出勤簿の作り方┃勤怠管理・労働時間管理は事業主の義務
適切な勤怠管理・労働時間管理ができていない事業主は意外と多く、それが原因で賃金未払いや長時間労働、労災事故等のトラブルに発展するケースもあります。
勤怠管理・労働時間管理は労務管理の基本ですので、適切な方法で記録する必要があります。
┃なぜ勤怠管理・労働時間管理が必要か
勤怠管理・労働時間管理は、次の2つの観点から事業主の義務として位置付けられています。
○給与の適切な支払い
給与の支払いについては、賃金台帳に記録することが義務付けられています(労働基準法第108条)。
賃金台帳を適切に作成するためには、適切な勤怠管理・労働時間管理は必要不可欠です。
○過重労働や健康被害の防止
さらに、過重労働(長時間労働)や健康障害防止の観点からも適切な勤怠管理・労働時間管理が必要なため、「事業者は、・・・労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。」と規定されています(労働安全衛生法第66条の8の3)。
┃勤怠管理・労働時間管理のNG例
厚生労働省から公表されている資料の中で、「労働時間管理のNG事例」として次のようなことが挙げられています。
○出勤簿に押印や出欠のみを記録
昔は、出勤簿に「○」を付けたり、出勤簿した日に押印したりという記録方法も多くみられました。
しかし、この方法では「始業時刻」が管理されているとは言い難く是正指導の対象となる可能性があります。
○事後報告
労働時間管理は、その都度、記録をしたり使用者が現認する必要があります。後からまとめて記録を作成するのは、不適切です。
まれに「出勤09:00/退勤18:00」と一律に記録されているものも見られますが、これも不正を疑われる可能性があります。
○過少申告・時間外労働に上限を設ける
具体的に使用者から指示をしていなかったとしても実際の時間外労働よりも少なく申告させたり、みなし残業時間を超える残業は申告さなかったりするケースもあります。
これは、賃金未払いが発生している可能性もあり是正指導の対象となる可能性があります。
┃出勤簿の作り方・勤怠管理の方法
勤怠管理・労働時間管理の方法は、厚生労働省発行の<労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン>に明記されています。
○原則
- ・使用者が、自ら現認することにより確認すること
- ・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
○例外
- やむを得ず自己申告にする場合は、以下の取り組みを実施すること。
- ・労働時間管理を正しく記録するよう十分な説明を行う
- ・管理者に対しても労働時間管理について十分な説明を行う
- ・入退館記録やパソコンのログイン/ログオフデータと乖離がないよう実態調査を行う
出勤簿やタイムカード等に記録する内容としては、次のような項目が必須となります。
- ・労働日数
- ・労働時間数(所定労働時間)
- ・休日労働時間
- ・時間外労働時間
- ・深夜労働時間
これらは、賃金台帳の必須項目として明記されており、当然に出勤簿等による勤怠管理・労働時間管理が必要になると考えられています(労働基準法施行規則第54条)。
┃罰則・労務リスク
賃金台帳に必要な項目を記録していない場合や故意に虚偽の記録をした場合は、30万円以下の罰金刑が規定されています(労働基準法第120条)。
また、勤怠管理・労働時間管理を行っていないということは、割増賃金の未払いが発生している可能性があるので注意が必要です。
┃まとめ
「うちの会社は自由だから」「今までもこうやっていた」ということで、適切な勤怠管理・労働時間管理に踏み切れない事業主も少なくありません。
しかし、「適切に勤怠管理・労働時間管理を行うのは誰のためか?」ということを考えてみてください。
他ならない、事業主自身のため、労務リスクから会社を守るために勤怠管理・労働時間管理は、必要不可欠です。
*関連記事
勤怠管理・労働時間管理は労務管理の基本