や職場内で起こり得るハラスメント

最近では、なにかあるとすぐに「○○ハラ」と言われてしまいます。その種類は無数にありますがそれぞれの行為が「○○ハラ」に当たるのかを分別することは、さほど意味があるものだとは思えません。

実際に「これって○○ハラになりますか?」というような質問を受けることは多いです。

しかし、明らかな言動があった場合を除きその行為が「○○ハラ」にあたるかどうかを決めるのは、その言動をした本人でも、法律でも、行政機関でもありません。

その言動が「○○ハラ」かどうかを決める上で一番大切なのは、受けた側がどう感じたか、世間一般的に大多数の人がどう感じるか、なのです。

┃ハラスメントの種類と具体例

ハラスメントの種類や「○○ハラ」に当てはめることそのものに大きな意味はないと考えていますが、ここでどのような行為がハラスメントに当たるのかを種類ごとに見ていきたいと思います。

種類として挙げれば切りがないハラスメントですが、職場において行われるものは主に次のようなものがあります。

○パワーハラスメント(パワハラ)

職場における優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されること、とされています。

→パワハラの定義や具体例について詳しくはこちら

○セクシュアルハラスメント(セクハラ)

「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることをいいます。

身体に接触したり性的な関係を求めたり、個人のプライベートに不必要に介入したりして他の労働者の就業環境を害する行為がセクハラに当たります。

○モラルハラスメント(モラハラ)

パワハラとの線引きが難しいモラハラですが、かみ砕いていうと主に大人の社会の中での「いじめ・嫌がらせ」のこと、ということもできます。

パワハラは主に職場において行われる心身への攻撃、モラハラは職場にだけにとどまらないもの、と捉えることができそうです。

→モラハラについて詳しくはこちら

○マタニティハラスメント(マタハラ)

「職場」において行われる上司・同僚からの「妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動」により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。

女性労働者に対して向けられる言動を主にマタハラといい、男性労働者に対するものはパタニティハラスメント(パタハラ)と言われます。

また、介護休業などの制度利用に対する嫌がらせなどは、ケアハラスメント(ケアハラ)とも言われます。

いずれにしても、妊娠・出産・育児・介護に関して、会社に対しては制度を積極的に周知し、制度を活用しやすい環境整備をすることが求められています。

制度を周知しなかったり、制度を利用した社員に対して明らかに嫌な態度をとったり不利益取り扱いをすることは、許されません。

【いろいろなハラスメントの種類】

┃ハラスメントが発生する理由

ハラスメントが発生する理由は様々です。多くのハラスメントに共通するものからハラスメントの種類による特有のものもあります。

○パワハラが発生する原因

パワハラは、主に上司から部下に対して行われますがその中で、

  • ・「しごく」ことで人が動く(業績が上がる、生産性が高まる)という誤解
  • ・感情のヒートアップ
  • ・感情のコントロールが効かなくなる
  • ・上司と部下のコミュニケーションが少ない
  • ・正社員や正社員以外の様々な立場の従業員が一緒に働いている
  • ・残業が多い・休みが取り難い
  • ・失敗が許されない、失敗への許容度が低い

このようなことが原因として考えられます。

○セクハラが発生する原因

セクハラは、「男らしい」「女らしい」など、固定的な性別役割分担意識から発生することも多いです。

「男性は外で働き、女性は家で家事をして子育てをすべき」といった考えを持っている人の場合、男性労働者の育児休業というのは、理解しがたいところがあるのでしょう。

そのような考えが一般的だった時代があったことも事実ですが今は、そのような時代ではありません。

そのことを会社も認識し、社員教育に力を入れる必要があるでしょう。

○その他のハラスメントの発生原因

多くのハラスメントは、時代に即さない考え方や制度への理解のなさ、そしてコミュニケーション不足によっておきます。

時代に即さない考え方や制度への理解に関しては、会社が社員研修を行うなどして社員、特に管理職の認識を改めていく必要があるでしょう。

社員教育を繰り返しても考えが改まらない管理職に関しては、そのままのポストに置いておくこと自体が会社のリスクになり得るので、役職を変えるなどの対応も必要になります。

┃職場のハラスメントをなくすには

職場のハラスメントをなくすには、まずは「なぜハラスメントをなくす必要があるのか」ということを考えていく必要があるでしょう。

○ハラスメント行為が職場に及ぼす影響

職場でハラスメントが行われた場合の影響としては、法的責任と社会的責任が発生すると考えられます。

法的責任とは、例えばパワハラ防止措置を実施しなかったり、実際に職場でハラスメント行為が行われたりすることによって会社や行為者が訴訟を起こされるようなことを言います。

社会的責任とは、ハラスメントが原因で労働環境が悪化し、離職率の増加や生産性の低下、時間外労働の増加やそれに伴い採用に悪影響が出ることなどが考えられます。

○ハラスメント防止対策の具体例

ハラスメント防止対策は、会社や規模によって様々ですが、まずは法律上最低限のところからできることを取り組んでいきましょう。

対策1.就業規則の改定と周知

まずは、就業規則を改定してハラスメントに対して厳正に対応をしていくことを明記します。

対策2.相談窓口の設置と解決のための体制整備

パワハラについての相談窓口を設置します。この相談窓口についても就業規則で明記すると良いでしょう。

また、相談を受けただけで終わらないようどのように解決していくかの体制整備が重要です。

迅速な対応は社員との信頼関係を回復することに役立ちますが対応が遅れると影響は拡大し、最悪の場合は社員の退職や訴訟リスクにまで発展します。

対策3.社員研修で社内の意識改革

就業規則を改定して窓口を設置したとしても社員の意識が変わらなければ意味がありません。

特に管理職研修は最低でも半年に1回程度、継続的に実施していくのがよいでしょう。

対策4.衛生委員会などでの事例検討

衛生委員会は、常時使用する労働者数が50名以上の事業場で設置が義務付けられています。

衛生委員会では、労働者の健康被害防止のための取り組みなどが話し合われますが、この中でハラスメントに関する事例検討をするのもよいでしょう。

労働者数50名未満であれば設置義務はありませんが、定期的な話し合いの場を設けて労働環境改善に関して意見を出し合うのはハラスメント予防にも効果的です。

○ハラスメント防止と外部の専門家へ相談するメリット

ハラスメント防止対策は、社内だけでは難しい部分があります。それは、専門知識が必要になるという知識や経験面の理由に加え、社内の人には正直なことを話しにくいという心理的な要因もあります。

ハラスメント防止対策を適切に実行していくためには、外部専門家のサポートが必要不可欠です。

社会保険労務士によるサポート・・・

労務管理の専門家である社会保険労務士には、就業規則の作成・改定や社内研修の講師を委託することが考えられます。

知識と経験がある社会保険労務士であれば、相談窓口の設置や連絡・相談・解決までの体制整備に関してもアドバイスを求めることができるでしょう。

弊社でも就業規則の作成や改定はもちろん、社内研修の講師をご依頼いただくことは多いです。

その他、商工会議所や金融機関など外部研修のセミナー講師をご依頼いただくこともあります。

弁護士によるサポート・・・

「相談窓口に関しては顧問弁護士に委託しようと考えている」という経営者がいますが、それでは会社の利益を守れなくなる可能性があります。

社員からの相談を顧問弁護士が受けてしまい訴訟リスクに発展してしまった場合、顧問弁護士なのにも関わらず利益相反となり会社側の弁護ができなくなってしまうかもしれません。

そういったことも考えて、顧問弁護士が相談窓口を請け負うことはないとは思いますが現状の体制がそうなっていたり、そのような体制を考えていたりした場合は、別の方法を検討する必要があります。

弊社では、相談窓口となれる弁護士の紹介もできますので必要に応じてご相談ください。

【職場内でハラスメント行為が行われた場合の対応例】

┃まとめ

今回は、ハラスメントの種類とその種類ごとにどのような取り組みをすればハラスメントが起こらない職場にできるかをお伝えしてきました。

ハラスメント防止への取り組みは、今最も重要な労務管理の課題の一つです。

法令順守はもちろん、社員が働きやすい労働環境を整備していくことが会社が生き残っていくために重要であると言えます。

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