社労士はなぜ、社会保険料の削減をすすめないのか

社会保険料削減、社会保険料減少、社会保険料激減、社会保険料適正化など、様々な表現を用いて事業主を誘うコンサルタントは後を絶ちません。

しかし、そうしたコンサルタントは、無資格コンサルタントの他、税理士や公認会計士、行政書士等であることが多いです。

ではなぜ、社会保険の専門家であるはずの社会保険労務士がそのようなノウハウを公表しないのでしょうか。

目次

┃社会保険の本来の役割

社会保険というと健康保険や厚生年金保険が思い浮かびますが広い意味では、労災保険や雇用保険も含みます。

このような社会保険は、生命保険等と同じく金額が増減することによる損得で考える性質のものではありません。

社会保険労務士は、国家資格であり法律で社会保険制度を適切に運用することを求められているのです。

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社労士法第一条 
この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。

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┃報酬に見合った適切な保険料を支払う意味

社会保険料は、報酬金額を元に決定します。

毎月の報酬を減らして賞与を増やしたり、事業を二つに分けたり様々な方法を使い報酬金額を目減りさせ社会保険料を減らそうとする手法はいろいろあります。

そのように目の前の手取り金額のことだけを考えて社会保険料を削減すると必要な給付が受けられなくなります。

①年金が減る
まず挙げられるのは、年金が減るということです。

若いうちは「年金なんかあてにならない」と言っていたとしても年を取った時には、結局年金を受給することになります。

②傷病手当金や出産手当金等が減る
怪我をしたとき、出産で一時的に仕事に就けなくなったとき、健康保険から給付を受けることができます。

給付金額は、支払っている社会保険料に応じて決定されます。

このような社会保険料削減の他、社会保険に加入することそのものを逃れようとする手法もあります。

個人事業と法人を分けてすべての報酬を個人事業で受け取る等の方法がそうです。

事業主一人が社会保険料を逃れて損をするだけなら自業自得ですが従業員にまで社会保険料削減をさせるのは問題です。

┃知らないうちに従業員も影響を受けている

社会保険の専門家である社会保険労務士は、労務管理の専門家でもあります。

事業主から報酬を得て仕事をすることが多いとはいえ、その事業は従業員がいなければ運用できません。

目の前の社会保険料削減にとらわれて社会保険料の操作をすると従業員との信頼関係が崩れることも知っています。

なので、社会保険と労務管理の専門家である社会保険労務士は、社会保険料削減をすすめません。

(残念ながら一部には、社会保険料削減で集客している人もいます)

┃意図的な社会保険料の操作は従業員にもバレている

「適法」なのと「合法・脱法」は、ちがいます。

それをはき違えて「この方法は適法です」といっている人もいますが、社会保険料削減に適法な方法は無いと考えて良いでしょう。

例えば、
・報酬を二か所から支払い、一箇所分の報酬分しか社会保険料を支払わない
・正社員採用なのに意図的に最初を二箇月の有期契約とする

これらの方法は、使い古された手法であると言えます。

当局からも指導を受けることでしょう。

┃誰が発信しているかを確認する

最近目にする多くのケースでは、税理士や公認会計士、行政書士等であることが多いです。

そのような誘い文句に騙されず「こうした方法でしか集客できない人」という見方で、そのような人たちに依頼するかどうかを検討すると良いと考えます。

(担当:久保田慎平)

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