妊娠で解雇は違法、数百万円の解決金に発展するケースも

妊娠・出産をきっかけにした労務トラブルは少なくありません。

事業主としては、対応を誤ると金銭的な損失だけでなく従業員からの信頼も失うことになります。

今回は、事業主が行った妊娠・出産を理由とした不利益取り扱いと、それによって生じた労務トラブルについてお伝えします。

目次

┃「妊娠したから解雇」数百万円の解決金に発展した事例

「妊娠したから解雇」と直接的に発言はしていないとしても解雇や雇い止めの理由が妊娠・出産したことに関連している、と考えられるケースもあります。

解雇や雇い止め、あるいは事業主からの言動によって退職した従業員が労働局や弁護士を通じて解決を求めてきた場合、次のようなことが考えられます。

○退職から解決までの間の賃金の支払い

解決までは数箇月、それ以上かかるケースもあります。事業主の不適切な行動が認定されればその間の賃金相当額の支払いは免れません。

○傷病手当金・出産手当金相当額の支払い

在籍していれば受給できていたであろう国からの給付金、傷病手当金や出産手当金に相当する金額を支払うよう求められることも考えられます。

○弁護士費用・慰謝料

弁護士を依頼したのであれば弁護士費用、同時にハラスメントによる精神的苦痛に対する慰謝料を求められることが考えられます。

解決金がいくらになるかは、その元従業員の在職中の賃金にもよりますが、半年程度で解決したとしても100万円は下らないと考えることができます。

┃妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い

妊娠・出産、育児休業等を「契機として(理由として)」不利益取扱いを行った場合、原則として男女雇用機会均等法または、育児介護休業法違反と判断されます。

「契機として(理由として)」とは、時間(期間)が重要視されます。妊娠等の報告を受けた後に不利益な取り扱いをすれば、法律違反と判断される可能性が高いです。

  • ○不利益取り扱いの例
  • ・解雇
  • ・雇い止め
  • ・契約更新回数の引き下げ
  • ・退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要
  • ・降格
  • ・減給
  • ・賞与等における不利益な算定
  • ・不利益な配置変更
  • ・不利益な自宅待機命令
  • ・昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
  • ・仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする

┃事業主によるハラスメント防止義務

男女雇用機会均等法および、育児介護休業法により、事業主はハラスメント防止措置が義務付けられています。

事業主は「ハラスメントの内容」「ハラスメント防止に対する考え方」等について就業規則等で定め、社内に周知する必要があります。

法律違反を犯し、行政指導を受けるような事案であれば解決金はより高額になる可能性もあるでしょう。

┃労働局の雇用環境均等部(均等室)

最後に実務的なお話をすると都道府県労働局に設置されている雇用環境均等部(均等室)は、法律の運用や適用、それに伴う事業主への指導についてとても厳しく追及します。

雇用環境均等部(均等室)が管轄の事案については、特に慎重に対応する必要があります。

今回は、事業主が行った妊娠・出産を理由とした不利益取り扱いと、それによって生じた労務トラブルについてお伝えしました。

事業主としては、法律や制度の内容、それらの改正状況を正しく理解して時代に合った対応をすることが重要です。

*厚生労働省
「妊娠したから解雇」は違法です

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