【助成金の不正受給とは】助成金コンサルや虚偽申請などへの対策強化とペナルティ
助成金の不正受給をしてしまうと助成金の返還が必要になる他、ペナルティによる加算金の徴収、刑事罰を受ける、会社名の公表などその代償は大きなものになります。
故意に助成金を不正受給する会社の他、助成金コンサルからの勧誘を受けるなど、知らない間に不正受給に関与しているケースもあります。
今回は、助成金の不正受給のパターンとペナルティについてお伝えします。
┃助成金とは
ここでいう助成金とは、主に厚生労働省が管轄する「雇用関係助成金」のことを言います。
雇用関係助成金は、次のようなことを目的として国が会社に資金的な支援を行うものです。
- ・国が会社を資金面からサポートすることによる雇用の安定
- ・賃金アップなどによる職場環境の改善
- ・育児休業や介護休業の取得促進をすることによる仕事と家庭の両立支援
- ・会社内外で研修を実施する費用を負担することによる従業員の能力向上
正しく活用すれば会社の成長に大きく役立つものですが残念ながら不正受給も多く国もその対策を強化しています。
故意に不正受給をしていることもありますが、中には不正受給と知らずに助成金を不正に申請している会社もいます。
┃助成金の不正受給とは
助成金の不正受給とは、申請書に虚偽事項を記載したり、出勤簿や賃金台帳などを改ざんしたり、本来受給資格がないにもかかわらず偽って申請したりすることを言います。
本来であれば事前に作成されているべきものや日々、作成が求められているものを遡って作成し、助成金の申請を行うと不正受給になると考えられます。
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【雇用関係助成金支給要領 0205 不正受給】
・偽りその他不正の行為、詐欺、脅迫、贈賄等刑法各本条に触れる行為
・刑法上の犯罪に該当しない場合でも
→故意に支給申請書に虚偽の記載を行うこと
→偽りの証明を行うこと
以上の行為により、本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること。
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┃助成金の不正受給事案
助成金の不正受給は残念ながら多く発生しており、その手口も様々です。その中でも代表的なものとしては次のようなものがあります。
○助成金のコンサルティング会社が関わる事例
助成金コンサルタントや助成金のコンサルティングを謳う会社、その他、社会保険労務士以外の経営コンサルタントなどが助成金申請にかかわるケースはすべて違法です。
「助成金相談センター」や「助成金活用サポートセンター」など公的機関のような名称を使ってFAXやDM(ダイレクトメール)を送ってくるようなところは要注意です。
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【厚生労働省からの注意喚起文】
雇用関係助成金について、助成対象となるかの診断や、受給額の無料査定をするといった書面を一方的に送付(FAX)することで、助成金の活用を勧誘する業者の情報が寄せられています。
厚生労働省や労働局・ハローワークでは、このような勧誘には関わっていませんので、十分にご注意ください。
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無資格者等の第3者が関与する助成金申請
○システム会社などが助成金申請を仲介する事例
勤怠管理や労務管理に関連するシステムを販売している会社や企業研修を提供している会社が「助成金とセットで販売」してくるケースもあります。
「このシステム(もしくは「研修」)を導入すれば助成金がもらえる」「助成金の申請もこちらでセット行う」などと言ってきたら要注意です。
○申請書類などの改ざん・虚偽記載
申請書類の改ざんや虚偽記載は、助成金の不正受給ではよくあるケースであると言えます。
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始めから正社員として雇用されたのに助成金を申請するために労働契約書を有期雇用に書き換えたケース(キャリアアップ助成金)
本当は出勤しているのに出勤簿上は休業したことにしたケース(雇用調整助成金)
本当は通常業務にあたっていたのに研修に出たように見せるため出勤簿を改ざんし、研修日報を偽造したケース(研修系助成金)
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以上が不正受給の代表例です。
会社としてはうまくやったつもりでも必ずどこかに矛盾点やほころびが出ます。書面上は完璧に偽造されていても別のルートから発覚することもあります。
┃助成金コンサルに依頼すること自体が法律違反
助成金コンサルタントから「最後は事業主自身がハローワークへ書類を提出して事業主申請扱いにすれば法的に問題ない」などと言われるケースもあるようです。
しかし、助成金コンサルタントに対しても報酬は必ず発生するはずで、報酬を支払った(報酬が発生した)時点でその助成金申請は不正受給になると考えられます。
○助成金は開業社労士しか申請代行できない
厚生労働省管轄の雇用関係助成金を「報酬を受け取り業務として」申請書類を作成したり窓口への提出代行を行ったりすることができるのは、社会保険労務士だけです。
無資格の助成金コンサルタントや経営コンサルタントはもちろん、同じ国家資格である税理士や行政書士などでも助成金の申請代行を行うことはできません。
○助成金コンサルが間に入る=違法
助成金コンサルタントに助成金申請を依頼したり申請書類作成を代行させたりして報酬が発生すると社会保険労務士法違反になると考えれます。
このことについて東京労働局は、助成金に関する注意喚起の中で次のように示しています。
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無資格者が関与している事実(例えば報酬等のやり取りをした上で、申請書の記載や提出等を第三者に委託した、第三者が申請事業場の事業主または労働者等関係者を装って当局へ連絡した等)が発覚した場合には、不正に本助成金を得、もしくは得ようとしたものとして、助成金の返還や加算金(遅延損害金)の支払い、企業名公表等の対象となることがある等、申請した事業主も責任を問われることになりますのでご注意ください。
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*出展:東京労働局「働き方改革推進支援助成金について(3 無資格者等の第三者が関与する申請について)
○助成金コンサルの仕組み
ここで、助成金コンサルタントや助成金コンサルティング会社の仕組みにも触れておきたいと思います。
助成金コンサルなどは「実際の手続きは助成金専門の社労士が行う」などと言っているケースがあります。
実際には、助成金専門でもなんでもなく開業したばかりで顧客がいなかったり営業活動が苦手で自ら顧客開拓ができなかったりする社労士を囲っているケースもあるようです。
そして助成金コンサルは、申請可能な助成金を調査するための調査費などの名目で着手金(デポジット)を徴収し、安価で下請けの社労士に助成金を丸投げします。
要件を満たしていれば問題はありませんが中には受給要件を満たしていないケースもあります。
それは「国から返済不要のお金がもらえる」という程度の説明しかしない助成金コンサルにも原因があるのでしょう。
そこで下請けの社労士が「要件を満たさない」旨を伝えても「着手金を受け取ってしまったので何とかして欲しい」と言われて不正受給に手を染めることになります。
その後に起こることは大きく分けて2パターン
「申請書類の改ざんや添付書類を偽造して不正受給をしてしまうパターン」
「不正受給をしたくない社労士が手を引く(突然連絡が取れなくなる)パターン」
この2つは割とよく聞きます。
あと一つは、助成金コンサルから下請けの社労士に支払われる報酬が安すぎて社労士が助成金コンサルとのやり取りを止めてしまうケースもあるようです(こちらも突然連絡が取れなくなることも)。
┃こんな営業トークやDMには注意
助成金コンサルに関連した助成金の不正受給が絶えない理由としては営業活動のうまさにあると考えています。
○「簡単」「返済不要」で国からお金がもらえる
「〇百万円獲得できる!」と大きい金額で目を引いているケースがあります。
虚偽記載ではないとしても誇大広告である可能性はあります。助成金は何もしなくてももらえるものではありません。
金額が大きくなれば会社として取り組む作業や支出する費用が増えることも忘れないでください。
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○社員が一人でもいれば助成金がもらえる
社員が一人でもいればもらえる助成金がないわけではありませんが、
「その社員を有期契約に切り替える」
「有期契約社員として採用したことにする」
などと言ってきたら不正を疑った方がよいでしょう。
○助成金専門の社労士と提携している
助成金専門の社労士が本当に助成金専門なのかが不確実であることはもちろん、社会保険労務士ではないものが社会保険労務士という名称を使って営業活動をすること自体が社会保険労務士法に違反すると考えられています。
┃助成金の不正受給に対するペナルティはどのようなものがあるか
受給をした助成金が不正受給だったと判断されれば当然にその助成金は返還しなくてはなりません。
この場合、不正受給した金額にペナルティ分も加算した金額を徴収されることもあります。また、その後5年間、助成金は支給されません。
さらに不正受給を行った会社の役員がかかわっている他の会社なども同様に5年間、助成金が受給できなくなることもあります。
その他にも書類送検されて刑事罰を受けたり厚生労働省ホームページで会社名を公表されたりすることもあります。
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┃まとめ
今回は、助成金の不正受給のパターンとペナルティについてお伝えしました。
助成金の不正受給にかかわると目の前の数十万円のためにすべてを失うことにもなりかねません。
助成金の趣旨と目的を考えれば、不正をして手に入れたお金で社員のために何かをする、ということが本末転倒なのではないでしょうか。
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