退職の意思表示(申し出)の撤回

従業員から「退職をしたい」と意思表示(申し出)がされた後、「やっぱり退職を撤回したい」と言われることがあります。

このような退職の意思表示の撤回について、お伝えします。

目次

┃退職の意思表示

従業員から「○月○日をもって退職したい」と意思表示(申し出)があった場合、これは、「労働契約を解約したい」と申し出があったことになります。

会社がこの申し出を承諾したとき、労働契約の解約が成立しますので、基本的にはその後、従業員からの一方的な撤回(取り消し)はできないと考えられています。

┃退職の意思表示を撤回できる場合

従業員が退職の意思表示を撤回できるとすれば、次のようなケースが考えられます。

○勘違いやまちがいで退職の意思表示をした場合

業務上のミスをした場合に実際は懲戒事由ではないのに「このままだと懲戒解雇になるから自主退職した方がいい」などと言われてそれを信じて退職届を提出したようなケースがこれにあたります。

そのミスが実際に懲戒解雇事由にあたらないのであれば、そもそも退職をする理由がないので退職届の提出自体がまちがいということになります。

この場合には、退職の意思表示を取り消すことができます(民法第95条)。

○騙されたり脅迫されたりした場合

人員整理をしたい場合などに過去の処分歴を持ち出して「自分から退職届を出さないと損害賠償もあり得る」などと持ち掛けるようなケースです。

この場合にも、退職の意思表示を取り消すことができます(民法第96条)。

┃退職の意思表示を撤回させないために

当社で扱った事例を見てみると退職の意思表示を撤回するような従業員は、在籍中になにかしらの問題(労務トラブル)を抱えているケースも少なくありません。

そうすると、会社としては退職の意思表示を尊重して、「自己都合による退職」で処理したいという考えもあります。

そのような場合には、「退職届を受け取った」「退職の意思表示を受理した」旨をメールやチャット、書面で明確に示しておくことが重要です。

会社の意思はしっかりと示した上で、会社に残って欲しい人なのであれば特別に撤回に応じるということも考えられます。

┃退職に関するルールの見直し

会社として「退職の意思表示を受理した」旨を明確に示すことが重要、とお伝えしましたが、退職時のルールについて定められた就業規則の規定も確認する必要があります。

例えば、
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第○条 退職
社員が自らの都合で退職を申し出る場合は、遅くても1箇月前までに、書面で所属長に退職の意思表示を伝え、役員会の承認を得なければならない。
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このような条文になっていたらどうでしょう。

「役員会で承認がされるまでは、正式に承認(受理)されていない」と考えることができますので、承認前であれば撤回も可能、ということになります。

*参考事例:大隈鉄工所事件(昭和62年9月18日/最高裁判所第三小法廷/判決)

この記事を書いた人

社会保険労務士法人GOALの代表。中小企業を中心に人事労務管理・就業規則の作成・助成金の申請サポートに対応しています。

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