【不正受給と独占業務】無資格コンサルに依頼するリスクと社労士に委託するメリットについて解説

厚生労働省管轄の雇用関係助成金・労働条件関係助成金(以下「助成金」といいます)の申請代行は、社会保険労務士の独占業務です。社会保険労務士以外の者が業務として報酬を得て申請業務を代行することはできません。

最近では、資格を持たない助成金コンサルタントが助成金の申請サポートや申請書類の作成代行サービスを謳っているケースもありますが、こうしたいわゆる“無資格コンサル”に助成金申請を委託するとそれを利用した事業者自身も不正受給の疑いをかけられる恐れもあるので注意が必要です。

助成金(以下「助成金」といいます)の活用を考えているのであれば、無資格コンサルではなく社会保険労務士に委託をするべきです。

今回は、助成金の申請について、助成金コンサルに依頼するリスク、社労士に依頼するメリットなどを解説します。助成金の申請を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

┃助成金の不正受給

○助成金の不正受給とペナルティ

助成金の不正受給について、すべての助成金の共通の支給要領には次のように示されています。

  • ・偽りその他不正の行為、詐欺、脅迫、贈賄等刑法各本条に触れる行為
  • ・刑法上の犯罪に該当しない場合でも
  •  →故意に支給申請書に虚偽の記載を行うこと
  •  →偽りの証明を行うこと

以上の行為により、本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること、とされています。

本来、事前にまたは日々作成するべき帳簿類を後から作成したり、本当はやっていないことをやったことにしたりすることは、すべて不正受給に当たります。

助成金の不正受給をした場合のペナルティに対しては、

  • ・不支給、または、支給決定の取り消し
  • ・助成金の返還(助成金の返還時には、延滞金と返還額の20%が上乗せ)

以上のような処分が行われます。

また、その後5年間は、助成金の支給が行われません。さらに、助成金の不正受給にかかわっていた者が別の法人等で役員等になっている場合には、その別の法人等でも同様に5年間、助成金の支給を受けることができません。

助成金の不正受給を行った場合で特に重大、または、悪質な事案に関しては、厚生労働省ホームページ等で事業主名等が公表されます。不正を行った事業主として公表されるため、顧客や金融機関等との取り引きに影響を及ぼす恐れがあります。

*厚生労働省「雇用関係助成金支給要領」

○助成金の不正受給の典型例

助成金の不正受給の典型的な例としては次のようなケースがあります。

  • ・本来は正社員採用なのに非正規社員として採用したことにする
  • ・本来は受講していない研修を受けたことにする
  • ・雇用契約書や出勤簿、賃金台帳等を遡って書き換える

このように「やったことにしたり」「過去に遡って帳簿を書き換えたり」ということは、不正受給になる可能性が高いです。不正受給は、行政機関の調査により労働者本人への聞き取り調査や実地調査等で発覚するケースが多いです。

助成金と補助金の違い

┃助成金の申請は社会保険労務士の独占業務

○社会保険労務士の独占業務とは

社会保険労務士は、労働・社会保険、その他労働基準関係法令に関する帳票作成を専門とする国家資格者です。社会保険労務士の業務は社会保険労務士で1号業務、2号業務、3号業務の3種類が規定されています(社労士法2条1項)。

その中でも1号業務と2号業務は、社会保険労務士の独占業務とされており(社労士法27条)、社会保険労務士以外の者が業務として報酬を得て行うことが禁止されており、法律違反を犯すと罰則が科せられます。(同法32条の2第1項6号)。

*e-Gov法令検索「社会保険労務士法」

→社会保険労務士法人GOALの独占業務について詳しくはこちら

○厚生労働省管轄の助成金

助成金といっても厚生労働省が管轄するものの他、市区町村など地方自治体や他の省庁が管轄する奨励金など様々な種類があります。また、中小企業庁などが所管の補助金も同じような意味でとらえられるケースもあり明確な定義があるわけではありません。中には士業の独占業務となっておらず、無資格者でも申請支援を行えるものもあります。

そのような中、厚生労働省が管轄する雇用関係助成金・労働条件関係助成金については、社会保険労務士の独占業務とされており、社会保険労務士以外の者が申請業務を行うことは社会保険労務士法で禁止されています。

助成金は、企業の雇用促進や職場改善を支援するために国などから事業主へ支給されるお金のことで、支給された助成金は原則返済不要です。

助成金と同じ括りで説明されることの多いのが補助金ですが、こちらは審査があり100%支給されるものではありません。一方で助成金は「受給要件を満たせば確実に支給される」といわれていますが最近では、要件を満たすのが非常に難しくなっており受給要件の変更や細かい不備により不支給となることも珍しくない状況になっています。

○助成金コンサルタントによる独占業務の侵害リスク

無資格の助成金コンサルタントや社会保険労務士以外のコンサルティング会社から助成金申請の支援を受ける一番のリスクは、業務侵害や不正な手段を用いて助成金申請を行う者がいる点にあります。

助成金コンサルタントの中には、社会保険労務士資格がないのに助成金の申請書類作成や申請代行まで行う違法業者も存在します。助成金の申請書類作成や申請代行まで依頼する際は、助成金コンサルタントが社会保険労務士資格を保有しているかを十分に確認する必要があります。

*全国社会保険労務士会連合会「非社労士による業務侵害にご注意ください」

○助成金の申請そのものが不正行為になる

資格を持たない助成金コンサルタントが、申請業務や虚偽の内容に基づく申請をした場合、依頼した事業主も助成金の不正受給となる可能性があります。依頼した企業は、「知らなかった」では済まされません。

助成金を不正受給すると、助成金を返還するのは当然のこととして、助成金の不正受給をした企業として企業名が公表されます。

【助成金申請支援サービスにご注意ください】

┃助成金申請を社会保険労務士に委託するメリット

○助成金申請を社会保険労務士に委託するメリット

本来、助成金は労働環境改善や労働条件向上などより良い会社にするためのものです。それを助成金コンサルタントに委託し、申請行為そのものが違法となってしまっては本末転倒です。

○助成金の申請を通じて労働環境改善を図る

いかにして助成金を多くもらうかに目が行きがちですが、本来の目的は労働環境改善、労働条件向上であり、助成金を受給することは副次的なもののはずです。その助成金申請に取り組むことが本当に会社や社員のためになるのかを考えて「助成金がなかったとしてもその取り組みをしたいか」という視点で考えることが重要です。

○申請可能な助成金の検討

助成金には多くの種類があり、その一つ一つに細かい受給要件がさだめられておりどのような助成金があるのか、どうすれば申請ができるのかを検討することも容易ではありません。

どのような助成金があり、その会社にとって取り組みメリットがあるのはどれなのかは、顧問の社会保険労務士に相談をしてみるとよいでしょう。

*厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」

○専門家に申請手続きを任せることで事業に集中できる

助成金の申請手続きは、手間のかかる作業です。社労士に申請手続きを依頼すれば、企業のリソースを申請手続きに充てることなく、本業に集中できます。

助成金を自社で申請する場合、助成金選びから始まり申請書類の作成まで時間と手間がかかります。申請作業に慣れていないときは、作業が進まずムダな時間がかかることもあるでしょう。

時間と手間をムダにして本業に支障を与えないためにも、申請手続きは専門家である社会保険労務士に任せるのが安心です。

○助成金を受給できる可能性が高くなる

社会保険労務士に依頼すると、期限内に書類を揃えて間違いなく申請してくれるので、助成金を受給できる可能性が高くなります。

助成金は、支給要件さえ満たしていれば受給できます。しかし、専門的知識がない場合、支給要件についての誤解や不測の事態により、不支給となることも少なくありません。

経験豊富な社労士であれば、支給要件を正しく解釈して支給要件を満たす体制作りと書類作成ができます。あてにしていた助成金が支給されないという事態を防ぐためには、社労士に依頼することをおすすめします。

┃まとめ

今回は、助成金の申請について、助成金コンサルに依頼するリスク、社労士に依頼するメリットなどを解説しました。

助成金の申請業務は資格を持つ社会保険労務士に委託してください。資格のない助成金コンサルタントに申請業務を委託してしまうと、知らず知らずのうちに不正受給してしまう可能性もあります。

また、助成金の申請は手間のかかる作業です。経験と知識が豊富な社会保険労務士に委託すれば、手間を最小限に抑えながら助成金の申請ができ、支給される可能性も高くなります。

助成金の申請についてお悩みの方は、助成金選び方からサポートさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

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